新たな“東洋モデル”へ、社会のニーズに応える人材輩出

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 東洋大学は2017年4月に国際観光学部を開設する。観光産業において産官学のミスマッチが指摘されるなか、社会のニーズに応える人材を輩出する。学部は5つのコースに分け、産業界と連携を密にする画期的な「東洋モデル」を創設した。東洋大学国際地域学部国際観光学科の島川崇学科長・教授と、徳江順一郎准教授に開設に至る想いを語ってもらった。
【聞き手=増田 剛編集長、構成=平綿 裕一】

東洋大学国際観光学部 4月開校

島川 崇教授
島川 崇教授

島川:現在、観光業界では産官学連携を謳っていますが、この3者はまるで歩み寄ろうとしていません。お互いが欠点を言い合う状況です。我われが新しい学部を開設する際に意識したのは「何を変えることができるか」です。
 まずこれまでの観光学科ではマネジメント教育ができていませんでした。「難しいことは分からないけれど、お客様の笑顔がみたい」という学生が多かった。けれども、やはりファイナンスなどの知識を、しっかり学習できる教育体制を敷くべきだと考えました。

徳江:我われが一番議論していたのは「根幹にいるお客様は誰か」ということ。これは学生の就職先の企業になるはずです。社会は即戦力や将来の幹部候補を欲していると思います。
 なので、私たちはさまざまな業界の人たちに話を聞いて回りました。「社会は観光を通じて何を期待し、観光の将来をどう描いているか」を考えました。

徳江 順一郎准教授
徳江 順一郎准教授

島川:これまでは教員らは個人事業主のような傾向が強く、自分たちの得たものを外に出していなかった。そこで、お互いの知識やノウハウを出し合い数多くの議論をしました。5つのコースは明確に学習内容や目標を分けて、新たな「東洋モデル」を構築しました。午前はインターン先で働き、午後から授業というかたちを取り入れたコースもあります。これは日本初の試みです。
 さらに観光を総合的に、横断的に学べるように全体のバランスを考えて作り、事前事後の学習も確立しました。開設の前からさまざまな企業や団体から期待を集めています。

島川:国際観光学部は①ツーリズム②エグゼクティブマネジメント③サービスコミュニケーション④観光プロフェッショナル⑤観光政策――の計5つのコースで構成しています。
 5つのコースのうち、旅行会社に特化しているのがツーリズムコースです。ここでは旅行業務取扱管理者資格を取得してもらいます。1年次で国内の試験、2年次で海外を含めた総合の試験に合格してもらいます。
 ここでしか受けられない授業に、募集型企画旅行演習があります。実際のパッケージツアーに参加し、企画者の想いや企画過程など多くを学ぶことができます。
 また、議論のなかで、パッケージツアーにホテルの視点が絶対に必要だと分かりました。以降は実習でも、必ずホテルの視察を取り入れるようにしました。旅行業に関しては学部化以前にも実績がありますが、ホテルの視点も加わり、さらに磨きをかけられました。

徳江:東洋大学は多くの学生がホテル系をはじめとするホスピタリティ系に就職しています。ただ、経営のトップになった学生は多くはありません。総支配人層や、経営者層を育成しなければと強く感じ、エグゼクティブマネジメントコースを創設しました。
 これまで足りていなかったファイナンスや計数管理、不動産知識など、それぞれ専門の教員を採用して強化しました。同時にこれまで連綿と続けてきたサービス教育を合わせ、両方を兼ね備えた人材育成をはかります。30代で総支配人となる人材を輩出することが目標です。
 一方、これまでのサービス教育の強みをより出していくのがサービスコミュニケーションコースです。学部内のコースで1番ボリュームがあります。サービスに特化することで、ホテルやブライダル、キャビンアテンダントなどのほか、小売業全般の接客を行う人材を育てます。

