JTB、観光地の交通事故対策 京都府警やトヨタなどと始動

2025年9月1日(月)配信

プロジェクトメンバーによる締結式のようす

 JTB(山北栄二郎社長)などは8月29日(金)、京都府の交通事故削減に向けた「京都 はんなり 和(なごみ)のみちプロジェクト」を発足した。連携協定を京都府警察本部(吉越清人本部長)やトヨタ・モビリティ基金(豊田章男理事長)、トヨタ自動車(佐藤恒治社長兼CEO)、東京海上日動火災保険(城田宏明社長)と結び、官民連携による観光地の交通事故対策などに取り組む。

 京都では近年の観光客の増加に伴い、観光地と共存する生活道路での事故が増加傾向にあった。とくに京都を代表する観光地の「嵐山地区」は、国内外からの観光客の集中による交通渋滞や、観光客と地域住民の生活動線が交錯。生活道路での交通事故リスクの高まりなど、観光地特有の交通課題が顕在化している。

 今回は「嵐山地区」をモデルケースに、官民が保有するデータによる分析とそれぞれの強みを生かし、交通事故削減に向けた対策を講じることを目指して連携していく。

 同連携では、京都府警察本部の警察データ、トヨタ自動車の車両データ、東京海上日動の損害保険データ、JTBの観光・人流データを統合的に分析。①嵐山地区における交通実態の把握(幹線道路をつなぐ生活道路の車両数分析など)②事故発生リスク地点の可視化と要因解析――の2つの取り組みを実施する。各社が保有する多様なデータを組み合わせることで、同取り組みの学びを生かし、生活道路での事故削減を目指す。

 取り組み期間は2026年3月31日(火)まで。

「GENSEN HOLDINGS」に統合(大江戸温泉物語グループの運営会社)

2025年9月1日(月) 配信

 全国に71の温泉宿、温泉リゾートホテル、テーマパークなどを運営する大江戸温泉物語グループは9月1日(月)、運営会社を「大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ」と「湯快リゾート」から、「GENSEN HOLDINGS」(川﨑俊介社長、東京都中央区)に統合した。

 この統合により、運営体制の一本化を行い、「さらなるサービスの向上を目指す」(同社)としている。

 なお、運営施設の「大江戸温泉物語グループ(大江戸温泉物語ブランド、TAOYAブランド)」に変更はない。

第15回「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2025」募集開始 応募締切日は11月3日(必着)

2025年9月1日(月) 配信

 日本外航客船協会(JOPA、会長=向井恒道・商船三井クルーズ社長)は、第15回「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2025」の募集を開始した。

 オリジナリティーに溢れ、日本のクルーズ・マーケット拡大に貢献した商品を企画造成、実施した旅行会社などを顕彰するもので、国土交通省、観光庁、日本旅行業協会(JATA)が後援する。

 対象は、日本外航客船協会と日本旅行業協会加盟会社が企画造成し、2024年11月~25年10月末までに催行実施したクルーズ。

 応募締切日は11月3日(必着)。「グランプリ」を受賞したクルーズや商品などが、国土交通行政施策の推進、普及、啓発に寄与する場合には、国土交通大臣賞も受賞する。

 表彰式は12月19日(金)午後4時から、東京都千代田区平河町の海運ビルで開く。

 「クルーズ・オブ・ザ・イヤー 2025」選考委員会は次の各氏。

 【委員長】池田良穂(大阪府立大学名誉教授、大阪公立大学客員教授)【委員】池畑 孝治 (JATA 理事・事務局長) ▽上田寿美子(クルーズライター) ▽中川哲宏(国土交通省海事局外航課長)▽中村辰美(イラストレーター、PUNIP cruises代表)▽茂木政次(「クルーズトラベラー」編集長)▽吉田絵里(「クルーズ」編集長)

最大2万円引き、「2025近ツー秋のクーポン祭」(近畿日本ツーリスト)

2025年9月1日(月)配信

10月末までの秋の旅行がお得に

 近畿日本ツーリストブループラネット(栗山千三社長、東京都江東区)は8月26日(火)、秋の旅行に割引クーポンを利用できる「2025近ツー秋のクーポン祭」キャンペーンを始めた。対象期間の国内ダイナミックパッケージ(交通+宿泊)商品に、1回当たりの申し込みにつき最大2万円引きのクーポンを利用できる。

