日本旅館協会、キャンセル料問題を議論 宿と利用客の納得に向けて

2026年3月4日(水)配信

パネルディスカッションのようす

 日本旅館協会(桑野和泉会長)は2月19日(木)、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された第54回国際ホテル・レストラン・ショーで、セミナー「泣き寝入りしない宿経営―キャンセル料から見える未来戦略―」を開いた。宿泊予約のキャンセルに関するトラブルが増加し、宿にとって大きな課題となるなか、キャンセル料に関する法律的な解釈や現行の法的枠組みを解説し、宿泊施設と利用客双方の理解と納得を得るための具体的な対策を提示した。

日本旅館協会の桑野和泉会長

 桑野会長は、宿泊取り消しに伴うキャンセル料の徴収について「適正な対価を受け取り、準備していたスタッフの努力を守る」と強調。「お客様の予約機会を公平に確保することが持続可能な宿経営、そして日本の観光業の未来のため不可欠な規律」と説明した。

 このうえで、「キャンセル料を適切に管理・運用することは、時間の価値を守り、顧客との健全な信頼関係を築くための経営戦略そのもの。今回のセミナーが、宿経営を継続するための一助になれば」と語った。

 はじめに、同協会が昨年11月に実施した「キャンセル料運用状況アンケート調査」の結果を発表。同協会と全国旅館ホテル生活衛生同業組合(全旅連)の会員ら772人が回答した。

 調査結果によると、個人客からキャンセル料を「収受している」が92.6%で、大多数の施設が宿泊取り消しに伴う規定(キャンセルポリシー)を設定。しかし、収受割合でみると「ほぼ取れている」が46.7%と半数を下回り、多くの施設がキャンセル料による回収率の低さや客とのトラブル、事務作業の煩雑さに苦労していると答えた。

 団体客も「すべて収受」が32.4%にとどまり、旅行会社や企業との関係性で契約通りの収受が難しく、大幅な予約変更によるキャンセル対応が最も苦労していると回答。インバウンドに関しては、エージェントがキャンセル料を払わなくても良いと考える場合や、言語・文化の違いでキャンセルポリシーの理解が進みにくい点など、対応への課題が挙がった。

 今回の調査により、個人、団体客ともにキャンセルポリシーを設定しているが、実際には回収しきれていない構造的課題が浮き彫りになった。

請求課題と基礎を整理、Payn矢崎氏が講演

Payn取締役COOの矢崎達則氏

 セミナーでは、「キャンセル料の課題と法的基礎を整理する」と題し、キャンセル料の請求・回収業務を自動化する請求ツールを提供するPayn取締役COOの矢崎達則氏が講演を行った。キャンセル料に関する現状の課題と法的な基本情報を整理し、考え方の土台について解説した。

 矢崎氏は、消費者庁が実施した「キャンセル料に関する消費者の意識調査」の結果を基に、「旅行業界はあらゆる業界の中で、最もキャンセルの影響を受けるビジネス」と分析。とくに「ホテル・旅館などの宿泊」のキャンセル割合が30.6%と最も高く、宿泊事業者は消費者に対して、①適切な説明②妥当な金額③現地決済の回収導線――を提示することが重要との考えを述べた。

 キャンセルポリシーの原理原則として「予約は契約」「キャンセル料請求は債務不履行による損害賠償請求」であり、事業者はキャンセルに生じた損害を請求する正当な法的権利を持っていると解説。「経営者として正しい知識を持ち、無条件な免除や曖昧な対応ではなく正当な請求行為は適正に行い、泣き寝入り一択から脱却する意思を持つことが重要」とした。

現場の実践例を紹介、具体的な対策を議論

全旅連常務理事の山本氏(左)と、全旅連青年部副部長の小林氏

 パネルディスカッションでは、旅館・ホテルの経営者らがキャンセル料に対する取り組みを紹介し、具体的な対策について議論した。矢崎氏に加え、全旅連常務理事の山本剛史氏(喜びの宿高松、群馬県・草津温泉)と全旅連青年部副部長の小林篤史氏(ホテルニューステーション、長野県松本市)、日本旅館協会政策委員の内田宗一郎氏(古屋旅館、静岡県・熱海温泉)が登壇。モデレーターは日本旅館協会政策委員長の西村総一郎氏(西村屋本館、兵庫県・城崎温泉)が務めた。

 山本氏は、全旅連の第4部会である「宿泊料トラブル対策部会」担当として、ノーショー(無断不泊)やカスタマーハラスメント(カスハラ)など、宿泊料を回収できない問題への解決策を協議していると紹介。モデル宿泊約款の改正のほか、予約画面上で重要事項への同意チェックや予約時のクレジットカード認証の導入、カスハラ対策などを協議し、とくにノーショーの回収導線を提供したい考えを強調した。

