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より個人の好みにマッチした旅を ― 「ホテルや旅館も選択肢の1つ」へ

2017年4月1日
編集部

 旅先で泊まるのはホテルや旅館――という当たり前の感覚は、過去のものとなるのか。

 民泊の仲介業者「エアビーアンドビー」が総合旅行会社へと変わっていく。住宅宿泊事業法案(民泊新法)が3月10日に閣議決定された。民泊が年間180日を上限に解禁されるが、同社は民泊だけでなく、体験イベントや食事、フライトやレンタカー予約も行える「トリップ」という新たなサービスを開始する。

 マッチングビジネスが活況を呈しているなかで、旅行も主戦場に躍り出た感がある。

 これは、既存の旅行会社やオンライン旅行会社(OTA)にとっても脅威である。

 かつては、旅行する際に、旅先のホテルや旅館は、旅行会社に予約したり、旅行会社が企画したツアーに参加したりするのが主流だった。

 その後、OTAの台頭によって、個人がパソコンやスマートフォンで自分の行きたいホテルや旅館を予約することが増えた。そしてこれからは、個人がホテルや旅館を含むあらゆる宿泊形態の施設を、自由に選ぶ時代が訪れる。すでにエアビーアンドビーのサイトでもホテルや旅館が、個人の所有する部屋と同列に提供されており、「旅先でホテルや旅館に泊まるのも選択肢の1つ」という位置づけである。

 民泊だけでなく、通訳案内士の制度も規制緩和によって業務独占が廃止される。「通訳案内士」という名称は無資格者が名乗れないが、誰でも有償でガイドができるようになる。また、高齢者が運転する自動車事故が多発するなか、ライドシェアサービスも、高齢者の移動手段の補完的役割として、過疎地域から浸透していくだろう。

 普段使われていないモノや、サービスを、インターネットを通じて個人や企業間でやりとりするシェアリングエコノミーの動きはさらに活発化していくはずだ。となれば、旅行会社やホテル、旅館など「プロ」は、今後どのようにビジネスをしていけばいいのか、もう一度見つめ直す時期がきた。

 民泊といえば、宿泊費を安く済ませたいバックパッカーなどを連想しがちであるが、富裕層をターゲットにした高価格の物件も人気という。インバウンドの拡大によって、日本の旅館も富裕層をターゲットにした高級旅館が増えているが、海外ではホテルや旅館では提供できないお城なども人気を得ている。日本もすでに、格安物件から超高級物件まで取りそろえ、長期滞在にも対応している。

 現在の旅館は、1泊2食を基本スタイルとしているが、多様化するニーズへの対応が遅れている施設もみられる。エアビーアンドビーなど民泊仲介サイトは、世界中の多くの旅行者が利用している。当然、日本人の若い世代も、国内旅行をする際に、これら民泊仲介サイトを利用することが予想される。

 宿泊だけではない。現地での体験プランも予約できるようになると、地域が一体となった魅力づくりも必要になる。着地型旅行を企画しても売れない、どう販売すればいいか分からないという声をしばしば耳にした。しかし、このマッチングビジネスが主流化するなかで、大きな変化が起こるかもしれない。旅がより個人的な好みにマッチすることが求められる時代へと、今がその変わり目なのだろうと思う。

(編集長・増田 剛)

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