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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(118)  もう一つの手間を掛けてリピートを創り出す 直接聞く「旬感の声」

2020年11月7日
編集部:馬場遥

2020年11月7日(土) 配信

 

 航空機での年間出張が多く、会員向けの営業メールも多く届きます。今までは、読まずに消去していましたが、コロナ禍で見たことのない内容のメールを見つけ、航空会社に電話で確認すると、私が利用した1カ月ほど前から送り始めたということでした。

 自動送信のお礼メールで、どれほどの営業効果を生むかは分かりません。ただ、感謝の想いを伝える行動はその別の成果として、社内スタッフの心にお客様への想いを強く育むことになります。

 クライアントにネット販売に強い企業があります。強い商品力を持っていて、日々多くの問い合わせがメールで入ってきます。そのため、スタッフにはPCの操作スピードが求められます。ある日の戦略会議で、メール対応件数が他と比べて少ないスタッフが問題視されていました。そのスタッフが得意とするのは電話対応で、お客様と直接話して、親近感と信頼感を得て申し込んでもらい、リピーターを創造することです。お客様からの指名電話も増えています。

 ただ、メール対応が少ないことでその分、他のスタッフに負担がかかっています。そのため解決策として、得意分野の電話対応での実績を高めるために、さらに手間を掛ける行動が示されました。それがプッシュ電話とお礼電話です。

 商品に興味をもったお客様に、時間という財産を使い説明して申し込んでいただくだけでなく、申し込みのきっかけとなる機会を提供するためのプッシュ電話です。さらに、商品を利用いただいた後のお礼の電話です。

 ビジネスに多い売りっぱなしを無くす戦略です。アンケート送付やメールではなく、直接「旬感の声」を聞き、不満の解消と次の利用へつなげるのが大きな目的です。商品改善の意見も聞きます。リピートをお客様任せにせず、戦力的に創造する行動が個客満足度を上げる方法でもあるのです。

 移動が制限され、減便せざるを得ない状況でも毎日240便を運航しているということでした。そんななかで届いたメールは、航空機利用へのお礼だったのです。約30年、毎年200便以上は利用していて、初めてのお礼メールでした。

 航空会社にとって、日々多くの利用客があるなか、「そんな手間は掛けられない」というのがこれまでの「当たり前」だったのでしょう。しかし「飛行機はなぜ飛ぶのか」を考えたとき、この手間こそが大切な行動であることが分かります。

 飛行機はお客様がいるからこそ飛ぶのです。その感謝を伝えるメッセージを見たとき、利用者数を考えたときに「すごいことを始めたな」と思いました。この一歩が進化への始まりだとすれば、これからが本当に楽しみです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

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