震災復興を支援、新会長に桑島氏(知床グランドホテル北こぶし)

小林会長があいさつ
桑島繁行新会長

日旅連総会、熊本で開催

 日本旅行協定旅館連盟(小林喜平太会長)の第55回通常総会が3月2日、熊本市内のホテルで開催された。昨年4月に発生した熊本地震の復興支援として、熊本での総会開催となった。

 任期満了にともなう役員改選では、小林会長の後任に桑島繁行氏(知床グランドホテル北こぶし)を選出。新体制で新年度に臨むことになった。

 小林会長は震災後の日本旅行、日旅連などの支援に感謝を述べ「九州ふっこう割で、少しずつ戻りつつある」と報告。日本旅行の中期経営計画「アクティブ2016」については「4年目の成績として、宿泊券販売が右肩上がりになった」と評価した。

 日本旅行の堀坂明弘社長は、熊本地震について地元出身者としての思いを述べ、「観光による復興が力になる。被災した熊本城も見てほしい」と訴え、「九州域外からお客様に来てもらい、海外には安心安全を伝えることが大事」と強調した。

 新中期経営計画「バリューアップ2020」では「マーケットインの発想を押さえ、強みの創出と事業の価値向上を行う」と説明。4つの柱として(1)お客様の価値実現(2)地方創生(3)社員の価値向上(4)JR西日本をはじめとする株主の価値向上――を挙げ、地方創生推進本部や仕入・誘客推進センターなど社内推進体制を配置。「人材を各自治体、DMOに派遣し、行政と旅連と一緒に地方創生を実現したい」と意欲を示した。

 赤い風船45周年では「次の50年に向けてブランド価値を向上させ、上質な旅、アクティブシニア向け商品など、各施設の素晴らしいところを商品にしたい」と語った。

 新年度事業では、バリューアップ2020とリンクした「宿泊販売」拡大を重点に、(1)地域誘客事業(2)赤い風船WEB商品化(3)赤い風船WEB宿泊商品販売の拡大(4)インバウンド事業⑤災害地域への宿泊販売支援――を推進する。

 このほか、ワークショップの開催、台湾の観光物産博参加、赤い風船45周年企画協力に加え、国内旅行活性化、成長戦略、インバウンドなどの各委員会活動を盛り込んだ。

 総会終了後には、阿蘇市観光協会の稲吉淳一会長(阿蘇プラザホテル社長)が「熊本地震について」を講演。「人生にはまさかの坂が本当にある」と過去の水害、噴火と今回の地震体験から得た教訓を語り、「旅行会社や旅連などの支援が本当にありがたかった」と感謝を述べた。

 新副会長は次の各氏。松岡利幸(ホテル阿寒湖荘)▽吉村譲(萩城三の丸北門屋敷)▽東郷和浩(ゆふいん山水館)▽白石武博(カヌチャベイホテル&ヴィラズ)

夜桜と温泉宴会を融合、“大人が楽しめる場に”(鬼怒川温泉)

鬼怒川温泉「夜桜お花見ふれあい大宴会」のようす

 栃木県・鬼怒川温泉のお花見スポット、護国神社・温泉神社周辺を会場に第5回「夜桜まつり」が開催される。期間は4月7―16日まで。由緒ある神社敷地内に咲き誇る桜に、期間中は毎日ライトアップが実施される。特別イベント日には、神楽殿での芸妓衆による踊りやお囃子の演奏、地元グルメやドリンク販売が行われる。

 4月8―15日には、鬼怒川温泉に今も息づく“温泉宴会文化”と、美しい夜桜といった自然との融合による野外での夜の大人の楽しみとして、「夜桜お花見ふれあい大宴会」を企画した。

 温泉宴会文化とは、宴会場で食事を楽しみながら酒を酌み交わし、皆との交流を楽しみ親睦を深める文化。エンターテインメントの主役は鬼怒川温泉芸妓で、場を艶やかに盛り上げる。

 参加料は5千円(宿泊プラン販売の場合)、窓口・一般・単品販売の場合は5400円。特製お花見弁当、升ドリンク2杯、お花見団子、絵馬のお土産が付き、お座席、社殿での文化体験ができるほか、和楽踊りも楽しめる。

