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世代を超えて受け継がれてきた旧遍路宿「坂本屋」が改修作業を終え、再出発

2018年6月11日
編集部:平綿 裕一

2018年6月11日(月) 配信 

屋根瓦や壁などを改修

世代を超えて受け継がれてきた旧遍路宿「坂本屋」はこのほど、改修作業を終え、装いを新たに再出発した。愛媛県松本市にある坂本屋は、歩き遍路の難所「三坂峠」を越えた場所にあり、疲れを癒す憩いの場となっている。お接待処とは、お遍路さんのために開放されている無料の休憩所。

 木造2階建ての建物は、明治末期から大正初期に建てられた。当時、坂本屋は遍路宿を営み、周辺にも数軒の遍路宿が集まり多くのお遍路さんを迎えていた。ただ戦後に歩き遍路が減少し、宿は閉鎖されていった。坂本屋も長らく廃屋となっていた。

 一方、2004年に地元有志で「坂本屋運営委員会」が設立された。遍路文化を今に伝える地域遺産として保存を進めようと、同年春にお接待処として息を吹き返した。その後15年余り、地域住民を中心とする会員が3~11月の土日に交代制で、歩き遍路へのおもてなしを続けてきた。お遍路さんと地域、会員の交流の場として、連綿とその役割は受け継がれている。昨年11月からは、外観整備やトイレの改修工事に入っていたが、改修を終えて6月8日(金)にお披露目会が開かれた。

 接待を受けたお遍路さんは、お返しに「納め札」を渡すのが慣例となっている。坂本屋には年間600枚ほどの納め札が納められ、外国人のお遍路さんからの納め札は年々増加しているという。世界中から巡礼に訪れ、記名欄にはさまざまな国の文字が刻まれている。

 坂本屋は会員がボランティアで運営し、世代は30~80代までと幅広い。約30人が5~6人の班に分かれ、交替でお遍路さんを迎えている。お遍路さんは1日に5~10人、多いときには30人ほどが一休みしていく。

 久万高原町と松山市との市境にある坂本屋。お遍路さんがどちらの方向からやって来るかで、「松山にようこそ」「また松山にお越しください」と、会員は丁寧に対応する。ボランティアにも関わらず、「お接待を止めよう」「もう止めたい」という会員はこれまで1人もいないという。

英語で「少し休んでいきませんか」と声をかけるスタッフ

 近年では外国人遍路も増加している。一部会員では英会話のレッスンも受けているようになった。過去には、お遍路さんの姿をした外国人講師を招き、「お茶でもいかがですか」「ここは無料の休憩所です」など、実践的な英会話講習を行ったこともある。「国籍など関係なく、すべてのお遍路さんをサポートしたい」という会員の熱意は強い。

 会員の船田トシ子さん(80歳)は坂本屋の看板おばあちゃんとして有名。トシちゃんの愛称で親しまれており、訪れる人々を日々迎えている。幼いころから家族がお遍路さんにお接待をしていたのを見ていた。トシ子さんは自然とそのしぐさが身につき、「少し休んでおゆきなさい」「おあがりなさい」などと優しく語りかけ、お遍路さんたちの心を掴んではなさないという。

 お接待日は毎年 3~11月の土曜日と日曜日。時間は午前9時~午後3時。駐車場は坂本屋正面に4、5台ある。

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