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スピード感か 慎重か、民泊のあり方を熱く議論

検討会のようす
検討会のようす

 観光庁と厚生労働省は11月27日、観光・賃貸業界関係者や大学教授、弁護士など有識者らを招請し、第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開いた。これまで国内になかった事態へ対応するため、慎重に検討を進めるか、スピード感ある対応を進めるかなど今後の民泊への対応指針について熱い議論が展開された。

 現行の民泊に係わる制度について、国土交通省・厚生労働省・観光庁・消防庁が説明。事務局である観光庁と厚労省は検討の基本的な視点に「衛生管理面やテロなどの悪用防止の観点から、宿泊者の把握など管理機能・安全性の確保」「地域住民や宿泊者とのトラブル防止」「急増する訪日客の宿泊需給や空きキャパシティの有効活用」を挙げた。

 論点案には「民泊の必要性(位置付け)」「旅館業法との関係」「建築基準法における用途地域規制との関係」「建築基準法、消防法における構造設備基準との関係」「旅行業法との関係」「仲介事業者の位置付け・役割など」「その他」を候補とし、そのなかで「旅館・ホテルとの競争条件」「地域ごとの宿泊需給の状況」「規制内容や方法に対応した自治体の体制」「課税の適正化」「その他」を留意点に挙げた。

 検討会構成員らは現行の制度の問題点や今後起こり得る不測の事態への対応について議論し、今後の民泊に対する制度のあり方を提言した。以下、検討会で提言された内容を一部紹介する。

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長 北原茂樹氏

 「良い面ばかりではなく、集合住宅にとくに問題が集中しているということもある。まずは戦略特区13条が認められた大阪と東京で来春あたりから実証が始まるので、結果を見て議論を深めることが一番大事なことではないか」

 東京大学社会科学研究所教授 松村敏弘氏

 「法改正をともなわずに解釈の変更でできることについては一刻も早く進めていくべき。また、規制強化や(現行の)旅館業法・旅行業法の制約が厳しいなどの視点を持つことも大事だ」

 日本賃貸住宅管理協会会長 末永照雄氏

 「海外の実態調査をしていただきたい。海外の制度を日本でも受け入れていこうという視点に立ったとき、我われのルールでどう処理するのかも大事だが、海外でどのように民泊を運用し、実際にどんな問題があるのかを学ぶべきだ」

 涼風法律事務所弁護士熊谷則一氏

 「民泊を広く認めていくことで観光業が発展するのか、阻害するのかは立場によって見通しが変わってくるので、やってみないとわからない。現在の旅館業法は、何か起こると多くの生命身体に影響があるだろうということから規制が設けられていると考えると、なかなか一足飛びになんでもやればいいというわけにはならないと思う。そのなかで現在すでに旅館業法で緩和部分はあるし、海外事例もあるので事案を見ていかなければならない」

 全国消費生活相談員協会理事長 吉川萬里子氏

 「安全・安心について強固に考えてから制度をきっちり作りたい。消費生活センターでは新しいものができたときに『スキマ事案』として解決できないことがたくさんでるので、どこが安全の責任を持つのか制度として明確になるような方向で考えてほしい」

 和歌山大学観光学部教授 廣岡裕一氏

 「はっきりと合法と言えない事態でどう保障していくか。民泊だけでなく、通訳でも運送事業でも、包括的に保護していくシステムを考える必要があるのではないか」

 法政大学大学院法務研究科教授 今井猛嘉氏「世の中の方は、親戚を泊めることの延長で『友達の友達を泊める』と考える方も多いと思うので、議論の最後に民泊の定義を決めて、どこまでが法規制がかかるのか考えるべき」

 検討会の構成員は次の各氏。

 【座長】浅見泰司(東京大学大学院工学系研究科教授)【構成員】相澤好治(北里大学名誉教授)▽今井猛嘉(法政大学大学院法務研究科教授)▽梅沢道雄(相模原市副市長)▽川口雄一郎(全国賃貸住宅経営者協会連合会会長)▽北原茂樹(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)▽熊谷則一(涼風法律事務所弁護士)▽小林恭一(東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授)▽末永照雄(日本賃住宅管理協会会長)▽高橋進(日本総合研究所理事長)廣岡裕一(和歌山大学観光学部教授)▽三浦雅生(五木田・三浦法律事務所弁護士)▽森川誠(不動産協会事務局長)▽吉川伸治(神奈川県副知事)▽吉川萬里子(全国消費生活相談員協会理事長)【オブザーバー】上田正尚(日本経済団体連合会産業政策本部長)

 なお、次回の検討会は12月14日、3回目は12月21日を予定する。今後は月に1―2回ほど開催し、来年3月中を目途に中間的な論点整理を行う。その後、来夏―秋にかけ、報告書を取りまとめる。

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