特製お花見弁当

 当日のスケジュールは、午後7時から開会セレモニー、7時30分から鬼怒川温泉芸妓衆による春の踊り、8時から鬼怒川温泉芸妓衆とのふれあい(お酌、記念撮影)、8時20分からお座敷遊び(希望者)、8時45分から和楽踊り、8時55分お開き・帰館、9時30分完全消灯を予定している。
 問い合わせ=日光市観光協会鬼怒川・川治支部 電話:0288(77)3111。

旅館のニーズ「18%」 ― 一律のサービスを強要していないか

 3月1日に開かれた第2回観光産業革新検討会で、宿泊産業の生産性向上や、人材不足への対応などが話し合われた。

 このなかで、興味深い資料も配布された。「日本人の国内旅行における旅館ニーズ」に関して、今年2月に日経リサーチが調査したところ、最も利用することが多い宿泊施設では「ホテル」が75%と、全体の4分の3を占めた。2番目の「旅館」は18%という結果となった。

 ホテルに次いで2番目であるが、この18%という数字は微妙な感じである。残念ながら積極的に選ばれているという印象は薄い。旅館を選ばなかった理由については、「値段が高い(割高に感じる)から」が32・1%でトップ。「行きたい場所に予算に見合った(好みに合った)旅館がないから」が16・8%と続く。

 そして、注目すべきは「仲居さんが部屋に入ってくるのがイヤだから」が14・2%と、3番目に多い結果となったことだ。

 このほかにも、「和室や布団がイヤだから」(13・8%)や、「食事が選べない」(9・3%)、「朝食・夕食は不要だから」(7・0%)、「チェックアウト時間、食事の時間などの融通が利かないから」(6・7%)など、旅館ならではの特徴やシステムが「選ばない理由」の上位を占めている。おそらく、「旅館の都合を旅行者に強要している」部分が、窮屈に感じられるのだと思う。

 私は旅館が大好きなのだが、時折「サービスの強要」を感じることもある。

 スタッフが旅行者の荷物を持って客室でお茶を入れてくれることあるが、このサービスを望む層と、「無い方がいい」と感じる層に分かれるのではないか。私自身もフロントでルームキーをもらうと、あとは自分1人で客室に入りたいと思うタイプだ。スタッフが荷物を持って客室まで持っていくサービスを望むお客には、準備ができるまでロビーでお茶のサービスをしながらご案内すれば大変に喜ばれるだろう。いつも案内を求めるリピーターであっても「今日はいいよ、ロビーで少し寛いで、あとは自分で客室に行くから」という客もいるかもしれない。「お客様が望んだ場合には、対応できる用意がある」という柔軟なスタンスの方が旅行者にとっても、気が楽だ。

 一律のサービスは、ロボット的である。お客の表情や到着時間などを考慮しながら、「お部屋までお荷物をお持ちしましょうか?」と要望を聞く。このように旅行者ごとに対応するスタンスに変えた方が、人によるサービスの価値を「感謝」として感じてもらえる機会が増えるだろうし、チェックインのピーク時での対応も余裕が生まれる。外国人旅行者が旅館に宿泊する機会が増えているが、一方的なサービスの押しつけではなく、日本人の旅行者以上に、そのサービスが必要かどうかを確認した方が軋轢も少ないだろう。

 旅館のスタッフが客室に入ることを厭う傾向がこの数年、さらに強くなっているように感じる。一方で、スタッフが客室に入らなくても十分におもてなしを感じられる宿はたくさんある。客室のスタッフの姿は見えないが、すごく綺麗に清掃されているすがすがしい客室に宿の心を感じるものだ。

 案外、自分たちが良かれと思っていたことが、旅行者に煩わしく思われているかもしれない。

(編集長・増田 剛)

生産性課題は内部に、宿泊産業が抱える問題を検討(観光庁)