 対象期間は10月1日(水)~11月30日(日)出発分。近畿日本ツーリスト公式サイトで8月26日(火)~10月31日(金)までに、対象期間の国内ダイナミックパッケージを3万円以上予約した人を対象とする。

 クーポン割引金額は、旅行代金が20万円以上で2万円引き、15万円以上で1万円引き、10万円以上で7000円引き、7万円以上で4000円引き、5万円以上で2500円引き、3万円以上で1500円引きとなる。KNTポイントも併用可。クーポンコードは、同社公式サイトのキャンペーンページから。

【日本トランスオーシャン航空(JTA)】管理職人事異動(9月1日付)

2025年9月1日(月) 配信

 日本トランスオーシャン航空(JTA)は9月1日付の管理職人事異動を発表した。

 オペレーションコントロール部スケジュール統制グループチーフマネジャー(オペレーションコントロール部スケジュール統制グループマネジャー)花城真也

 運航乗員訓練審査部シミュレーター運用管理グループチーフマネジャー(運航乗員訓練審査部訓練審査業務グループマネジャー)根間悟

 人財部付日本航空出向 台北桃園空港所兼運航点検整備部第1点検整備課第1グループ兼品質保証部品質保証課整備グループ長(運航点検整備部第1点検整備課第1グループ整備グループ長)仲間健

 人財部付日本航空出向 台北桃園空港所所長(オペレーションコントロール部スケジュール統制グループチーフマネジャー)崎浜寿

 運航乗員訓練審査部シミュレーター運用管理グループマネジャー(運航乗員訓練審査部運航乗員訓練室地上教官グループグループ長)立田喜隆

 運航乗員訓練審査部訓練審査業務グループマネジャー(運航乗員訓練審査部運航乗員訓練室地上教官グループマネジャー)名嘉山兼太

 運航乗員訓練審査部訓練審査業務グループマネジャー(運航乗員訓練審査部運航乗員訓練室地上教官グループマネジャー)太田真文

【特集 No.672】 第一滝本館の挑戦 登別温泉はATに“最適な場所”

2025年9月1日(月) 配信

 北海道・登別温泉の第一滝本館は、旅行部門「登別ツーリストセンター」がツアー企画や予約、代金収受までを担い、グループ会社の「adex base」で、高品質なアクティビィティツアーを提供するなど、アドベンチャートラベル(AT)の拠点づくりと、新しいコンセプトでリブランドした「adex inn」を一体化させた「滞在型観光」へのシフトに挑戦している。南智子代表取締役と、登別アドベンチャー協会(NAA)代表理事も務める、ネイヴィン・マーク取締役会長に“ATに最適な場所・登別温泉”について聞いた。

【本紙編集長・増田 剛】

滞在型観光へ拠点づくり

 ――登別温泉で新たな魅力的なコンテンツとして、アドベンチャートラベル(AT)の拠点づくりに挑戦されています。

 :「登別市は30年後に人口が4割減少する」というデータを目にして、大きな危機感を覚えました。ずっと、地域活性化にできることはないかと考え続けていましたが、「新型コロナ」が足を前に踏み出す大きなきっかけとなりました。
 コロナ禍にお客様がまったくいなくなると、JRは間引き運行となり、空港行きのバスもなくなりました。ドラッグストアなどが閉店していき、地元住民の生活も非常に不便になりました。
 そのときに強く実感したのは、「登別のインフラは、年間約400万人の観光客が訪れていただいていたから成り立っていた」ということでした。人口減少は簡単には止められないですが、「滞在型観光」にシフトすれば、地域社会を維持していけるのではないかと思ったのです。

 ――「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」が2023年9月に北海道でリアル開催されました。

 :ATWSは大きな話題になりましたが、夫のネイヴィンは登別温泉に来たころから、「どうして登別は素晴らしい自然に囲まれているのに温泉しか売らないんだ?」と不思議そうに話していました。登別は森林が7割を占めています。そこに古くから根づく宿や温泉文化があります。アイヌ文化に触れることができる「ウポポイ(民族共生象徴空間)」も開業しました。あとはアクティビティさえ加われば、「アドベンチャーツーリズムに最適な場所」ということに気づいたのです。
 ATへの取り組みと並行して、滞在型観光にシフトすることによって、1泊目は旅館で夕食を食べた旅行者が、2泊目は地元の飲食店で食事をすれば、まちにお金を落としてくれます。
 第一滝本館の年間宿泊者数は約25万人ですが、半分の12万人が外に出ると、「登別温泉街で飲食業をやってみたい」という若い人も増え、「住んでよし、訪れてよし」のまちづくりへとつながっていくのではないか。住民と観光客がともに利用する「住観共用」の施設が増えていくことが理想です。