島川:観光プロフェッショナルコースはこれまでにない「働きながら学ぶ」枠組みが特徴です。1年次から3年次までの3年間、昼過ぎまでインターン先で働き、そのあとに授業を受けてもらいます。さらに3年間同じ企業に通うことも新たな試みです。通常は3週間ほどですが、長期間でみた方が企業の実情を理解できると考えました。

徳江:今年は間に合いませんでしたが、普段は東京の営業所で働き、休み期間中は地方にある旅館で働くといった取り組みを検討しています。
 最後に観光政策コースです。公務員となり地域それぞれのアイデンティティを発信し、観光を盛り上げたいという学生向けです。公務員試験対策も用意しています。

島川:ただ、全体を通して授業に工夫が必要でした。会計学科が行うようなファイナンスばかりでは、学生が興味を持つのは難しいと考えました。もっと親しみやすく、敷居が低くなるように努力しました。また、実習の授業も充実させる一方で、理論に立ちかえることも重要視しました。

徳江:「女将・総支配人論」という授業があります。一見面白くて受けたいと思うかもしれませんが、担当の先生には理論をしっかりと教えてほしいと念を押しています。
 例えば「女将が果たしてきた社会的役割」「近年なぜ女将が減少し、ホテル的な経営をする旅館が増えたのか」などについてです。きちっと分析してもうことが前提で、語っていただく。
 学生側も事前に調べさせ、そして実習で現場の人とやりとりをする。事後は吸収したことをさらに学ぶ、というプログラムをどんどんやります。

島川:コースは5つに分けましたが、すべての学生に受けてほしい授業があります。リーダーシップ論とサステナブルツーリズム論です。
 観光で人と人をつなぎ、物と物をつなぎ合わせるときに必ずリーダーシップは必要です。リーダーシップの経年変化を通して、リーダーシップの潮流を学んでほしい。
 国連世界観光機構はサステナブル(持続可能性)とレスポンティビリティ(責任)を強調しています。これを踏まえ、産業と一体となって、連携しなければなりません。
 一方で産業はともすれば1―2年の近視眼的な利益に動いてしまいがちです。ここで我われが歯止めとなって、観光における持続可能性や責任を伝えていくことが使命だと思っています。

徳江:私たちは学部開設にあたり、インターンにも力を入れました。これまで産学連携が大事といいながら、学生を丸投げしている状況でした。ただの労働者として働くので、相手先の企業について何も学べない。戻ってくれば、業界を嫌いになる学生もいました。
 そこで、私達はインターン先を可能な限り視察しました。日本国内はもちろん、タイ、スリランカンなど、世界各国です。

島川:インターン先は信頼関係を持てる企業を厳選しました。例えば今回お願いしているはとバスさんは、1年目は東京の営業所で、次はコールセンターなどのバックオフィスを経験させてもらいます。その後、上手く話せてマイクを持てるような学生が出れば、バスガイドを経験できるかもしれません。そこで互いに納得すれば、そのまま就職もあります。このように密に企業と連携をはかっていきたいと思っています。

徳江:業界全体でいえますが、中学生の年代あたりから、もっと業界の啓発が必要だと思います。「観光は人が喜んでお金を払ってくれる仕事だ」という認識はあまり中高生にはない。世間一般のイメージを超えなければなりません。

島川:学部の開設だけでなく、高校と大学の「高大連携」も強めていきたいと思っています。全国には観光科や、第2外国語を取り入れている高校もあります。高校で旅行業務取扱管理者資格を取っていたら入学させるなど、積極的に働きかけたい。第2外国語で仏、中国語など取得していれば、インターンなどで選択肢が生まれます。
 そのほかホテルを持っている大学と連携をはかります。学生はホテル教育をしながら、実践で学べる。いつになるかわかりませんが東洋大学ホテルを造りたい。この想いはずっとあります。連携によってどのような教育をしているか、ノウハウをしっかりと学びたい。国際観光学部は飛ぶ鳥を落とす勢いでやっていきます。

17年旅行業名簿を発行、全国宿泊施設要覧も(旅行出版社)