第2回検討会のようす

 観光庁は3月1日に東京都内で、第2回「観光産業革新検討会」を開いた。今回の検討テーマは(1)宿泊産業の生産性向上(2)人材不足への対応――の2点。宿泊業の生産性向上について同検討会の委員からは、「旅館業の生産性が低いのは、外部要因ではなく、各施設が抱える内部要因(サービスの質など)が影響している」などの意見が出された。

 事務局からの発表によると、日本人の国内旅行における旅館ニーズは低く、日経リサーチによる調査では、国内旅行での旅館の利用は、わずか18%にとどまっているという。旅館を選ばなかった理由では、「価格が高い」という理由が最も多く、理由の中には「仲居さんが部屋に入ってくるのが嫌だから」という意見も挙がっている。

 宿泊業が抱える最大の経営課題が、「従業員の確保」である。どの施設も接客部門や調理部門において、人材不足を感じているものの、(1)賃金が低い(2)不規則勤務である(3)休日が不規則である――などのイメージが先行し、人材確保に至らないのが現状だ。

 事務局が報告した、宿泊業が抱える諸問題について、EHS研究所代表の渡辺清一朗氏は「宿泊産業の生産性向上を考えたときに、インバウンドを旅館・ホテルが受け入れないと遅れているという考えをもっている人が非常に多い」と述べ、各施設の経営者が、自身の施設の経営戦略として本当にインバウンドの受け入れが必要なのか、今一度検討するべきであると語った。

 また、人材不足への対応について、座長を務める大妻女子大学教授の玉井和博氏は「人手が足りない、いい人材が欲しいといっている宿泊業界が、実際にどのような人材が欲しいのか、しっかりと明示していない」とし、宿泊業界が求める“いい人材”の定義を再度見直す必要があるとまとめた。

No.455 一戸町×エフネッツ×HPE Aruba、課題に挑戦、無線LAN活用

一戸町×エフネッツ×HPE Aruba
課題に挑戦、無線LAN活用

 岩手県・一戸町では現在、屋外でも無線LANサービスを無料で利用できる。災害対策やインバウンドの利便性向上、住民の生涯学習など、活用形態はさまざまだ。今回はソフト面だけでなく、ハード面でのIT活用にも注目。無線LAN機器を製造するHPE Arubaの今井太郎部長と同町に赴き、座談会を実施した。まちづくり課の來田忍主事らを囲み、製品設置を担った富士通ネットワークソリューションズの高橋真吾氏らとともに、導入理由やメリットなどをめぐって語り合った。定住促進や学習環境整備など、無線LANの可能性は広く、観光に留まらない。

【司会進行・構成=謝 谷楓】

 
 
 ――屋外無線LAN設置の理由について。

來田:災害時の情報収集や発信を万全にすべく検討するなかで、無線LANに注目するようになりました。屋外で無線LANに接続できれば、役場や学校といった避難所となる防災拠点での情報入手が一段と容易になるからです。
 東日本大震災の際、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じた情報の発着信が注目されました。屋外でも、無線LANを経由したインターネット接続ができれば、スマートフォン端末からの状況発信も、よりスピーディかつスムーズにできるはずです。
 町では、総務省が進める公衆無線LAN環境整備支援事業として、2014年から“観光・防災Wi―Fiステーション整備”を始めました。国による支援も、実現の後押しとなりました。現在無線LANアクセスポイント(AP)は全部で33カ所。うち7カ所は、“防災情報ステーション”と定め、APと電源装置が一体となった基地局となっています。

 ――観光面での活用について。

來田:SNSへの投稿など、訪日外国人旅行者をはじめとした来訪者の利便性向上に役立っています。
 ワカサギ釣りや御所野縄文公園(博物館)など、町には国内外から注目されている施設や観光資源があります。
 菜魚湖(大志田ダム、同町奥中山地区)でのワカサギ釣りは、動画配信サイトを通じ世界に拡散されました。インバウンドの増加を果たせたのです。湖では、中国語(簡体字)の案内標識も設置しています。
 御所野縄文公園(博物館)の遺跡は、世界遺産登録に向け活動を続ける“北海道・北東北の縄文遺跡群”の構成資産の1つでもあります。インターネットに接続できる環境整備が、目標達成に寄与できれば良いです。

