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「街のデッサン(234)」「hope to トラベル」で旅人と観光地を幸せに 旅への憧れと喜びが観光事業の起点

2020年10月4日(日) 配信

鎌倉小町通りにも若者のにぎわいが

 若い時分から髪を長くしていたので、調髪は妻の懇意にしているヘアサロンにお世話になっている。サロンの美容師の先生は旅好きで、たっての願いは80歳を超えた高齢の実母をパリ観光に連れていくことだった。それは母親が長年憧れていたことで、先年、先生のご亭主(車イス担当)も巻き込んで、3人でのパリ滞在を敢行した。3人ともパリは初めてで、妻が見所や地下鉄の乗り方などをアドバイスして、宿はアパルトマンホテルに泊まる旅を成功裏に完遂させた。

 母親は長年の想いが叶い、ご亭主は義母を押して石畳の街路や地下鉄を乗り継ぎ懸命に観光地巡りを頑張り、パリの人々は彼の姿に感銘して大いにサポートしてくれたらしい。ご亭主の株は上がり、誇り高い気分で帰国された。

 そんな経緯もあってか、私が調髪に行くたびに話は旅のことになる。コロナ渦中の旅の話になり、「Go toトラベルキャンペーン」が始まった時期には、「昔から八甲田山の麓にある鄙びた温泉宿に行きたかったから、キャンペーンを利用していこうかしら」とカットしながら語っていた。私は「Go toキャンペーン」の評判にいまいちの感を持っていたが、心の中に秘めている旅への期待や、想いを喚起させる役割を持つのではと思った。彼女にとって残念だったのは、東京が外されて鄙びた宿の夢が実現できなかったことだ。

 このキャンペーンの問題点は、コロナ蔓延で疲弊する観光地や、観光関連の中小企業の事業者を経済的に支える思惑も無論大切であるが、肝心のお客様であるトラベラー(旅人)の旅への深い愛着や願望を支える仕組みに至らなかった点にあると思う。要するに観光経済を救う経済感覚はあっても、旅の持つ人間価値への思いやりが不在なのである。それはいわば「観光思想」の欠如でもあろう。

 80歳を超えた高齢の母親にも若いころからの旅への情熱があった。美容師の先生もカットの手を止めたときに、「鄙びた温泉」が頭を過る。ご亭主には、旅が家族の紐帯をさらに強くするという、確信にも近い「旅の思想」があるのだ。

 それらの想いを顕在化させ、実現をサポートしていく優しい思想が、結果的に観光地にお客を集め、喜ばれ、お金を落してもらう観光地経済の復興につながる。それはGo toという命令的な口調ではなく、私には「hope toトラベル(幸せな旅をしたい)」という旅人(顧客)の心根と、観光地で受け入れる人々の慈愛が共創して創り上げる観光産業こそ、未来的に思えるのである。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

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