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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(160)」「農泊」と地域の魅力づくり(宮城県登米市)

2018年5月26日(土)配信

栗原市側から見た伊豆沼の景色

 ようやく春めいてきた3月下旬、宮城県登米市を訪ねる機会を得た。週末には、「東北フードマラソン」を控えた格好の時期でもあった。赤ワインで有名なメドック地方(ボルドー)で、約1万人近くの仮装ランナーが、美しいぶどう畑のコースを楽しみながら走る「メドックマラソン」にヒントを得て4年前から開催している。主会場の長沼フードピア公園では、地元グルメの飲食・物販ブースが並ぶ「登米フードフェスティバル」や、被災地の復興状況を見学する「東北風土ツーリズム」も同時開催される。いわば地域ソリューション型のスポーツ大会であり、昨年の「スポーツ振興賞」では見事、大賞を受賞した。その運営に携わってきた阿部康彦実行委員長などとも、久々の再会であった。
 

 その登米市は古くから東北屈指の穀倉地帯として知られ、ラムサール条約の伊豆沼・長沼の周囲には悠々たる美しい田園風景が拡がっている。また、旧登米(とよま)町は、かつての伊達家の城下町の風情が残り、「東北の明治村」とも呼ばれている。
 

 登米市での今回のテーマは、「農泊・インバウンドセミナー」。農林水産省「農泊」推進事業の一環である。新たに発足した「食農体験ネットワーク登米協議会」代表の農業生産法人・伊豆沼農産の伊藤秀雄社長や事務局を務めるブランド総合研究所の田中章雄さんから、農泊の動向と意義や登米の現状などについて講演と報告があり、私も農泊における地域資源活用の手法などについてお話をさせて頂いた。
 

 いわゆる「農家民宿」を核とする日本のグリーンツーリズムは、1992年に農水省主導の研究会に始まり、以来、四半世紀もの長い間、活動を続けてきた。農家民宿、農業体験、農家レストランや直販などのメニューを軸に展開してきたが、必ずしも成功してきたとは言えない。その主たる理由は、顧客からみた農村エリアの魅力を総合的にマネージメントし受け入れる体制ができてこなかったこと、農家側の主体的な取り組みが育つ前に補助金に頼る体質になっていたことなどであろう。全国で500地域を目指すという今回の「農泊」は、これまでの政策・取り組みとどこが違うのか。これらは上記の課題にどこまで応えられるのかといった検証が不可欠である。

伊豆沼農産の農家レストラン「くんぺる」(登米市HPより)

 登米では、伊豆沼農産などの農業生産法人が「農泊の中核を担う法人」としてマネージメントに乗りだす。伊豆沼・長沼や地域に古くからある農村と食などの固有景観、個々の農家の主体的参加を促すマネージメント体制など、地域魅力を総合的に活かす取り組みが重要である。30年前、わずか4㌶ばかりの水田と豚10頭で事業をはじめ、今や40人の従業員を抱える伊豆沼農産・伊藤社長の銘は、「農業を食業に変える」である。高付加価値農業の自立と地域を巻き込んだ「大人のファームステイ」への取り組みが次の大きな目標である。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

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