 ――登別温泉の魅力を教えてください。

 ネイヴィン:たくさんありますが、もちろん第一は温泉が素晴らしいこと。登別温泉には7種類の泉質があるので、とくに外国人旅行者にとっては、登別温泉に来れば日本全国のさまざまな種類の温泉を一度に楽しめるメリットがあります。
 また、森の中に1日4千人収容可能な宿泊インフラが整っている場所は世界的にみても珍しい。国際空港(新千歳空港)まで約1時間という近さも魅力です。さらに、登別温泉のシンボル・地獄谷など、地形学的にとても希少価値の高い資源が豊富にあります。
 通常アドベンチャートラベルはすごく不便なところに行かなければ体験できないものですが、登別エリアは簡単に行けてしまう。とても恵まれている場所だと思います。

 ――ネイヴィンさんは、登別アドベンチャー協会(NAA)の代表理事を務めています。

 ネイヴィン:NAAは、22年7月にアウトドアに関係している人だけでなく、地域のビジネスを支えているコミュニティーの人たちで立ち上げた組織です。「登別」という名前を使っていますが、苫小牧市や白老町、伊達市、洞爺湖町、室蘭市などを含む胆振エリア全体で持続可能なアドベンチャートラベルを推進しています。
 登別商工会議所の会頭や宿泊施設、バス会社の経営者、地元の病院なども加わって、アクティビティ体験プログラムの開発や地域活性化に取り組み、最近では登別国際観光コンベンション協会も温泉以外の魅力を紹介してくれています。

 ――課題について。

 ネイヴィン:実際にやってみてわかったのですが、……

〈旅行新聞9月1日号コラム〉――日本の夏 何度も思い出すような原風景を求めて

2025年9月1日(月) 配信

 この夏、「日本の原風景をこの目にしっかりと焼き付けたい」思いが日々強くなり、福島から新潟に続く只見線に沿った道をドライブすることを思い立った。旅立ちはいつも午前3時台。今回は圏央道から久喜白岡ジャンクションで東北自動車道に入って北上した。

 風光明媚な夏の猪苗代湖を横目に、まずは「腹ごしらえ」と、福島県喜多方市内にある老舗「坂内食堂」を目指した。喜多方市内は「朝ラー天国」。朝の8時過ぎに到着したが、すでに坂内食堂の前には長蛇の列。だが回転が良く、それほど待たずに入店できた。20年ほど前から喜多方ラーメンの味に魅了され、今や東北への旅では、“素通り”不可のエリアとなっている。坂内食堂の味は確かで、早朝から他県ナンバーのグルメたちが並ぶ理由が分かった。

 空腹が収まり、会津若松市の飯盛山に向かった。飯盛山は戊辰戦争の際、白虎隊が自決した悲劇の物語の舞台として有名だ。二重螺旋六角三層のお堂「会津さざえ堂」も、ずっと気になっていた。未だ訪れていない素晴らしい場所を探しながら旅することがとても楽しい。

 会津さざえ堂の前には、多くの観光客がスマートフォンで撮影していた。私は「せっかくだから」と入場券を買い、お堂内部の迷宮的な建築構造を流れるように体感した。

 飯盛山の山上から会津若松城(鶴ヶ城)を探したが、見えなかった。この日は「福島県内で観測史上最高気温を記録した地点がいくつかある」とラジオが興奮気味に伝えていた。それでも陽炎で揺らぐ本丸まで向かった。でも、やはり鶴ヶ城は「雪景色の方が綺麗だ」と思った。

 その後、旅の主目的である越後街道、そして会津坂下から沼田街道に入った。沼田街道は只見川と只見線に沿っており、揺蕩う只見川の水面や、趣ある民家の営みをゆっくりと目に焼き付けながら車を走らせた。 

 途中、遠くで遮断機の音が聞こえた。しばらく脇に車を停めてシャッターチャンスを待った。すると、2両編成の電車が目の前を旅情たっぷりに走り去って行った。

 このまま新潟県の小出辺りまで走る予定だったが、道路が通行止めになっていた。こういう行き当たりばったり旅で、失敗するところが自分らしいなと思った。

 少し引き返して、国道121号線で湯西川、鬼怒川、日光、中禅寺湖などを通るルートで群馬県・老神温泉の旅館に宿泊した。宿の夕食はビュッフェスタイルで「お酒も飲み放題」だった。良心的な料金で、ほとんどが日本人の宿泊客だった。谷底の川のせせらぎの音も心地よく、久しぶりに熟睡できた。