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 旅行出版社(大阪府)はこのほど、「2017年旅行業者名簿」(B5判、750ページ)と「全国宿泊施設要覧」(B5判、800ページ)を発行した。

 旅行業者名簿は、66年の歴史を誇る業界唯一の旅行業者名簿で毎年改訂版を発行、観光関連事業者の営業に欠かせない1冊。都道府県の観光担当課への閲覧や、全件ヒアリング精査により、1種・2種・3種・代理業地域限定など全国の旅行業者の本社や支店、営業所まで1万6818件を収録している。本文は都道府県別にそれぞれ50音順に掲載、さらに大手旅行業者に関しては都道府県別での掲載に加え、会社別に掲載するなど見やすく構成している。本体価格は1万4千円(税別、送料別)。

 一方、全国宿泊施設要覧は7年ぶりに発行した。宿泊施設の把握に役立つ1冊。全国のホテルや旅館、民宿、ペンション、さらに宿坊やコテージまで2万8千軒を収録。所在地や客室数、宴会場、料金の目安、Wi―Fi、アクセス、さらにインバウンドの可否まで掲載している。

 問い合わせ=電話:06(6629)3551。

佐世保・小値賀観光圏、DMO候補法人に登録

九十九島の多島海美
九十九島の多島海美

 長崎県北部の観光都市・佐世保と東シナ海に浮かぶ五島列島最北端の島・北松浦郡小値賀町が地域連携する「海風の国 佐世保・小値賀観光圏」が昨年11月2日、国が推進する日本版DMOの候補法人に観光庁が登録した。日本版DMOは観光地域づくりの舵取りを担う法人で、登録が認められれば国も重点的に支援する予定だ。

 観光圏の中核となる佐世保市の人口は25万人。年間観光客は590万人(2015年)で、12年からは県を代表する観光地・長崎市を抜いて観光客数トップとなり、15年の観光消費額は前年比19・6%増の1276億円に達している。外国人宿泊者数も同19・8%増の15万8千人と11年の東日本大震災以降、4年連続の増加。大型クルーズ船寄港は延べ33隻と全国で8番目の寄港数を誇る。

 観光圏は13年4月に国の認定を受け、18年までの5カ年でブランド観光地化の推進事業を展開している。コンセプトは「『海風の国』暮らしを育む海舞台~浦々の四季で迎える西海物語~」。佐世保市の街なかと世界遺産候補になっている黒島天主堂がある黒島、絶景で知られる九十九島、日本遺産に認定の焼き物の里三川内、ハウステンボスなど10地域と、古民家再生などで注目される小値賀町で構成されている。

 事業推進の中心となるのが佐世保観光コンベンション協会(飯田満治理事長)で、事業初年度に戦略策定、推進のための専門部署を設置。人員を大幅に増員して、ワンストップ窓口整備などを行った。また、観光戦略設計を行い、顧客満足度などの市場調査事業、観光マイスターなどの人材育成、各地の受入体制整備のほか、旅行商品も企画・販売している。

 14年度には観光地を周遊する「クルーズバス海風」の運行を開始。15年度に「佐世保軍港クルーズ」も開始した。16年度は、黒島の受入体制整備や「海風旅」のモデルコースを作成。体験プログラムによる外国人旅行客誘致も目指す。飯田理事長は「DMO法人は自立的な財源で、法人自体が自主的な事業ができる経営体でなければいけない」と強調する。

 同協会の事業予算は年間約5億円。3分の2が市の委託、補助事業で、3分の1が自主事業。収益事業は駐車場や不動産事業、チケット販売、旅行事業、土産品開発・販売など幅広い。飯田理事長は「地方は観光で生き残るしかない。その波及効果は他の産業分野を含め地域全体に広がるし、雇用の源泉になる」と話し、観光が果たす地域経済発展の役割を強調する。

