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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(253)」 鎮守府4市の学術交流(広島県呉市)

2026年2月7日(土)配信

4市の理系研究者による学術交流会

 昨年12月、広島県呉市で旧鎮守府4市(横須賀、呉、佐世保、舞鶴)に所在する高専・大学の理系の先生方による学術交流会に参加した。集まったのは、建築、土木、都市工学などの理系の先生方であり、テーマは「理系で読み解く日本遺産」である。

 日本遺産は、文化庁が認定する歴史・文化の物語で全国104件が認定されているが、この物語の構成文化財を、理系の先生方が調査・研究し、その活用手法を提言するという、誠に異色の研究会である。

 2021(令和3)年3月、舞鶴市で開催して以来、各都市持回りで、今回で5回目となる。歴史や文化財あるいは観光の専門家などが主に関わる日本遺産を、「理系」で読み解くとどうなるのか。医師でもある当時の多々見舞鶴市長の発案であった。

 旧鎮守府は、明治以降、4軍港が順次整備された。短期間のうちに都市の根幹となる水道施設や港湾、鉄道、トンネル、橋梁、通信施設など共通の都市インフラが整備された。同時に、軍港としての砲台や作戦指令室などの防衛拠点はもとより、鎮守府庁舎、司令長官官舎などが整備され、都市が築かれた。

 最も早い横須賀鎮守府の開設は1884(明治17)年だが、既に140年以上の歴史が経過している。明治の近代化遺産である。これらの施設の活用には、建物などの構造や強度など、安全性の確認が何より重要である。

旧呉鎮守府庁舎(海上自衛隊呉地方総監部庁舎)

 今回の研究会でも、これら施設活用のための「調査用ロボットの開発と安全調査」「VRによる遺跡の保存・研究」「ドック(船渠)の改修過程と活用に関する研究」など、理系研究者ならではの発表が続いた。研究室で学ぶ院生や学生たちの発表もあり、遺構内部で発掘調査なども含め、彼らの生きた学習機会にもなっている。

 しかし、理系の研究発表は、専門的過ぎて一般市民にはなかなか理解できない部分も多い。そこで今年は、異分野の研究者によるクロストークが行われ、市民に調査研究の意義をわかりやすく伝える試みも始まった。これは研究者自身が自らの研究の意義を問い直すという意味も持っていた。

 この研究発表を踏まえ、各市の行政担当者(文化財や観光など)や学芸員らによるシンポジウムも開催された。行政としての地域遺産の活用と、その施策の意義と必要性を直接市民に呼び掛ける格好の機会にもなった。

 鎮守府4市は、遠く離れて存在する「飛び地」型の日本遺産である。こうした学術交流に加えて、4市のガイド間の交流、各湾の民間クルーズ会社によるクルーズサミット、4市鎮守府ゆかりの物産の同時販売やイベント交流など、多様な交流を行っている。シリアル型といわれる日本遺産の一つのモデルでもある。

 遺産の活用には、多(異)分野の研究者や実務家たちの協力が不可欠であることを示す、いい機会にもなった。

(観光未来プランナー 丁野 朗)

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