【西伊豆町】小さな港町の快進撃 持続的な観光地づくりの秘訣とは
2026年7月3日(金) 配信
静岡県・西伊豆町(星野淨晋町長)は2月19日(木)、「ロケツーリズムアワード観光庁長官賞」の地域大賞を受賞した。人口6300人ほどの小さな町が2024年度の宿泊客数約24万7千人とコロナ禍以前を超えたこと、〝シビックプライド〟の醸成を目的に取り組みの成果をまとめた冊子を全戸配布したことなどが評価された。賞の設立をサポートした観光庁観光地域振興部の長﨑敏志部長と、星野町長がロケツーリズムによる地域活性化の成果と今後の展望を語り合った。
――ロケツーリズムの取り組みを始めた背景を教えてください。
星野:ロケツーリズムを選んだ一番の理由は、シビックプライドの醸成です。私が子供のころ、トレンディドラマの舞台は東京で、「東京へ行きたい」と憧れを抱いた人も多かったと思います。
西伊豆の風景や魅力がテレビ画面に映し出され、町民が視聴することで、地域の価値を再認識し、「自分は良い場所に住んでいる」と自然に感じられるはずです。
長﨑:観光庁は人気観光地や名所ではなくても、日常の風景や生活の温もりなど普段の街のようすを映像作品として発信することで、より深みのある観光の促進につなげたいと考えています。
観光による地域振興には、住民が効果を実感できることが大切です。ロケツーリズムは、地域が映画やテレビなどで放送されるため、観光に取り組む意義を分かりやすく住民に伝える手段の一つになっています。これがシビックプライドの醸成にもつながると考えています。
こうしたなか、ロケツーリズムアワード観光庁長官賞を創設した(一社)ロケツーリズム協議会は、西伊豆町などの成功事例を発信し、観光による地域活性化に努めています。このため、観光庁は会の後援、観光庁長官賞の設立に向けて連携を強化してきました。
――国の17の戦略分野に「日本発コンテンツの強化」が盛り込まれるなか、ロケツーリズムに取り組む自治体に期待していることは。
長﨑:観光庁はインバウンドに対する取り組みが注目されており、とくに訪日外国人観光客数の増加率が社会の関心を集めてきました。
しかし、現在は人数以上にインバウンドの来訪によって地域が一層活性化することに重きを置いています。オーバーツーリズムによる地域住民の生活への影響が指摘されるなか、観光需要分散に確かな効果をもたらすコンテンツ産業には大きな期待を寄せています。
ロケツーリズムは有名な場所や景色の綺麗さだけを追求するのではなく、日常の風景に光を当てています。西伊豆町では、観光名所の堂ヶ島のほか、草原や港にも着目され、観光客は地域各地を訪れています。
――西伊豆町は2020年7月に、官民一体で撮影の受け入れを行う「ロケさぽ西伊豆」を立ち上げ、ロケ誘致で成果を上げています。
星野:ロケ誘致に努めたことで、作品の舞台となった場所を訪れるファンを中心に観光客が増加しています。これによって、町の認知度も向上したと考えています。作品内に登場したグルメを目的に訪れる人も増えました。町内のカネサ鰹節商店では世界唯一の潮かつおを製造・販売していますが、知名度の低さが課題でした。これがテレビ番組で取り上げられたところ、国内での注文が増え、外国人の来訪客数も増えています。現在、カネサ鰹節商店は西伊豆カツオミュージアムも開設し、受入体制を強化しています。
こうした取り組みの結果、ロケ場所の使用料や撮影スタッフの宿泊費などによる直接経済効果は24年度に約2060万円を記録。同年度、無料でテレビ、映画に登場したものを有料広告に換算した金額は6億5500万円になりました。
また、伊豆半島の西海岸を観光するうえで、車は欠かせません。だからこそ、自ら車を手配してまで訪れる強い意欲を持つ訪日客を惹きつける仕掛けを整えることで、西伊豆町はより価値の高い体験を提供し、さらに成果を上げることができると考えています。
――ロケによる地域活性化に取り組んできた過程で、大きな転機となった作品はありますか。
星野:映画「お屋敷の神さま」のロケで、町内の子供が撮影に参加しました。住民にとって当たり前の光景が、町外の人々から高く評価される地域の魅力であることを認識し、シビックプライドの醸成につながった好事例となりました。

――西伊豆町はロケツーリズムアワード観光庁長官賞地域大賞を受賞しました。評価ポイントやほかの自治体が模範とすべき点は。
長﨑:最も評価した点は商工会や観光協会、自治体などが一体となって継続的にロケを誘致し、成果を得ている点です。
大河ドラマなどの撮影地は放送期間中や放送直後に、多くの観光客が訪れ、地域も盛り上がります。しかし、放送終了後にロケによる経済効果や話題性が薄れると、ロケ誘致が停滞するケースは少なくありません。
このため、映像制作者に、地域の観光資源やロケの受入体制を魅力的に感じてもらい、撮影のリピーター化につなげることが重要になります。
西伊豆町は、あるがままの町が撮れ、エキストラの準備やロケ弁、ルールを守った情報発信など官民一体となった受入体制の下で撮影できる環境が整っています。
――ロケ誘致による地域活性化に向けた今後の方針を教えてください。
星野:映像作品を通じ町の良いものを効果的に知ってもらうため、映像制作者へのロケ誘致に今後も注力していきます。
名所である堂ヶ島のほか、わさびなどの特産品、豊かな自然などの地域資源に、より集客できる仕組みも整えていきます。地域資源に注目が集まり地場産業がさらに成長することで、地域で育った子供が地元で働き、生計を立てることができます。現状では仕事が限られているため、地域を離れる人もいます。地域の商品や資源の価値が高まり、事業者の発展につなげることで、地元に残る人も増えると考えています。これによって、地域の活力を一層向上させていきます。
長﨑:私とロケツーリズム協議会との関わりは、約10年前に課長を務めていたころからになります。当時は、権利関係の整理の重要性など、一つひとつの課題に向き合いながら取り組みを進めており、基盤づくりが大きなテーマでした。
部長として再び関わるようになった現在、活動は地理的にも大きく広がり、取り組みの内容や深さも格段に発展しています。さらに、次のステージへと進むために、どのような観点で発展させていくのかが重要です。ロケツーリズムに関わる皆様の意見を聞き、一緒に検討していきます。
各地域の皆様がより積極的にロケツーリズムの活動を継続できる土壌も整えます。これによる成功事例を全国へ広め、地域活性化につなげていきます。





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