(左から)日本旅館協会政策委員の内田氏と、政策委員長の西村氏、Payn取締役COOの矢崎氏

 内田氏は、キャンセル料がほぼ徴収できていない状態から、売上減を覚悟しながら全予約を事前カード決済に切り替えたが、ほとんどマイナス効果はなかったと報告した。団体予約も、予約部屋数に応じた階段式キャンセル料でリスクを適正化。事前決済の切り替えによって、「結果的にキャンセル徴収100%を達成した」と述べた。

 続いて、ビジネスホテルを運営する小林氏は、楽天トラベルなどの宿泊予約画面で提示されるキャンセル保険の仕組みを宿泊業界に取り入れることを提案。「抑止力になる保険というサービスを業界としても考えていただきたい」と語った。

 最後に、各登壇者から今後のキャンセル料問題に対する取り組みを宣言して会を締め括った。

ビジネスホテル運営「掛川観光開発」 破産手続き開始決定受ける(帝国データバンク調べ)

2026年3月4日(水) 配信

 掛川観光開発(落合朝子代表、静岡県掛川市)は2月5日(木)、静岡地裁掛川支部から破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると、「負債は調査中」としている。

 同社は1994(平成6)年11月に設立されたビジネスホテルの運営業者。JR掛川駅南口近くの本店所在地に「掛川ビジネスホテル駅南」を構えるほか、東名高速道路の掛川IC付近で「掛川ビジネスホテル駅南イン」を運営していた。両ホテルとも好立地を生かして、ビジネスや観光の拠点として一定の宿泊客を確保していた。

 しかし、新型コロナの影響により、利用客が大きく減少したことで、2020年4月から長期休業を強いられていた。その後も、「営業再開の目途が立たず、過去からの債務もあったことで事業の継続を断念した」(帝国データバンク)という。

 なお、掛川ビジネスホテル駅南インについては、現在他社が別の名称で運営している。

観光庁、「能登半島地震復興へ観光再生支援事業」 3月16日(月)まで公募

2026年3月4日(水) 配信

観光庁

 観光庁は3月16日(月)まで、「2026年度能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」について公募している。

 2024年1月の能登半島地震に加え、同年9月の豪雨などで被害を受けた観光地全体の復興へ、自治体や関係団体、個別事業者が一体となった取り組みに、専門家の派遣などによる支援を実施する。

 具体的には①観光地・観光事業者などの経営高度化支援②営業再開に向けた人材確保などに係る支援③誘客コンテンツの造成④情報発信・プロモーション⑤宿泊施設の収益力向上支援――など。

 問い合わせ=観光庁観光産業課 ☎03(5253)8330。

新社長に日本航空の大村剛也氏 ジャルパック

2026年3月4日(水) 配信

大村剛也新社長

 ジャルパック(平井登社長、東京都品川区)は2月27日に開いた取締役会で4月1日からの役員体制を決定した。新社長に日本航空(JAL)グローバル販売部部長の大村剛也氏が就任する。平井登社長は退任する。

                ◇

 大村 剛也(おおむら・よしや)氏 1997年4月日本航空入社。2016年4月事業創造戦略部シリコンバレー駐在所所長、18年10月国際提携部共同事業・アライアンスグループグループ長、22年3月グローバル販売部米州販売推進室室長、24年4月グルーバル販売部部長などを歴任。

リョケン、 3月19日(木)にオンライン講座を開催 「人材育成講座~育成/定着の仕組み編」

2026年3月4日(水) 配信

 リョケン(佐野洋一社長、静岡県熱海市)は、4月の新入社員受け入れ準備直前として3月19日(木)に、「人材育成講座~育成/定着の仕組み編」をオンラインで開催する。時間は午前10時30分~午後3時30分(※途中1時間の昼休憩あり)。

 3人の専門家講師により、人材開発の戦略的な取り組み手法を学ぶもので、本講座は「Zoom」を使用したオンライン開催(LIVE配信)で、一部双方向となる。募集定員は15社。

 講座内容は①人材力を最大化する組織の取組み②新入社員への指導とフォローアップ③中核人材の獲得と育成④成長サポートのスキル――を予定。

 受講料は1社につき2万7500円(※1社で3人まで参加可能)。申込締切は3月12日。定員(15社)となり次第、期日前に締切する場合あり。受講対象者は経営者・幹部、総務・人事担当者、現場リーダー、リーダー候補、後輩・部下の指導にあたる人。

