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「街のデッサン(220)」イコンから得た啓示とは スティーブ・ジョブズを捉えた図像

2019年8月11日(日) 配信

リラの僧院、迫真の天井画

 ブルガリア、ルーマニアを旅して、両国に共通して感動を覚えるのは「イコン」という図像芸術の圧倒的な存在についてである。原始キリスト教は、大きな流れとして3つに分団した。1つは、ローマのバチカンを本山とするカソリック、そのカソリックから16世紀にルターによる宗教改革によって生み出されたプロテスタント、そして東ローマ帝国を元々土台にしていたビザンチン帝国をフィールドにしたオーソドックスである。

 このオーソドックスは東方正教と呼ばれ、原始キリスト教の伝統を最も色濃く伝承しているという。イコンの存在は、バチカンのような総本山を待たない1国1教会主義のビザンチンをつなぐ共通のアレゴリー(寓意)となる。イコンとは、平明にいえばハリストス(キリスト)を描いて信仰の証とする「聖像画」のことであるが、無論それらの展開の意味するコンテキストには、計り知れない思念や物語を内蔵する。

 私たちはソフィアに降り立ち、近郊のボヤナ教会、リラの僧院に始まりブルガリアの国内で10カ所、ルーマニアに入ってピエルタン要塞教会やスナゴフ修道院など7カ所の正教会建築を見て回った。それらの大小の建築の内壁はもとより、外壁にもびっしりとハリストスやイエスを抱えるマリア像が起点となって、生誕から布教、使徒や教会建設を支えた市井の信者の聖画が、さらには天国と地獄の世界、来るべき社会の有様までに迫る図絵が描かれていた。その膨大な未来へのドキュメントは、彫像やステンドグラスでは迫ることのできない宇宙の存在を示していた。私には、イコンの世界とは明日への生命の叙述のように思えた。この2国のビザンチン芸術のパースペクティブを見終えた時、私の頭のどこかに、現代社会のイコンならぬ「アイコン」の世界のことが、浮かんでいた。

 パソコンを始めとした現代社会を動かしている情報技術の基底にあるものが、実はアイコンすなわちイコンではないか、ということである。このアイコンをコンピュータの画面に初めて登用させたのはアップルを創ったスティーブ・ジョブズであった。1979年、その2年前にアップルを立ち上げたジョブズがゼロックスのバロ・アルト研究所が開発したGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を一瞥して、その可能性を直感したのだ。ビザンチンの芸術の本質を、大学時代にカリグラフィー(書法)に血道をあげたジョブズだからこそ、見抜いたのであろう。イコン思想は今また世界を席巻している。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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