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ジョルダン、MaaSで快適な交通を 「乗換案内」の進化目指す(佐藤俊和社長インタビュー)

2023年4月29日
編集部:長谷川 貴人

2023年4月29日(土)配信

佐藤俊和社長

 経路検索から予約・決済まで、多彩なサービスで“快適な移動”をサポートするジョルダン(佐藤俊和社長、東京都新宿区)は、最短・最適な交通ルートを検索できる「乗換案内」を展開している。コロナ禍による人流の制限を経て、国や自治体とも連携し、地域課題の解決に資する日本版MaaSを牽引している。交通の面から社会課題の解決に貢献する同社の佐藤社長に、デジタル活用の観光やこれからの見通しについて話を聞いた。

【聞き手=編集長・増田 剛、構成=長谷川 貴人】

佐藤 俊和社長インタビュー

 ――コロナ禍からの現状について、お聞かせください。

 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年当初は、人の移動が制限されたことで「乗換案内」へのアクセス数が激減し、広告収入が半分以下まで減りました。終電繰り上げや減便などで行われたダイヤ改正を反映させる必要があり、アクセス数が減ったうえに、メンテナンスコストが非常に掛かる状況からの始まりとなりました。

 徐々に人流が回復へ向かっても、緊急事態宣言などが繰り返されるたびにダイヤが変動し、速やかに対応させなければならず大変でした。法人向けに鉄道会社やバス会社からの要請を受けて、システムの開発・提供をしていましたが、こちらもコロナ禍2年目には激減し、どちらも落ち込む状態を迎えました。

 そのようななか、コロナ前から動き始めていたのがモバイルチケットなどのMaaS(Mobility as a Service)です。MaaSはフィンランドの企業から生まれた考え方であり、スマートフォン1台で複数の公共交通や移動サービスの予約から決済、そして移動中の案内まで一括で行うサービスで、ぜひ日本でやりたいと思っていました。

 しかし、日本は鉄道会社やエアラインなど、予約そのものが自社のダイレクトマーケティングツールになっています。それでも、ジョルダン以外が提供するMaaSアプリからでもすべての機能が使える共通のプラットフォームをつくりたい。そう考え、日本国内向けの「J MaaS」プラットフォームを立ち上げました。旅行者に、ジョルダンをはじめとしたさまざまな企業のMaaSアプリを通じて、公共交通などが予約しやすくなるように開発しました。

 ――一方で、アプリ版「乗換案内」はモバイルチケット「一日きっぷ」の販売を始めました。

 MaaSをどこから始めるか話していたとき、地域のグルメと特産品付きの企画乗車券である、京浜急行電鉄の人気商品「みさきまぐろきっぷ」の存在を知りました。これが日本に合った1つのMaaSのカタチではないかと思い、アイデアを出し合い、システムをリリースさせていただいたのが始まりです。

 やはり、デジタルなプラットフォームを利用すると、今までにない利便性や情報の解析ができるようになります。紙仕様のチケットで行う、加盟店からの回収や京急での集計作業などの処理がなくなることで、両者がすぐに結果がわかるようになり、人流のデータも集めやすくなりました。回復に向かうインバウンド客に対しても、デジタルなら英語や中国語などの言語対応がしやくなることでしょう。

 ――これからインバウンドが増えていくなかでの対応は。

 中国人の多くが利用しているプラットフォーム「Alipay(アリペイ)」上で、中国語対応の「乗換案内」ミニアプリが利用できます。訪日時は、そこで1つのアプリの中から、目的地までの経路検索と、その際に利用可能なモバイルチケットが購入できるため、両替せずにキャッシュレスで旅行ができます。インバウンドではそのような展開を考えています。よりユーザーの手間を省き、使いやすく、シームレスに色々とやれるようなカタチにしたいです。

 ――これからの「乗換案内」の見通しは。

 MaaSに取り組みつつ、「乗換案内」に対しても新しい方向性が見えてきました。1つは、交通手段の候補に地方のバスが増え、さまざまな地方自治体との関係が増えたことで、地方版の乗換案内のようなアプリを作り始めました。加えて、その地域の情報を発信できるような方向に発展していければと考えます。

 そして、単なる近場の経路検索としての利用から、遠方への観光にどう利用してもらえるようになるかを今後の大きなテーマにしています。スマホの「乗換案内」を見ながら、どうやれば旅行に行きやすいかという考えを基に、皆様に提案できたら面白いなと考えています。

 私はスマホ1台で、旅行のプランニングから決済までもっていきたい。観光や旅行の大変さをできるだけなくすようにしていきたいと思っています。ただ、企業として囲い込むよりも情報の基盤みたいなものをつくり、我われのユーザーには早めにそれを届け、使ってもらいながらシステムを改善していく。大きな流れとしてはそうあるべきではないかと思うのです。

 消費者側の視点では、スマホですべての情報を得て旅行を決められたという具合にしたい。そこにはさまざまな好みがあっても良いでしょうから、我われが旅行を独占したいという訳ではなく、基盤として共通のものを使いながら、広く皆様にも使ってもらいたい。場合によっては、ホテルや旅館が自ら旅行パッケージを提案する時代が来るかもしれません。

 ――現状から課題を感じていますか。

 使いやすくしたいというのがこれからの大きな課題となります。今も音声認識システムの活用を検証しているチームがあり、これからはAIの活用が進んでいく可能性がありますので、システムをステップアップしていかなければならないと思っています。

 また、私は旅行で公共交通機関を利用することも、自分の足で歩くことも好きです。このなかで色々と不便があると感じたものを少しでも分かりやすくし、地域の活性化につなげていきたい。移動は楽になったし、次は観光のステージだと考えています。自分にとっても欲しいものをつくっていますので、永遠にテーマが尽きないところです。

 ――ありがとうございます。

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