 受講申し込みは、リョケンの公式ホームページから申し込みできる。講座前日までにメールにて受講用URLを案内する。講座当日は30分前から受付を開始。研修終了後に案内する入力フォームから受講レポートを入力する。講座7~10日後に受講修了証・受講レポートを申込担当者宛に郵送される。

 問い合わせ=☎0557(83)2120(※電話受付は平日午前9時~午後6時)。

長野・山ノ内まちづくり観光局の事務局長を再募集 応募は3月16日(月)午後5時まで

2026年3月4日(水) 配信

 長野県・山ノ内町の「一般財団法人山ノ内まちづくり観光局」(平澤岳理事長)では、山ノ内町の観光振興や地域活性化を目的として、観光客誘致や魅力発信、まちづくり全般に係る企画・立案など同観光局事業全般に従事する事務局長を募集開始した。昨年度も同様の募集を行ったが、改めて募集を行うこととなった。募集締切は2026年3月16日(月)午後5時まで(必着)。

 任期は26年5月1日~29年3月31日までの3年間(採用から6カ月間は試用期間)。業績評価等により最長3期まで延長可能。給与は年収600万~750万円程度(前歴、資格及び実績等を勘案し、住居、通勤、資格などの手当や賞与を含む)。

 提出書類は①履歴書(直近3カ月以内の顔写真貼付)②職務経歴書(現在までの職歴や主な業務を記載。書式は自由)③自己PRレポート(800~1000字以内、書式は自由)――。

 選考スケジュールは、第1次選考(書類選考)3月下旬に結果通知。第2次選考(面接選考)4月上旬に実施、同4月中旬に結果通知。5月1日採用を予定。

 問い合わせ=山ノ内まちづくり観光局(担当=酒井) ☎0269(33)4556。

南房総・館山市で春を体感 季節の収穫体験、炙り海鮮丼など

2026年3月4日(水)配信

人気スポット「城山公園の桜」

 千葉県房総半島の南部に位置する館山市は、温暖な気候に恵まれ、早春からポピーや菜の花が咲き、一足早く春の訪れを感じることができる南の地。花だけでなく、イチゴ狩りや、レタスの収穫体験も人気を集めている。また、戦国大名の里見氏にちなみ、「里見の日」に制定された3月13日からは、桜の名所として名高い館山城のライトアップがスタートする。たてやま温泉郷でゆったりと宿泊して、館山炙り海鮮丼やサイクリング、自然や歴史に触れるさまざまな体験メニューを楽しみたい。

 海と花のまち、館山市は冬でも温暖で12月ごろからポピーや菜の花が咲き誇り、花摘みも楽しめる。

 南房総の海岸線沿いに全長46㌔にわたる「房総フラワーライン」はとくに有名。館山市の伊戸―相浜間6・6㌔の区間は「日本の道100選」にも選定され、ドライブやサイクリングで人気の道路だ。

 房総の戦国大名・里見氏の居城跡を整備した館山城・城山公園は、早春から椿や梅、水仙などが順にまちを彩り、いち早く春の訪れを知らせる。3月にはまちは桜色に染まる。

 イチゴ狩りや、館山の神戸地区で作られるかんべレタスの収穫体験も近年人気を集めている。

イチゴ狩りも大人気

 冬の天候が良好な館山は、日照時間が長いため、イチゴの栽培に適している。「紅ほっぺ」「やよいひめ」「かおりの」「章姫」など種類も豊富。甘くて大粒なイチゴ狩りが5月のゴールデンウイークごろまで楽しめる。

 かんべレタスは、ミネラル分を乗せた海風と、排水性の高い砂地の田畑で育つため、ふんわりとした軽やかな葉の重なりと、甘くてシャキシャキとした食感が特徴。安西農園では、3月末まで収穫体験を実施している。

レタス収穫体験のようす(安西農園)

 3月13日は「里見の日」 多彩なイベントも

 かつて館山市に居城を構えた戦国大名の里見氏を広く知ってもらい、館山市を盛り上げることを目的に、3月13日が「里見の日」に制定された(2024年9月)。

 これを記念してさまざまなイベントが開催される。13―31日まで、館山城は八犬伝をイメージした八色のグラデーションにライトアップされる。

 3月14日(土)には館山城前広場で、館山里見八犬士キャラクター発表式典や、「里見氏&八犬伝を知ろう!」ガイドツアーも実施される。

 名物「炙り海鮮丼」

炙り海鮮丼(たてやま旬鮨 海の花)

