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医療機関をDMOの一員に 市民主体の「妙高モデル」確立へ

2020年10月11日
営業部:後藤 文昭

2020年10月11日(日) 配信

入村明市長

 新潟県妙高市は、感染症対策と経済の活性化の両立をはかる「妙高モデル」の確立に挑戦する。DMOを構成する組織に「医療機関」が加わり、地域一体で安心、安全な観光まちづくりを実践していく。住民主体が特徴の「妙高モデル」が、新たな日本の観光地の「スタンダード」になることを目指す。同市内で9月23日、「新型コロナウイルス感染症を克服する新たな日本の観光地域づくりシンポジウム」を開き、有識者らと今後のビジョンを共有した。

【後藤 文昭】

 新型コロナウイルスの感染拡大は、妙高市に大きな打撃を与えた。市内の宿泊業・飲食サービス業は、同市の事業所全体の25%にあたる400事業所が存在する。このうち約半数は3―5月の売上が50%を超える減少となった。毎年夏には合宿を目的に多くの中学、高校、大学生が訪れているが、今夏はそのほとんどが中止になった。冬も順調に増加を続けてきたインバウンドスキー客が渡航制限により見込めず、観光売上額も大幅に減少する見通しだ。

 入村明市長は、「我われの地域は観光に大きな恩恵を受けている。地域一丸となって、まず安心して選ばれる観光地を目指し、安心宣言を出すことで需要を喚起する。いつ来ても安心で、訪れてよかった、また来たいと思われる環境整備に邁進していく」と宣言した。

 コロナ対策として同市は、「市民向け」「事業所向け」に対策を実施。妙高ツーリズムマネジメント(地域DMO)とも連携し、観光客と観光事業者向け対策も進めている。

 宿泊客へは①地元の酒蔵製造の手指消毒剤の代替品②地元制服メーカー製造の抗ウイルス成分内包のマスク③包括連携協定を締結しているモンベル社製のフェイスシールド――を配布している。Go Toトラベル参加事業所へは、参加基準チェックのための実地調査を徹底している。一方、観光事業者に対しては、市独自の「感染防止対策補助制度」を創設した。

市民全体で感染防止に取り組む

 これまでさまざまな対策を進めてきた妙高市が次に行うのは、「感染症対策」と「地域経済」を両立させる観光地づくり。「妙高市感染防止対策特別プロジェクト」を組織し、市と妙高ツーリズムマネジメントが強力に連携し、市民が主体的に感染防止対策に取り組む。

 市長を本部長とする、「感染防止対策特別プロジェクト推進体制」を敷き、市役所全組織で「感染防止対策特別チーム」を立ち上げる。観光客や、観光事業者、市民向けにさまざまな対策を実施していく。観光従事者が定期的にPCR調査と抗原検査を受けられる体制も整備する。

 妙高ツーリズムマネジメントは地域の医療機関と連携し、独自のガイドラインを策定する。主体となって宿泊施設や飲食店などに対し、感染予防対策を実行する。併せて、市独自の基準を作成し、順守施設、店舗に合格マークステッカーを授与。「安全、安心な観光地妙高」を見える化し、誘客につなげる。

市の考え実行へ、カギはDMO

(左から)冨樫篤英氏、久保田穣氏、政二文明氏、鴨井茂人氏

 パネルディスカッショでは、観光庁観光地域振興部観光地域振興課の冨樫篤英課長と日本観光振興協会の久保田穣理事長、妙高ツーリズムマネジメントの鴨井茂人副会長、けいなん総合病院の政二文明院長が登壇。コーディネーターを跡見学園女子大学観光コミュニティ学部観光デザイン学科の篠原靖准教授が務めた。

 観光庁の冨樫氏は、「市の考えを実現するためには、DMOが中心となって取り組んでいくことが一つの大きなカギ」と持論を展開した。日観振の久保田氏は、「観光地の品質を向上させることが、DMOの役割。コロナ禍で感染症防止策が、観光地の品質のなかで大きな一角を占めており、ますます役割は重要になる」と力を込めた。

 鴨井氏は、医療機関との連携について説明した。「体調不良のお客様がいた際に、医療機関と提携しておくことで対応相談などもできる。医療従事者との提携、連携はお客様に安心、安全な旅行を提供するためにも必要不可欠である」と観光従事者目線で強調した。

 医療機関の立場から、政二氏は、コロナ禍でも選ばれる観光地の条件として「アクセスが容易で安心して受診できる医療機関が存在するかということが大事になる」と語った。同病院では、コロナ外来の整備を進めている。一般の患者から完全に遮断し、患者が手を触れずに開く自動ドアや、ソーシャルディスタンスが完全にとれる広い待合室などを備えるという。

篠原靖氏

 コーディネーターを務めた篠原氏は、妙高市の取り組みを「トップの強い意志が地域を動かす。妙高モデルの良い点は、市長のリーダーシップのもと展開されていること」と述べた。さらに、「市単独でできることではないので、国としてこうした挑戦を支える仕組みを整えるなどの支援を行うことで、次世代型の観光に生まれ変わる」と締めくくった。

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