 ――設置のメリットについて。

來田:地域の情報が、しっかりと観光客に伝わることを大切にしています。屋外での快適なインターネット接続によって、来訪者らは、どこでも、情報を調べることができるようになりました。満足度向上につながっています。
 動態データ(人の流れ)の分析もできるようになりました。
 2016年、“希望郷いわて国体”開催時には、選手ら250人ほどを受け入れました。その際、人の流れを確認すると、竹細工体験のできる施設への移動が多いことが分かりました。データを通じなければ、分からなかった事実です。
 町は、三沢(青森県)の米軍基地に近く、米軍関係者やビジネス目的など、来訪者の目的も多様です。
 蓄積した情報を活用し、分析をすることで需要を把握し、さらなるサービス向上を目指します。

 ――セキュリティ面はどうでしょうか。

今井:無線LAN通信のセキュリティは2種類、暗号化と認証があります。
 暗号化すれば、無線LANの電波を傍受されても、通信内容を見られることを防ぐことが可能です。認証では、成功した端末のみネットワークへの接続を許可するため、セキュリティを高めることが可能です。
 暗号と認証は、どちらか一方のみ設定しているお客様が多いのですが、用途によっては暗号化と認証を同時に行うことが重要です。また、認証方法を使い分けることもできます。さらに我われの製品ではアクセス制限もかけられます。

來田:町のAPでは、用途ごとに異なる電波を出しています。観光・日常向けと、町民の生涯学習用、災害発生時用の3つです。例えば、生涯学習用では、利用の都度にパスワードを付与し、セキュリティ対策をはかっています。
 今後は、子供たちの教育への活用も視野に入れています。

 ――設置作業について。

來田:規模の大きい施設を中心に、設置計画を立案しました。無線機器を持ち歩き、設置場所を選定するということもありました。高利得指向性アンテナの場所探しには、とても苦労しました。基地局からの受診が厳しい地域で受信可能な場所を見つけたのは、散歩途中の職員でした。

高橋:景観への配慮も重視しました。町や建物の景観を損なわないよう、來田さんはじめ、役場の方々とともに、現場調査を続けました。

來田:APだけでなく、配線も見せたくないという思いがありました。設置の際には、電波の強弱との兼ね合いにも気を配ってもらいました。
 エフネッツの皆さんとはときに意見をぶつけながら、文字通り“二人三脚”で設置作業を進めてきました。

高橋:1カ所の設置に半日かけるなど、丁寧な作業を心がけました。景観を守るため、APに塗装するといった工夫も行いました。塗装する色も一律ではなく、場所に適した色を検討しながら、サンプルを取り寄せるなど、試行錯誤を繰り返しました。

今井:HPE Arubaでは、景観とのバランスを配慮したカバーも、オプションとして用意しています。塗料の付着による故障防止にも役立ちます。…

全参加者
一戸町
来田 忍 主事(総務部まちづくり課)
平 幸祐 主事
小寺 学 主事(産業部産業課)

富士通ネットワークソリューションズ(エフネッツ)
佐竹 正行 部長
小谷 洋正 所長
小林 正幸 課長補佐
岩渕 和弘 氏
高橋 真吾 氏

日本ヒューレット・パッカードネットワーク事業統括本部(HPE Aruba)
今井 太郎 部長

旅行新聞新社
謝 谷楓
(司会進行)
(順不同)

 

※ 詳細は本紙1663号または3月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

“持続可能性”テーマに、ジャパン・ツーリズム・アワード、5月31日まで受け付ける

 日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は2月23日の定例会見で、ジャパン・ツーリズム・アワードへの応募を呼びかけた。今年のテーマの、「持続可能な観光による社会の発展の実現」に沿う取り組みを募る。優秀なビジネスモデルを周知することも、実施目的の1つ。

 昨年に続き、国内・訪日と、海外2つの領域を設置。各々に付随する部門は、「ビジネス」と「地域」、「メディア」の3つを用意した。応募者は、取り組みの主体や目的、方法に適した部門を選択できる。