沖縄らしさをジャルパックから、地域とともに商品を造成

三線とガイドの歌声で大盛り上がり
三線とガイドの歌声で大盛り上がり
宮原祐氏
宮原祐氏

 ジャルパックは2015年に、沖縄県と北海道に仕入センターを設け、宿泊施設をはじめ地域との信頼関係を一層高めてきた。今回は、沖縄に注目。「こころ彩る沖縄4日間」と「ホテル日航アリビラ」2つの商品を中心に、宮原祐国内企画商品第2事業部沖縄グループ統括マネージャーに話を聞いた。参加者が、安心して楽しめるように地域との意思疎通を重視する同社。造成への真摯な姿勢も知ることができた。レンタカー会社との提携など、好奇心と利便性を兼ね備えた商品とともに紹介する。
【謝 谷楓】

 ――「こころ彩る沖縄4日間」のターゲットは。

 女性のお客様をメインターゲットに据えた体験型の商品となっています。

 無人島でのシュノーケリングや万華鏡づくり体験といった多彩なアクティビティを通じ、沖縄を満喫してほしいと思います。現地でのオプショナルプランも豊富に準備しています。本格的なアロママッサージのほか、ホエールウォッチングやフライボートもお得に楽しむことができます。

シュノーケリングを存分に楽しめる
シュノーケリングを存分に楽しめる

 ――実現には、地域との連携が大切ですが。

 その通りだと考えています。現地に仕入れ拠点を設けたこともその思いの表れです。インバウンドが増加するなか、より安定した商品供給を実現するためにも、宿泊やアクティビティを担う地域の施設各社との協力を大切にしていきたいです。

 商品の完成度は高く、追加料金なしで観光タクシーを利用可能といった、ジャルパックの独自性も発揮できました。一方この商品は、各社を束ねる沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の助成を受けた「招聘事業」からヒントを得て造成したものです。そのため、我われはOCVBを通じ、各社の意向を汲み取ったうえで、商品造成に臨んできました。施設各社とは良好な関係を築けています。

 安全安心な旅を提供するため、プランナーが事前に旅程確認やアクティビティの体験を済ませています。その際にも、各社とのコミュニケーションを重んじています。

 ――仕入センターのメリットについて。

 お客様に対して最新の情報を発信できるようになりました。販売にもつながっています。

 ――協力して事業を展開し、地域に貢献しています。今後の展望は。

 これからも、「招聘事業」をはじめ、OCVBとの連携を深めていきたいと考えています。

 沖縄らしさの発信も続けていきます。現在、オプショナルプラン「JALうたばす」を利用すれば、バスガイドの三線演奏や島唄とともに、古宇利島や首里を巡ることができます。地域に根付く文化の紹介に一役買っているのではないでしょうか。

 豊かな自然にも注目しています。本島北部のやんばる地方が世界自然遺産登録に向け活動をしています。商品造成を通じた貢献をはたしていきたいです。

 ホテル日航アリビラで極上のリゾート体験
ホテル日航アリビラで極上のリゾート体験

 ――2つ目の商品「ホテル日航アリビラ」は。

 ここは読谷村に位置するリゾート施設。ステイ型の商品を提供し、部屋のラインナップが充実しています。沖縄の海を存分に堪能してもらうため、「部屋番号指定プラン」を用意し、眺望への期待を裏切りません。

 ストレスフリーもテーマの1つです。コースによっては、空港から無料で送迎タクシーを利用できます。

 ――地道ですが、着実な事業展開を心がけている印象をうけました。

 お客様の声に基づいた改良を常に心がけています。

 那覇空港では、オリックスレンタカーと提携をしています。待ち時間など、レンタカー手配が困難な状況に対処するためです。その結果、受付から約20分という短時間での配車を実現できました。多くの方に喜ばれています。

 ――ありがとうございました。

スムーズな配車を実現
スムーズな配車を実現

萬国屋 激戦制し優勝、朝ごはんフェスティバル2016(楽天トラベル)

