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No.470 福祉×経営課題、障害者支援が宿を助ける

2017年9月1日
編集部

福祉×経営課題
障害者支援が宿を助ける

「障害者差別解消法」の施行に伴い、受入体制の確立を目指す宿は多い。一方、ハンディキャップを持つ人の就労支援に着目した活動は未だ珍しい。就労継続支援B型事業所「愛’s」と連携し、「人件費削減と人材不足の解消」を果たした割烹旅館「清都」(千葉県南房総市)の清都みちる女将を訪ねた。今年、第20回「人に優しい地域の宿づくり賞」(主催=全旅連)で厚生労働大臣賞を受賞した同館。「愛’s」管理者の小宮庸宏氏との対談のなかで、活動について語ってくれた。

【謝 谷楓】

 

 ――就労継続支援B型事業の目的は、「雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会を提供」すること。割烹旅館清都では昨年から、就労継続支援B型事業所「愛’s」と提携し、人材不足や人件費削減といった課題を解決してきました。

清都:ボランティアイベントでの出会いがきっかけとなって、障害を持つ「愛’s」利用者らの就労受け入れ活動に取り組んでいます。

これまで、全盲になった親友との交流や、特別支援学校との関わりなど、障害を持つ方と接する機会は多くありました。専務である息子も、ブラインドサッカーの運営経験を持っています。試合では、選手らが勇気と感動を与えてくれます。ハンディキャップの有無は関係ありません。

目が見えないからできない、障害を持っているからできないと考えるのではありません。各々ができることを行い、障害者と健常者が協力し合うことで、チームワークは生まれます。仕事でも同じです。

〝障害=個性〟であり、障害者と健常者が同じフィールドに立つノーマライゼーションの必要性も理解しています。

小宮:「清都」では、指導員による引率のもと、3人1チームとなって清掃の仕事に臨んでいます。女将や専務、社長をはじめ、宿スタッフとの関係も良好だと聞いています。

健常者と同様に扱ってもらえる。難しいことですが、「清都」は実現してくれました。

清都:経営者と労働者、障害者と健常者、それぞれ双方が互いを尊重し合う関係が信頼につながります。障害者と健常者にかかわらず、「使ってやっている」という考えを、経営者に持ってほしくありません。

人件費と人材不足の課題解決を果たせたのは、清掃作業に取り組む「愛’s」利用者のおかげです。助けてもらっているのだということを常に意識しています。

小宮:人件費や人材不足など、就労継続支援B型事業所と手を組むことで解決できる課題は少なくありません。そのことに、経営者が気づきつつある印象を受けています。

 ――詳しく教えてください。

小宮:「清都」の場合、障害を持つ「愛’s」利用者が受け取る作業費は、1人1時間で250円。健常者の最低賃金は842円(千葉県、2016年10月発行)ですから、企業の負担は3分の1以下で済みます。個人差や得手不得手があるため、生産性では健常者に敵わない場合もありますが、人数を多く導入すれば解決できることです。

「清都」のように、健常者である指導員のもと3人が1チームとなって作業に当たれば、企業が負担する人件費は、県が定める健常者の最低賃金を少し下回ります。

賃金ベースで考えれば、企業は生産性を上げることが可能なのです。

清都:客室とお風呂の清掃を任せていますが、とても丁寧で行き届いた仕事は、お客様からも好評です。…

 

※ 詳細は本紙1681号または9月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

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