 1年を通して豊富な魚介類が水揚げされる「水産のまち」の館山で「館山炙り海鮮丼」が開発された。今では炙り海鮮丼を目当てに多くの観光客が訪れる。「旬×炙り」をコンセプトに、特製の三段どんぶり重を使用。自分の好みの加減で刺身を炙ることができるのも魅力の一つ。

 上から順に刺身と炙った刺身が楽しめる「海鮮」(一の重)、季節の野菜5種を使い、健康効果にこだわった「野菜」(二の重)、地魚を活かした「寿司」(三の重)が盛り付けされる。このほかに、汁物と食後のデザートも付く。館山市内の4店舗で味わうことができる(要予約)。

 館山市の観光名所を効率よく巡るには、レンタサイクルがおすすめだ。JR館山駅西口1階の館山市観光協会には、本格的なロードバイクや、電動アシスト付き自転車、クロスバイク、子供用自転車など多彩な自転車をそろえている。市内の観光マップや宿泊施設の案内なども行っている。

レンタサイクルで観光名所を巡る

 「沖ノ島」や「城山公園」「館山夕日桟橋・“渚の駅”たてやま」などの観光スポット巡りも人気で、「時間や体力に合ったコースもご案内しますので、ぜひご相談ください」(館山市観光協会)としている。

 館山市へのアクセスは、道路や鉄道に加え、高速ジェット船もあるのがうれしい。東海汽船の高速ジェット船を利用すれば、東京・竹芝桟橋―館山は75分、伊豆大島からは55分。

 伊豆大島は3月22日まで「第71回伊豆大島椿まつり」を開催しており、ジェット船で館山や伊豆大島を巡る船旅も高い人気を誇る。

 館山市観光協会は「これからの季節は桜も見ごろになります。くだもの狩りやサイクリングにも最適な季節。たてやま温泉郷に滞在して、館山の魅力を満喫してほしい」と呼び掛けている。

お問い合わせ          
館山市観光協会
☎0470(22)2000

航空科学博物館でチームラボの作品展示 立体で出現する絵をスマホで操縦(NAA)

2026年3月3日(火) 配信

作品のイメージ

 成田国際空港(NAA、藤井直樹社長)は3月20日(金)~4月19日(日)、空港周辺地域と航空業界への関心を高めてもらうため、航空科学博物館(千葉県・芝山町)で最先端のデジタルテクノロジーによるアート集団「チームラボ」の作品を体験できる展示を行う。

 今回展示する作品名は「スケッチ環世界」。利用者によって描かれた飛行機やイルカなどの絵を立体で出現する。参加者は現れた絵をスマートフォンで自在に操縦できる。

 開催時間は午前10時~午後4時。体験料は無料で別途、航空科学博物館への入館料が必要となっている。

「強羅花扇 円かの杜」 松坂美智子女将インタビュー 「和の心が紡ぐ、幸せが巡る場所」へ

2026年3月3日(火)配信

松坂美智子女将

 「強羅花扇 円かの杜」(神奈川県・箱根町)は昨年、全従業員で作った企業理念に沿って次の成長ステージへ前進を続けている。また、脱炭素化に向けては「水素調理器」を先駆けて導入するなど、高い環境意識に共感する旅行者が世界中から訪れる。こだわりの食材を全国から独自のルートで仕入れ、立場割烹で提供される「水円コース」は、円かの杜の看板プランとして人気だ。洗濯の内製化など、さまざまな先進的な取り組みについて、松坂美智子女将に聞いた。

【本紙編集長 増田 剛】

社員の成長や満足度高める

 ――水素調理器を2023年6月に導入され、立場割烹での「水円コース」が人気を集めています。

 水素調理への挑戦から約2年半になりますが、この間、メイン厨房にも水素調理を導入し、脱炭素化へ環境に配慮した取り組みを進めています。

 燃焼温度が2500度と、一般的なプロパンガスと比べ600―800度も高いのが特徴で、食材へ火の入りも早い。水素調理の利点をより生かせる食材選びなど、厨房スタッフは試行錯誤しながら感覚が慣れるまでが大変だったと思います。

 柴尾良太総料理長には食材ごとの細かな火入れ時間などのマニュアル化にも取り組んでいただきました。コスト的に少し割高感がありますが、可能な限り水素調理でお客様にはお届けしていきたいと考えています。

水素で調理する柴尾良太総料理長

 「立場割烹 むげん」で提供する特別プラン「水円コース」は厳選した食材を柴尾総料理長が目の前で調理し、一品ずつお出しします。

 一番の醍醐味は対面するお客様との会話を楽しみながらのひとときで、外国からのお客様には通訳しながら、生産者さんの想いなどを説明しています。「水円コース」はリピーターのお客様が多くいらっしゃるのが特徴です。

