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〈旬刊旅行新聞4月21日・5月1日合併号コラム〉自助努力にも大きな制限がある観光業界 「今できること」を必死に探す施設も

2020年4月30日
編集部:増田 剛

2020年4月30日(木) 配信

今できることを探す

 マスクはもともと苦手だった。でも、いつの間にか慣れてしまった。外出する時は、マスクをしていないとすごく無防備な感覚になる。

 家で何となくテレビを見ていると、総集編などで数年前の映像が映し出される。当時の人たちがマスクもせずに、こんなにも大らかに話し、笑い合っていたのだと、不思議な気分になる。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界は一変してしまった。
 
 
 先日、東京都内で仕事を終え、暮れきれない夕方に神奈川県の最寄り駅に戻った。4月半ばというのに風が冷たく、空には分厚い不穏な黒い雲が流れていた。通常ならば人であふれる時刻なのに、人影はほとんどなく、終末感が漂っていた。風が吹くと、捨てられた細かなゴミがカサカサと音を立て、道路を這うように移動するだけの景色。スーツの襟元をぐっと握りしめ、俯きがちに歩を進めた。
 
 4月といえば、本来ならば真新しい制服を着た新中学生や、高校生などの笑顔が眩く映る季節だ。大学生のサークルの歓迎会などがあちこちで開かれ、騒がしく、にぎやかな時期である。しかし、今は学生の姿を街で見掛けることも少ない。
 
 良く晴れた日には、「外に出てのびやかに過ごしたい」という春らしい願いも、今は押し殺さなければならない。家の近くの小さな公園で、幼い子供がマスクをして、母親と2人で楽しそうに遊んでいた。何気ない光景であるのに、それすらも当たり前ではない日常となった。
 
 いつの間にか桜も散ってしまった青い空が恨めしく思えてくるが、このゴールデンウイークが勝負だ。
 
 アメリカの国土安全保障省は、新型コロナウイルスは太陽光の下と、高温多湿の環境では死滅が早まるとの実験結果を公表した。
 
 もちろん、高温多湿の環境にあるエリアでも感染が拡大しているため、日光浴を勧めるものではないとのことだが、これから気温も湿度も上がり、真夏に近づく日本で、新型コロナウイルスの威力が弱まっていくことが細やかな願いである。
 
 
 非常時に命懸けで仕事をしなければならない職種がある。東日本大震災や西日本豪雨などの自然災害時には、自衛隊や消防士、警察官などが我が身を省みず、仕事に立ち向かった。今回のような得体のしれない感染症には、医療関係者が昼夜を問わず最前線で戦い続けている。
 
 一方、非常時に働きたくても、働く場を得られない職種もある。その代表例が観光業である。
 
 緊急事態宣言が全国に広がり、旅館やホテル、観光施設などは死活問題でありながら、休業要請に協力している。さらに厳しいのは、「この状態がいつまで続くのか、誰も分からない」という点である。自助努力が大きく制限される状況で、十分な「協力金」や「支援金」のある地域と、無い地域とで、ばらつきがあるのも現実である。
 
 
 このような苦境下でも、知恵を絞って、今できることを必死に探し、地元の人たち向けに弁当のテイクアウトなどで支持を得ている施設もある。「あいつ、もうダメだろう」という絶望的な下降曲線にあっても「粘って、粘って、諦めず、足掻き続ける姿勢」に、人は勇気づけられ、無条件に応援したくなる。
 
(編集長・増田 剛)

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