「強羅花扇 円かの杜」 松坂美智子女将インタビュー 「和の心が紡ぐ、幸せが巡る場所」へ
2026年3月3日(火)配信

「強羅花扇 円かの杜」(神奈川県・箱根町)は昨年、全従業員で作った企業理念に沿って次の成長ステージへ前進を続けている。また、脱炭素化に向けては「水素調理器」を先駆けて導入するなど、高い環境意識に共感する旅行者が世界中から訪れる。こだわりの食材を全国から独自のルートで仕入れ、立場割烹で提供される「水円コース」は、円かの杜の看板プランとして人気だ。洗濯の内製化など、さまざまな先進的な取り組みについて、松坂美智子女将に聞いた。
【本紙編集長 増田 剛】
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□社員の成長や満足度高める
――水素調理器を2023年6月に導入され、立場割烹での「水円コース」が人気を集めています。
水素調理への挑戦から約2年半になりますが、この間、メイン厨房にも水素調理を導入し、脱炭素化へ環境に配慮した取り組みを進めています。
燃焼温度が2500度と、一般的なプロパンガスと比べ600―800度も高いのが特徴で、食材へ火の入りも早い。水素調理の利点をより生かせる食材選びなど、厨房スタッフは試行錯誤しながら感覚が慣れるまでが大変だったと思います。
柴尾良太総料理長には食材ごとの細かな火入れ時間などのマニュアル化にも取り組んでいただきました。コスト的に少し割高感がありますが、可能な限り水素調理でお客様にはお届けしていきたいと考えています。

「立場割烹 むげん」で提供する特別プラン「水円コース」は厳選した食材を柴尾総料理長が目の前で調理し、一品ずつお出しします。
一番の醍醐味は対面するお客様との会話を楽しみながらのひとときで、外国からのお客様には通訳しながら、生産者さんの想いなどを説明しています。「水円コース」はリピーターのお客様が多くいらっしゃるのが特徴です。
――円かの杜は、こだわりの食材を日本全国から仕入れています。
メインのお肉は、日本を代表する滋賀県の老舗精肉店から近江牛を塊で仕入れています。
肉は切った瞬間から鮮度が落ちていくため、お客様に安心・安全、そして「美味しい」と喜んでいただけるようにブッチャー室を設置し、お出しする肉をその日に切っています。色々な部位がありますので「どのようにお出しするとお客様に喜ばれるか」と、日々考えています。
これらの取り組みによって、若い厨房スタッフたちも食材への関心が高くなっていることを感じます。
野菜や魚介類も全国から旬の食材を独自のルートで仕入れています。こだわり抜いた食材も、円かの杜の大きな魅力の一つとなっています。
――手作りのプリンやお菓子にも力を入れていますね。
若い厨房スタッフが焼き菓子を作っています。昼に盛り付けをして、チェックインにあわせて客室にセットしています。自館でお菓子を作ることによって、「より心のこもったおもてなしにつながる」との想いから始めました。
円かの杜では、お客様が到着されたときにラウンジで手作りのプリンをお出ししていますが、チェックアウト時に「とても美味しかったので買って帰りたい」といった嬉しいお声も多くいただいており、販売ができるように器や包材などの検討を始めています。
バースデーケーキも自分たちで作り、いずれは近隣の宿泊施設や住民の方々にもサービスできるように、大きな夢を実現していきたいと思っています。
――館内のアメニティや備品も、環境意識を強く感じます。
2年前から意識的にプラスチック製を使わず、環境負荷の少ない竹製の歯ブラシの採用や、客室内に備えるペットボトルをリターナル瓶に切り替えています。
箱根町の助成金を活用して、厨房から出る食材の残滓を減らすために、バイオテクノロジーで分解するゴミ処理機を導入しました。また、野菜や魚介の端材も、お出汁に利用するといった工夫をしています。
――洗濯の内製化への取り組みについて。
働き方改革などの流れから、社員寮を1棟拡充しました。館内の1階に業務用の洗濯機2台と乾燥機2台を導入し、数人のスタッフがローテーションで洗濯の内製化に取り組んでいます。
お客様の肌に直接触れるタオル類や作務衣の素材は、柔らかい綿100%をそろえているため、自分たちで洗濯できるランドリーが欲しいと思っていました。内製化により、きめ細かなメンテナンスも可能となり、コスト負担も従来よりも軽くなっています。
――企業理念については。
円かの杜は10周年の大きな節目を迎え、次の成長期へ、全員が同じ方向へ前進できるように、昨年3月に企業理念を作りました。理念に入れる言葉はグループワークをしながら、全従業員にアイデアを出してもらいました。
併せて接客についても、自らがトレーニングできるように、お手本となる基本マニュアルも作りました。
私たちが共有する理念は、「和の心が紡ぐ、幸せが巡る場所」です。
日本らしさである和(円=縁)の心を大切にし、その精神そのものや、旅館だからこそ提供できる価値を世界に発信することで「確かな日本文化を未来へ継承していく想い」が込められています。
また社員幸福度ナンバーワンの会社でありたいとの考えから、社員の成長や満足度がさらに高まり、理想的な循環が生まれる、「幸せが巡る場所」を目指しています。
――ありがとうございました。