神田川俊郎氏(左)と萬国屋の大滝氏
神田川俊郎氏(左)と萬国屋の大滝氏

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 楽天トラベルは11月30日、「楽天朝ごはんフェスティバル2016」のファイナルステージを開催した。萬国屋(山形県)の「山形牛の旨味がたっぷり染み出た具だくさんの芋煮汁」と「磯の香 吟醸茶漬け~山形の恵みを添えて~」が優勝した。1500ものエントリーから、47施設の朝ごはんが第1ステージに進み、第2ステージを経てファイナルステージに集結したのは、6施設。「これからも、いつも通り頑張るだけ。寒い今だからこそ、温かい芋煮を堪能してほしい」と、激戦を勝ち抜いた萬国屋の大滝幸也シェフは語った。

 準優勝は城山観光ホテル(鹿児島県)の「朝〆たばかり 鮮度抜群の鹿児島県産真鯛潮茶漬」と「ニガウリと豚耳のソテツ味噌炒め」。3位は我無らん(岡山県)の「岡山のブランド牛『千屋牛』の熟成フィレカツサンド」と「湯原温泉名産 青大豆豆乳ポタージュ」となった。

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飯能で北欧ライフ、体験施設「メッツァ」開業

メッツァビレッジ宿泊(イメージ画像)
メッツァビレッジ宿泊(イメージ画像)

 フィンテックグローバル(玉井信光社長)とムーミン物語(ロバート・ハースト社長)はこのほど、埼玉県飯能市の宮沢湖を中心としたエリアに、〝北欧時間が流れる森と湖での体験を通じて、こころの豊かさの本質に気づき、日常生活へと持ち帰れる場所〟を目指した「メッツァ」を開業する。

 同施設は、北欧のライフスタイルを体験できる「メッツァビレッジ」(2018年秋開業予定)と、ムーミンの物語を主題とした「ムーミンバレーパーク」(19年春グランドオープン予定)の2つのゾーンから構成。来場者に(1)挑戦(2)創造(3)共有(4)解放(5)探究(6)想像――の6つの体験価値を提供する。また、同施設の体験は(1)答えは自分で考え、見つけるものという考えの「人それぞれの答えがある」体験(多様性・変化)(2)湖畔で味わう風の心地よさや足の裏で感じる根っこの力強さなど「五感を刺激する」体験(体験・感覚)(3)少しずつ積み重ねて、大きな成果を手に入れる喜びと感動の「積み重ねが意味を持つ」体験(継続性・蓄積)――の3つの指針に基づいて設計されている。

 メッツァビレッジでは、自然豊かな公園機能を維持し、自然を身近に感じられる施設やアクティビティを展開。地元野菜や工芸品などを購入できるマーケットや、サウナが併設された宿泊施設なども計画予定。さらにムーミンバレーパークでは、ムーミンの物語を追体験できる複数のアトラクションや、原作者トーベ・ヤンソンが物語に込めた想いを感じることのできる施設を予定している。

第42回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表

第42回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表
八幡屋、初の総合1位

 旅行新聞新社が主催する第42回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第37回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第26回「プロが選ぶ優良観光バス30選」と選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設が決定した。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、福島県・母畑温泉の八幡屋が初の総合1位に選ばれた。また第37回「プロが選ぶ土産物施設100選」では浅間酒造観光センター(群馬県・長野原)が21年連続で1位に輝いた。各賞入選施設を紙面にて紹介。受賞した各施設への表彰式と祝賀パーティーは、来年1月20日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれる。…

 

※ 詳細は本紙1653号または12月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅館軒数4万661軒、減少に歯止めかからず(16年3月末時点)

 旅館減少に歯止めかからず――。厚生労働省が11月17日に発表した2015年度「衛生行政報告」によると、15年度末現在の旅館営業軒数は前年度比3・0%減の4万661軒と1年間で1238軒減少した。14年度の減少数と比べると、226軒少ないものの、依然として旅館減少の流れに歯止めがかからない状況が続いている。

 一方、ホテル営業軒数は同0・9%増の9967軒となり、88軒増加。10月30日に訪日者数が2千万人を突破し、訪日外国人観光客が急増していることも、ホテル営業軒数が増加した要因の1つと考えられる。宿泊軒数(簡易宿泊施設、下宿含む)は前年度に比べ、379軒減少し7万8519軒だった。

