2026年5月17日(日) 配信

数日前に約束をしていた方から当日の朝に「こちらは今日は終日雨模様です」と一通のメールが届きました。大阪は晴れていたので気に留めていなかったのですが、出張用のカバンに傘を入れて家を出ました。相手を想う気持ちをとても嬉しく感じた連絡でした。
到着後に会議室に通されて、そのときにとても嬉しいプレゼントをいただいたのです。「雨に濡れませんでしたか?」とご当地の祭りが印刷された手ぬぐいでした。
実はこの方は私の著書やメルマガの読者でもあり、その日の天候からチャンスだと準備をしてお待ちくださっていたようです。「これをお使いください」とお出しいただいた時のはにかんだ笑顔が印象に残りました。
別の企業では、「コートやカバンは濡れませんでしたか?」と真っ白なタオルをお貸しくださったこともあります。雨の日には誰しも不快感を持つものです。ましてや持ち物が濡れた状態で打ち合わせに臨むとなると良い話もできません。この行動は、両者にとってのその後の時間を有意義なものへと変えるものだったのです。
接客研修時にこうした体験談を話すと、「そこまでやる必要性があるのでしょうか」と時折問われることもあります。人手不足でなかで、そこまでする人員配置はできない、過剰サービスではないかと。
同じことをして下さいとお願いするつもりはありません。しかし、雨の中をお越し下さる利用者への感謝の想いは伝えるべきであり、その一つの事例に過ぎません。
何も行動を起こさなくても、いつも通りに業務は進められますし苦情が出ることもありません。しかし、私たちのサービス業としての仕事はそれでよいのか、と問い掛けたいのです。目の前のお客様がお越し下さったことは、日々の当り前ではなく数多くの選択肢の中から生まれた「奇跡の出逢い」なのです。その一瞬に私たちをしっかりと記憶に残してもらうことが次の出逢い、つまりリピートを能動的に実現できるのではないでしょうか。
カスハラが社会問題として問われる時代です。スタッフを守るために「最低限のことだけを行う」考え方も広がっています。「高額な対価をもらっているところとは違うので、そこまでは求められていない」と。理解できないことではありませんが、立ち止まって考える必要があります。
おもてなしは誰のためにあるのでしょうか。もちろんお客様のためです。しかしそれだけではありません。お客様の笑顔に喜びを感じる。そこに自身の成長があり、誇りややりがいが生まれるのです。そして、そこにサービス業の楽しさがあるのだとスタッフに伝えてもらいたいと強く願います。
コラムニスト紹介

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。


