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無秩序な地熱発電開発に反対、日本温泉協会が「声明文」発表

2012年5月21日
編集部

 日本温泉協会(廣川允彦会長)は4月27日、地熱発電が再生可能エネルギーの一つとして注目されるなか、同協会は「温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れがあることから、無秩序な地熱発電開発に反対する」という内容の声明文を発表した。同声明文は廣川会長と、佐藤好億地熱対策特別委員長の連名で出された。

 環境省は3月29日、温泉資源の保護をはかりつつ地熱発電の促進に向けた「温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」をまとめ、地方自治法にもとづく技術的助言として自然環境局長名で各都道府県知事宛に通知。また3月27日には、「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて」として、国立公園内の開発規制区域でも自然環境への影響を最小限にとどめるなどの条件つきで掘削を認める新基準を通知した。日本温泉協会は「福島県の磐梯朝日国立公園をはじめ新たな開発計画がもちあがるなか、報じるマスコミも開発側に立った論調がほとんど」という状況を受けて、以下の声明文を表明した。

【声明文】

 自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から「無秩序な地熱発電開発に反対」します。

 東日本大震災以降、再生可能エネルギーとして注目されはじめた地熱発電ですが、日本温泉協会では温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れのある「無秩序な地熱発電開発に反対」しております。

 再生可能エネルギーの必要性を否定するものではありませんが、地熱発電の実態をより多くの人たちに知っていただきたく、ここに世論に訴えるべく声明を発します。

 「無秩序な地熱発電開発に反対」する無秩序とは、人間社会に悪影響(混乱)を及ぼすことです。開発にあたっては、電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存することが前提となります。無秩序な状況を回避するために次の5つを提案しています。

 (1)地元(行政や温泉事業者等)の合意

 (2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設

 (3)過剰採取防止の規制

 (4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底

 (5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化――。

 そもそも地熱発電は、地中から採取する高温、高圧の蒸気や熱水でタービンを回して発電するシステムです。エネルギー源である蒸気および熱水は、温泉法に定義された温泉そのものであり、膨大な量の資源を採取したあと、使用済みの熱水は再び地中に廃棄されます。

 地熱発電は純国産のクリーンな再生エネルギーである、というのが開発側の論理です。

 石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるのと異なり、二酸化炭素の排出量が少なくクリーンであり、地球内部に貯えられた豊富な熱エネルギーは、半永久的ともいえる供給が可能で、太陽光や風力に比べ天候に左右されることも少なく、安定した持続可能なエネルギーである、といいことづくめの情報だけが流布されています。

 しかしながら、蒸気や熱水を汲み上げる生産井は経年変化により減衰し、数年おきに新たな補充井の掘削が必要となることはこれまでの実績からも明らかです。たとえ地球内部に貯えられた熱エネルギーが厖大であるとしても、発電システム自体は持続可能な再生可能エネルギーとはいいがたいものです。発電出力維持のため絶えず新たな掘削が繰り返されることから、周辺の「地形の改変」や「環境破壊」「温泉源への影響」が危惧されます。

 きわめて大量の熱水や蒸気(いずれも温泉)を汲み上げるため、周辺の温泉源では、その影響と思われる「湧出量の減少」「水位の低下」「泉温の低下」「成分の変化」「温泉の枯渇現象」などの事例が報告されています。

 発電後の蒸気や熱水は、高濃度の硫化水素やヒ素などを含むいわゆる産業廃棄物であり、河川等に排水することができないため、還元井から地下に廃棄することになります。しかも廃棄する際のスケール対策として硫酸などを添加するため、「土壌汚染」や「地下水汚染」などが危惧され、安全性は立証されていません。

 また、地下廃棄は、人為的に高い圧力で還元井から地層の割れ目などに戻すため(開発側の説明では人為的に圧力をかけることはなく自然浸透とのことですが)、「地滑り」「地盤沈下」「地震」「水蒸気爆発」などの発生も危惧されます。

 我が国には豊富な地熱資源がありながら、充分に活かしきれていないという意見も聞かれますが、すでに日本は「温泉」として最大限に利用している世界有数の地熱利用国です。

 温泉地には観光や健康保持や癒しを目的に、年間1億3千万人が宿泊に訪れています。我が国には1千年をはるかに超える温泉の歴史があり、世界に冠たる温泉文化を育んでいます。また、観光立国を目指す我が国の観光の重要な柱の一つが温泉であります。

 この温泉を無秩序な開発で失ってよいのでしょうか。

 このまま進めば将来に大きな負の遺産を残すことは明白です。

 温泉が存在することでその地域に人々が集い、産業が育ち、雇用も生まれます。日本の数多くの温泉地は国民共有のこの温泉を守り後世に伝えるため、日々最大限の努力をはらっていることをご理解いただき、開発にああたっては拙速を避け慎重な判断をお願いいたします。

 なお、本会では、地球温暖化防止が世界的な課題となるなか、二酸化炭素排出量削減を目的とする地産地消の温泉発電(バイナリー発電)やヒートポンプによる温泉熱利用など、既存の温泉の余熱は有効に活用すべきと考えております。 

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