 客室数でみると、旅館は前年度比8363室減の70万1656室となった。ホテルは同1万1744室増の84万6332室と大幅に増加し、ホテルと旅館の客室数の差は14万5千室近くと、依然としてその差は広がり続けている。

 山小屋やユースホステル、カプセルホテルなどの簡易宿所は2万7169軒と前年度の2万6349軒から820軒増加した。下宿は722軒で前年度の771軒から49軒減少した。

 都道府県別にみた旅館軒数は、静岡県が2769軒で最も多く、以下は(2)長野県(2363軒)(3)北海道(2285軒)(4)新潟県(1926軒)(5)三重県(1450軒)(6)福島県(1380軒)(7)栃木県(1295軒)(8)山梨県(1279軒)(9)東京都(1209軒)(10)千葉県(1177軒)。前年8位だった栃木県が、山梨県を抜き7位に浮上。東京都も順位を1つ上げ9位となった。

 一方ホテル軒数の上位は(1)東京都(682軒)(2)北海道(679軒)(3)長野県(520軒)(4)兵庫県(423軒)(5)福岡県(397軒)(6)大阪府(387軒)(7)静岡県(377軒)(8)沖縄県(372軒)(9)埼玉県(364軒)(10)神奈川県(332軒)の順となった。前年1位の北海道と2位の東京都の順位が入れ替わったほか、前年7位の大阪府が静岡県を抜き6位となった。

 政令指定都市の旅館軒数は、大阪市が371軒と昨年1位の京都市を抜き1位。以下は(2)京都市(369軒)(3)名古屋市(245軒)(4)熊本市(184軒)(5)浜松市(170軒)。

 一方ホテル軒数は、(1)大阪市(307軒)(2)札幌市(177軒)(3)福岡市(171軒)(4)京都市(163軒)(5)横浜市(136軒)の順となった。 

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2016年を振り返る ― さまざまな変化、来年大きく動き出す

 2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。今年の一皿は「パクチー料理」。今年の世相を表す漢字は「金」に決まった。楽天市場2016年ヒット商品番付では、東の横綱は「♯インスタ映え消費」、西の横綱は「ハイブリッド○○」となり、年末ムードが一気に押し寄せてきた。

 観光業界は3月26日には、北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業し、明るい話題に包まれたが、4月に発生した熊本地震は、大きな打撃を与えた。8月の台風は北海道や岩手県・岩泉町など多くの地域が被災した。10月には鳥取中部地震も発生した。訪日外国人客は10月に史上初の2千万人を突破し、“爆買い”ブームは沈静化しつつも、「インバウンド」というワードは今年も観光業界の話題の中心にあった。

 そんななか、「違法民泊」の問題が観光業界を超えて大きな議論の的となった。旅行者の宿泊形態も多様化しており、さまざまなメニューをそろえる必要性もある。ただ、家主不在の投機を目的としたものを「民泊」と呼ぶには違和感を覚える。「民泊新法」が来年の通常国会に提出される予定だが、17年は宿泊業界も大きな枠組みの変化を迎えるだろう。

 国際的にも大きく動いた年だった。6月には英国の国民投票でEU離脱を決めた。11月の米国大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が勝利した。韓国では朴槿恵大統領の弾劾訴追案が国会で可決され、職務停止となった。日本の安倍晋三首相は、年末に山口県長門市でロシアのプーチン大統領と会談し、その後米国・オバマ大統領とハワイ・真珠湾を訪問する。5月のオバマ大統領の広島訪問に加え、歴史的な年となる。さまざま変化が世界中、日本国内でも起こったが、本当に大きく動き出すのは17年だ。

 この数年、インバウンドが注目され続けているが、日本人の旅行動向も変化している。JTBの年末年始旅行動向によると、海外旅行が前年同期比3・3%増加する見込みだ。プラス成長は3年ぶりだ。円高傾向と、燃油サーチャージがなくなったことがその主な要因だという。しかし、来年2月には燃油サーチャージが復活する。この勢いがどこまで続くか、不安材料もある。