 「メディア」部門は、昨年あった「プロモーション」部門を踏襲したうえで、応募者拡大を狙う。出版物から映画作品まで、関係するさまざまな取り組みに手を上げてほしいという。

 なお、国内・訪日領域では「DMOを含む広域観光による社会の活性化」に、海外領域では「新たなる需要創造と促進活動」に、それぞれ重きを置き評価する。

 募集期間は、3月1日―5月31日。表彰式は、9月21日を予定し、UNWTO賞の表彰も併せて行う。

 問い合わせ=ジャパン・ツーリズム・アワード募集事務局 電話:03(5246)7221。

4月、東武特急が会津に

 東武鉄道は4月21日から、26年ぶりとなる新型特急「リバティ」の運転を始める。1日4往復が都心の浅草から福島県の会津田島まで乗り入れる。運賃・料金合わせて片道5350円。到着後は会津若松行きの列車に接続する。

 会津方面への新しい玄関口となる駅周辺では毎年7月に「会津田島祇園祭」が行われる。花嫁が列をなして歩く「七行器(ななほかい)行列」やけんか屋台と言われる「大屋台運行」など、華やかで勇壮な神事だ。

 会津田島からツアーバスで只見(福島県)にも足を伸ばせる。先日、JR只見線が「20年度にも復旧」とニュースになったばかり。町内では「日本一小さな蒸留所で世界一和食に合う米焼酎造り」が昨年から始まり、4月17日「ねっか」のブランド名で発売予定だ。

【鈴木 克範】

「さかえや」2度目の栄誉、第3回旅館甲子園開く

第2回大会に続き、2度目の優勝

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の加盟施設がエントリーする第3回旅館甲子園(大会会長=桑田雅之全旅連青年部長)の決勝戦が2月22日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた。多くの来場者が見守るなか、北関東信越ブロックの「春蘭の宿 さかえや」(長野県・渋温泉)が、前回大会に続き、2度目の栄誉に輝いた。

 決勝戦まで勝ち残り、ファイナリストに選ばれたのは、「伊香保温泉 ホテル松本楼」(群馬県)、「天見温泉 南天苑」(大阪府)、「城崎温泉 小宿 縁」(兵庫県)、「奥津温泉 名泉鍵湯 奥津荘」(岡山県)、「渋温泉 春蘭の宿 さかえや」(長野県)――の5館。

 決勝戦は第2回大会と同様、全国から選び抜かれたファイナリスト5施設の旅館経営者とスタッフが、趣向を凝らしたプレゼンテーションで、経営者のビジョンやスタッフ教育、地域への貢献などを発表。決勝審査員10人による審査と来場者による投票で優勝施設が決定した。

 審査委員長の北原茂樹全旅連会長は「それぞれの旅館が、いま我われ旅館業界が抱えている問題を、色々なかたちで全国にメッセージとして伝えてもらったと思っている。そのメッセージが旅館業界に多くのヒントを与えてくれている」と総括した。

3つの柱据え、活性化、最終とりまとめを発表(スノーリゾート活性化検討会)

最終とりまとめ案を議論

 観光庁は3月1日に東京都内で、第6回スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会を開き、「最終とりまとめ(案)」を発表した。連絡会議(仮称)の設置とモデル事業実施、アクションプログラムの策定を3つの柱に据えた。政府は初めてスノーリゾートの活性化に向けたとりまとめを行う。今後は国の観光施策にも盛り込み、活性化に向けた取り組みを早める考えだ。

 前回の検討会を踏まえ、スノーリゾートの概念に新たに観光面も取り入れる。これまで国内では「スノースポーツの場」との狭義の概念が一般的だった。今回は雪遊びや食事、宿泊、地元の人との交流なども含め広義に定義づけた。

 連絡会議では関係各省庁のほか、地方自治体、民間団体などで構成する。情報共有や意見交換のための場となる。

 アクションプログラムは、国内外の先進事例の作成・共有や、モデル事業の実施、連絡会議でのフォローアップなど包括的な策定を行う。

 モデル事業は規模別で取り組む。大規模はDMOを中心とした地域づくり、中小規模は近隣スノーリゾートとの連携などをはかる。全国数カ所でモデル事業を行い、成果を他地域に横展開する。