 群馬県には草津や伊香保、水上、四万など有名温泉地が多いが、少し地味な老神温泉には大小さまざまな宿がある。自分の旅のスタイルと身の丈に合った宿を選んだ旅人たちが、私を含め、それぞれの旅を精一杯楽しんでいるさまが心地よかった。

 真夏の青い山と、深い谷に囲まれた早朝の温泉街には、失われつつある日本の懐かしい匂いがあった。私はこの朝の、何気ないが、何度も思い出すような原風景を求めていたのだ。

 宿でのんびりと過ごしたあと、近くの道の駅「川場田園プラザ」を訪れた。上州御用鳥めし本舗登利平沼田店で、美味しい鳥めし弁当を買い、帰路に就いた。

(編集長・増田 剛)

25年版加賀パフェ 市内4店舗で販売開始

2025年8月31日(日) 配信

各店こだわりのオリジナルパフェが味わえる(写真は「はづちを茶店」の加賀パフェ)

 石川県加賀市のご当地グルメとして人気を集めている「加賀パフェ」の2025年度バージョンが完成し、7月26日から市内4店舗で提供が始まった。

 加賀パフェは、加賀市の新たなおもてなしメニューとして16年に開発された、「地産地消」と「おもてなし」をテーマにした5層構造のご当地パフェ。各層には、加賀九谷野菜トッピング、加賀ぶどうアイス、味平かぼちゃアイス、温泉卵、ポン菓子、野菜スポンジケーキ、はちみつ生クリーム、色鮮やかなゼリー、名物菓子「吸坂飴」オリジナルソースなど、地元素材をふんだんに使用しているのが大きな特徴だ。

 各店舗が、テーマに沿って、それぞれ独自のアレンジを施しており、同じ加賀パフェと言っても、店舗ごとにまったく異なる味を楽しむことができる。

 提供する際は、地元作家が「加賀パフェ」のために製作した山中漆器や九谷焼、加賀手織といった地元の伝統工芸品を用いるなど、器にもこだわっており、加賀の魅力を五感で味わうことができる逸品となっている。

 提供店舗は、はづちを茶店(山代温泉)、「加賀フルーツランドCafe Green×Green」(橋立)、「cafe & bar髙乃蔵」(加賀温泉駅)、「カフェ・ランチ加佐ノ岬」(橋立)の4店舗。料金は、献上加賀棒茶付きで全店統一1500円(税込)。

奥出雲多根自然博物館 國學院大の学生受入 約2週間のインターン

2025年8月30日(土) 配信

(左から)田中さん、茂津目さん、奥出雲町の糸原保町長、藤原さん

 島根県・奥出雲町の「奥出雲多根自然博物館」(多根幹雄理事長、宇田川和義館長)は8月1日から13日までの約2週間、國學院大学観光まちづくり学部(神奈川県横浜市)に在籍する学生3人をインターンとして受け入れた。昨年8月に続く2回目の実施で、大学との連携強化や若い世代の感性や視点に触れることで博物館の組織活性化をはかる。

【土橋 孝秀】

 参加したのは3年生の藤原向希さん、2年生の茂津目真那さん、1年生の田中茉菜美さん。3人は関東地方出身で奥出雲町や島根県を訪れるのは初めて。博物館でのインターンを希望した理由について、藤原さんは「学校で“地域を見て地域を動かす”ということを学んでいますが、博物館は地域とのつながりが強く、それに沿った場所だと感じました」と語った。

 同館は世界の化石約2千点や地球を形成するさまざまな鉱物、恐竜の全身骨格標本などを展示する。「日本で唯一の泊まれる博物館」として、宿泊施設やレストランを併設。地域観光の拠点として、同館近くで運営する古民家を改修した一棟貸しの宿「奥出雲百姓塾」も運営している。

 インターン期間中、学生は博物館での夏休みのイベント補助に加え、客室でのベッドメイキングや清掃、百姓塾での草刈り、清掃など多岐にわたる業務に取り組んだ。同館向かいにある温浴施設「長者の湯」(修繕工事のため休業中)の駐車場で行われた夏イベントでは、前日準備や当日サポートも行った。