 長年低迷を続ける海外旅行を盛り上げるには、熟年や高齢者に頼る市場ではなく、やはり若年層への旅行喚起が必要だ。若者が旅行に行きづらい環境にあることが最大の問題ではあるが、旅行会社や旅館・ホテルもこれからの新しい層を取り込む努力をしなければ、業界ごと取り残されてしまうこともある。

 お客を受け入れる側のおもてなしやホスピタリティが取りざたされるが、むしろ最近は客の無作法が目立っている。

 老舗宿などでも「最近はこちらが教わるような、ごもっともな鋭い指摘をされるお客様はほとんどいなくなり、理不尽な言いがかりをつけるお客様が多くなりました」というような話をよく耳にする。

 本来、客と店は対等な関係であるが、今は高級店、大衆店を問わず、「自分は客なのだから」と、どんなわがままを押し通しても許されると勘違いしている客がやたら増えている。日本式の“世界に誇る”おもてなしは、無作法な客を甘えさせている、というのは言い過ぎだろうか。

(編集長・増田 剛)

要件緩和 着地型促進へ、ランドオペに罰則整備進む(新たな旅行業法制検討会WG)

 観光庁は11月25日に東京都内で、第2回「新たな旅行業法制に関する検討会」ワーキンググループを開き、中間とりまとめ(案)を提出した。地域限定旅行業などの登録要件を緩和し、着地型旅行の促進をはかる。ランドオペレーターは新たな区分の登録制を導入し、禁止行為や罰則整備を進める方向性を示した。

 地域限定旅行業と第3種旅行業の1部は業務範囲が限定されている。現行は隣接市町村までだが、旅行業法施行規則で、観光庁長官が定めた区域でも業務は可能。この規定の運用を進め、観光実態に沿った地域設定へと緩和する考え。

 旅行業務取扱管理者は試験と設置義務を見直す。地域限定旅行業者が取り扱う旅行に限った試験を新たに創設する。

 管理者試験は安全に関する知識などのため実施。一方で全国の地理などの出題は、各地域で行う着地型に必要ないと判断した。管理者は営業所に1人以上の設置義務を、一定の条件で複数営業所兼務を認める方針だ。

 旅行業者代理店業の登録要件も改める。ホテル・旅館などが着地型商品の販売拠点になるように、代理店制度を改正。複数社からの商品取扱いを解禁する予定。ただ、旅行者の安全確保なども踏まえ、1社専属制は継続していく。

 ランドオペレーターは新たな規制の枠を設けるため「交通サービスや宿泊サービス、通訳案内士の手配などを業務とする事業者」と定義した。訪日旅行と国内旅行の手配が対象になる見通し。

 消費者に直接関係しないBtoB業務であることを踏まえ、営業保証金は不要となる見込み。旅行業登録も義務ではなく、国や関係機関が旅行業登録を促す、にとどめた。

 登録をしない事業者には新たな区分の登録制度を導入することで、実態把握や指導が行える体制を整える。過度な規制ではなく、必要最低限の規制にしていく構えだ。

 具体的な資格は明示されなかったが、資格者の設置義務を課す。管理者制度をそのまま適用せずに、研修で資格が取得できるなどの方法も示された。

 旅行者の安全を担保するため、旅の手配に禁止行為を設ける。旅行地で法令違反が起こるような手配などで、必要に応じて観光庁などが処分を命じる。

 罰則は違反したランドオペレーターや無登録のランドオペレーターに対して整備する。ただ、無登録のランドオペレーターと取引した旅行業者らにも、それぞれの法律に基づき適切に処分を行う考えだ。

 着地型の措置とランドオペレーターの法案提出は、今年度中の実施が閣議決定済み。

 同庁は中間とりまとめを受け、早急に制度設計に取り込む。

【平綿 裕一】