 首都大学東京特任教授の本保芳明氏は「関係者間で共通意識の共有が重要。各運輸局を中心に、とりまとめを基に勉強会を開くなどの準備行為も必要だ」と話した。

 このほか、今後の取り組みとして「スノーリゾート地域の経営力向上」で日本版DMOの形成を促進する。通年営業を含めた事業継続の検討も進める。「訪日外国人旅行者のスノーリゾートへの誘客の対応」では情報発信に力を入れる。とくに欧米豪や東アジア・東南アジア、富裕層を狙う。一方、国内客は子供と若者、シニアをターゲットにする。

 すでに日本政府観光局(JNTO)は同サイトでスポーツをどう扱うか議論しており、今後はスキーを大きく取り上げる見通し。SNS(交流サイト)を含め情報発信する体制を整えていく構えだ。ただ委員からは「夏期のスキー場の規制緩和」「スキーガイドの資格化」「人材不足」など、まだ課題があるとの意見も出た。

 観光地域振興部長の加藤庸之氏は「人材不足は現在、人材派遣などの仕組みづくりを始めている。今回の意見を含めて検討し、最終とりまとめを行う」と述べた。

 なお、最終とりまとめは3月末の公表を予定している。

浅草でおもてなし、通信や言語など一括整備

“興行街”としての浅草の再生進める

 東京・浅草の六区ブロードウェイ商店街振興組合(熊澤永行代表理事)、奥山おまいりまち商店街振興組合(白倉儀輝代表理事)はこのほど、「浅草おもてなしプロジェクト」を始めた。通信・通貨・言語・認証・交通・体験プログラムを一括整備する。各分野に特化した企業と連携し、受入体制を整える。

 同プロジェクトの第1弾としてモニターツアーを実施。指紋認証決算サービスなどを行った。今後は訪日外国人向けのツアーを企画し、データなどを集める見通しだ。訪日外国人が抱える問題を解決し、ストレスなく快適な観光を楽しんでもらえる環境を提供していく。

 モニターツアーは羽田空港から実施した。同空港から浅草の隅田川船着場まで船舶で移動。新たな動線として舟運を活用した。移動中は船内で「Touch&Pay」を用いパスポート・指紋情報を登録させる。登録後は浅草の提携店舗での買い物が、指紋認証のみで決済可能となる。

 今回は新たなサービスとして「Touch&Pay」の認証機能を応用し、免税対象商品の一括免税を行った。経済産業省の「IoT推進のための新ビジネス創出基盤整備事業」のモデル体系として実施し、検証する考えだ。

 実際にいくつかの店舗で買い物をしたあと、日本各地の地産商品を扱う「まるごとにっぽん」で一括免税のようすを確認。購入データを一元化することで、購入した物販をリストで確認でき一括免税を行うことができた。

 情報の「見える化」も行う。船内に設置のWi―Fiサービス「FON」で、観光案内ページの登録ができる。浅草到着後は各店舗に設置のFONから接続した観光案内ページで、指紋決済の可能なスポットが表示される。

 このほかイベントなどの開催場所や免税店、外貨利用可能店舗、多言語対応の対象エリアを地図上のアイコンで確認しながら、目的別の観光を楽しめる。

 多言語対応は通訳アプリのLiNGOのサービスを用いる。テレビ電話通訳やチャット機能のサービスで、提携店舗に通訳アプリを設置。浅草を中心に展開していく。

 同ツアーは国家戦略特区事業認定を目指す社会実験「浅草オープンカフェ」の第3期最終週(2月10―11日)に行われた。体験プログラムは「船上エンターテイメント」「サムライ&忍者サファリ」「人力車」などを用意。

 Touch&Pay、LiNGOなどで用いる専用端末の設置は順次増やして行く方向だ。地域、組合、企業が一丸となって「興行街」としての浅草の再生を進めていく。

指紋認証のようす