恐竜ジオラマ作りのイベントをサポートした

 恐竜のジオラマづくりイベントのサポートでは、材料準備や子供への作り方の説明、ジオラマの配置指導などを行い、イベント運営の流れを学んだ。藤原さんは「お客様が気持ちよく帰っていただけるよう、『ごゆっくりどうぞ』『ありがとうございました』など、最後の一言を大事にしました」と接客業経験を生かした対応を心掛けたという。

 8月5日には奥出雲町の糸原保町長を表敬訪問。糸原町長からは認定を目指す世界農業遺産への取り組みなどの説明を受けた。そのほか、期間中には松江城や足立美術館、さぎの湯温泉、出雲大社、石見銀山など県内各地を視察。初めて訪れる土地を自分の目で確かめ、観光資源や地域特性を体感した。

稲佐の浜など周辺視察も

 藤原さんは「奥出雲町はコミュニティのつながりが濃密だと感じました。博物館の皆さんも1人1人が、満足して帰ってもらいたいという強い想いを持っていたのが印象的でした」と振り返る。

 宇田川館長は「昨年に引き続き、学生が来てくれたのは大変ありがたいことです。学生の純粋で素直な視点は、日常業務では気づかない改善点を教えてくれます。学生にとっても博物館での経験が役立つよう、互いにメリットのある体験活動として、今後の運営改善に役立てたいです」と話す。

 約2週間の期間中の世話役を担った同館の門脇修二専務理事は「学生が積極的に取り組んでくれたのが印象的でした。博物館にとってもよいアドバイスをいただきました。今後に生かしていきたいです」と述べた。

奥出雲PR動画完成 映像作家・堀田氏が制作

2025年8月30日(土) 配信

「奥出雲の魅力は底知れない」と話す堀田明宏氏

 著名アーティストのプロモーションビデオや企業CMの制作など第一線で活躍する映像作家・堀田明宏氏が今年5月、故郷の島根県・奥出雲町をPRする動画を完成させた。

 同町では「たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業」が2019年に中国地方で初めて「日本農業遺産」に認定され、現在は世界農業遺産認定を目指している。PR動画は、町の豊かな自然や美しい景観を発信しようと同町農業遺産推進協議会が企画し、堀田氏に制作を委ねた。

 完成した動画は奥出雲の豊かな自然と、そこで暮らす人々の日常を切り取った26分の長編。稲作や和牛飼育、木炭生産、原木シイタケやソバ栽培、たたら製鉄の操業、たたらで栄えた櫻井家や絲原家の歴史的景観など、里山の営みと四季の移ろいが静かに、しかし力強く映し出される。

 撮影は1年5カ月に及び、映像制作会社を構える東京と奥出雲を行き来しながら、季節を逃さぬよう撮影を続けた。ときに撮影許可の交渉から始まり、地域の人との距離を縮めることも重要な仕事だったという。堀田氏は「地元でも知らない場所がたくさんあった。撮影を通じて、町の豊かな地域性を改めて知ることができた」と振り返る。

 奥出雲で生まれ育ち、高校まで過ごした。上京し青山学院大学経済学部を卒業後、映像作家の佐藤輝氏に師事し、1985年に独立した。以来、CMやミュージックビデオ、ドキュメンタリーなど幅広く手掛けてきた。

 なかでも多くの仕事をともにした歌手・中島みゆきさんのヒット曲「地上の星」のプロモーションビデオ制作で注目を集めた。アイルランドやフランスを旅しながら撮影した現地の人々の表情や生活のようすが、中島さんの歌の世界観に鮮やかな奥行きを与えたのだ。

 「この村の山の向こうに何があるのか」。幼少期に抱いた興味心や冒険心が堀田氏の創作の原点だ。「子供時代に奥出雲で遊んだ経験の一つひとつが、今でも映像の細部ににじみ出る。小さい生き物や虫、花に対する愛情みたいなものが根底にあるのだと思う」と語る。

 近年は奥出雲で過ごす時間が長くなった。自宅近くにある3反の農地で米作りも行う。7月中旬には母校の小学校で講演し、自身の経験を語りながら好きなことを見つける大切さを子供たちに語りかけた。

 堀田氏は「奥出雲の魅力は底知れず、とても1年半で撮り尽くせるものではない。今は奥出雲の神楽に惹かれている」と意欲を見せる。

【土橋 孝秀】