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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(223)」 木彫刻のまち井波の新たな試み(富山県南砺市)

2023年9月2日(土) 配信

北陸最大級の木造建築物といわれる瑞泉寺

 まち全体が「木彫刻の美術館」と呼ばれる富山県井波のまち。現存する北陸最大級の木造建築物といわれる瑞泉寺門前は、緩やかな勾配の参道に石畳が敷き詰められ、その両側に、工房や町家が軒を連ねている。どの家も、鳳凰や龍、七福神、動植物などの多彩なデザインの木彫看板や表札が掲げられ、いかにも木彫の町という風情である。

 木彫刻職人の工房はどれも通りに面していて、作業風景を見学できる。1枚の大きな分厚い板に墨で下絵を書き、200~300種類もあるといわれる彫刻刀を使い分けて、荒落し・荒削り・小彫り・仕上げ彫りといった段取りで作業が進む。大きな欄間や繊細な仏具などは、完成までに数カ月から数年かかると言われ、その間、職人たちは一心不乱に働き続ける。

 木彫のまち井波の発端は、1762(宝暦12)年の瑞泉寺大火が発端と言われる。大火後の瑞泉寺再建に、京都から派遣された東本願寺の御用彫刻師・前川三四郎に、井波の宮大工4人が師事した。井波の宮大工たちは、京の芸術性の高い匠の技を磨き、受け継ぎながら、華麗で繊細、かつ豪壮で大胆な井波彫刻を育てていった。
 瑞泉寺山門にある「雲水一疋龍」は、前川三四郎の作と言われる。また本堂に隣接して大正時代に建てられた太子堂は、各所に井波の職人たちの技の真髄がみられる。

 このような井波の宮大工や木彫の町の物語が2018(平成30)年、「宮大工の鑿一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」として日本遺産に認定された。

 木彫刻の作品は、これを支える多様な技術が不可欠である。参道を北に下る本町通りには、鑿屋、刀屋、建具屋、木地屋、装飾屋などが並ぶ職人街があり、井波彫刻を支える職人たちである。現在、井波には約200軒の工房があると言われる。若い職人も各地から集まり、腕を磨き、日本各地の曳山や屋台、寺社仏閣や城郭の彫刻など日本の伝統文化を支えている。

 しかし、時代の嗜好の変化などで木彫刻の需要自体が減り、かつてと比べると職人の数は減っている。地域に空き家も増え、まち中の賑わいは薄れてきているのも事実である。

職人技が生きる古民家再生のBed and Craft

 そんななか、井波の街中ではここ数年、注目すべき動きがある。元建具屋や料亭、病院などの空き家(古民家)を活用して、木彫刻などの職人との縁を大切にする宿泊施設「Bed and Craft」である。職人がそれぞれの技をフィーチャーし、「一棟一職人」をキーワードとした職人やその作品と触れ合える宿である。各宿はオーナー制だが、職人が自らの技を駆使した拘りの宿は既に6軒を数える。どの作家の宿に泊まるかを選ぶことも楽しみの1つであり、そこで出会った作品は購入することもできる。

 井波と同じことはできないが、こうした地域再生の手法は、日本の各地に残る伝統工芸の町には大きな参考となろう。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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