 ――円かの杜は、こだわりの食材を日本全国から仕入れています。

 メインのお肉は、日本を代表する滋賀県の老舗精肉店から近江牛を塊で仕入れています。

 肉は切った瞬間から鮮度が落ちていくため、お客様に安心・安全、そして「美味しい」と喜んでいただけるようにブッチャー室を設置し、お出しする肉をその日に切っています。色々な部位がありますので「どのようにお出しするとお客様に喜ばれるか」と、日々考えています。

 これらの取り組みによって、若い厨房スタッフたちも食材への関心が高くなっていることを感じます。

 野菜や魚介類も全国から旬の食材を独自のルートで仕入れています。こだわり抜いた食材も、円かの杜の大きな魅力の一つとなっています。

 ――手作りのプリンやお菓子にも力を入れていますね。

 若い厨房スタッフが焼き菓子を作っています。昼に盛り付けをして、チェックインにあわせて客室にセットしています。自館でお菓子を作ることによって、「より心のこもったおもてなしにつながる」との想いから始めました。

 円かの杜では、お客様が到着されたときにラウンジで手作りのプリンをお出ししていますが、チェックアウト時に「とても美味しかったので買って帰りたい」といった嬉しいお声も多くいただいており、販売ができるように器や包材などの検討を始めています。

 バースデーケーキも自分たちで作り、いずれは近隣の宿泊施設や住民の方々にもサービスできるように、大きな夢を実現していきたいと思っています。

 ――館内のアメニティや備品も、環境意識を強く感じます。

 2年前から意識的にプラスチック製を使わず、環境負荷の少ない竹製の歯ブラシの採用や、客室内に備えるペットボトルをリターナル瓶に切り替えています。

 箱根町の助成金を活用して、厨房から出る食材の残滓を減らすために、バイオテクノロジーで分解するゴミ処理機を導入しました。また、野菜や魚介の端材も、お出汁に利用するといった工夫をしています。

 ――洗濯の内製化への取り組みについて。

 働き方改革などの流れから、社員寮を1棟拡充しました。館内の1階に業務用の洗濯機2台と乾燥機2台を導入し、数人のスタッフがローテーションで洗濯の内製化に取り組んでいます。

 お客様の肌に直接触れるタオル類や作務衣の素材は、柔らかい綿100%をそろえているため、自分たちで洗濯できるランドリーが欲しいと思っていました。内製化により、きめ細かなメンテナンスも可能となり、コスト負担も従来よりも軽くなっています。

 ――企業理念については。

 円かの杜は10周年の大きな節目を迎え、次の成長期へ、全員が同じ方向へ前進できるように、昨年3月に企業理念を作りました。理念に入れる言葉はグループワークをしながら、全従業員にアイデアを出してもらいました。

 併せて接客についても、自らがトレーニングできるように、お手本となる基本マニュアルも作りました。

 私たちが共有する理念は、「和の心が紡ぐ、幸せが巡る場所」です。

 日本らしさである和(円=縁)の心を大切にし、その精神そのものや、旅館だからこそ提供できる価値を世界に発信することで「確かな日本文化を未来へ継承していく想い」が込められています。

 また社員幸福度ナンバーワンの会社でありたいとの考えから、社員の成長や満足度がさらに高まり、理想的な循環が生まれる、「幸せが巡る場所」を目指しています。

 ――ありがとうございました。

【サービス連合・櫻田会長に聞く】 6%の賃金改善を要求 「基幹産業へ発展目指す」

2026年3月3日(火) 配信

櫻田あすか会長

 人手不足を背景に、サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合、櫻田あすか会長)は2024年と25年の春闘で最高の賃金改善を実現した。櫻田会長は2026春闘に向けて「21世紀の基幹産業となるため、社会的な賃上げの風潮に依存せず、誰もが働きたい、働き続けたい産業へ発展する必要がある」と強調し、6%の賃金改善に加え、労働時間の短縮を含む総合的な労働条件の改善を目標に掲げる。今年の春闘の方針について櫻田会長に聞いた。

【木下 裕斗】

 ――観光業界の現状をどのように捉えていますか。

 サービス連合では、24年と25年の春闘で5%を超える賃上げを実現し、大きな成果を得ました。これは人手不足を背景として、人への投資の必要性を労使で共有できた結果です。

 ――誰もが働きたい、働き続けたいと思える産業を実現するため、経営側と、どのような交渉を進めていきますか。

 観光業は今後、基幹産業として成長していくなかで、現行の労働条件を改善していく必要があります。観光業は、機械や設備よりも人間の労働力に依存する割合が高い産業で、多くの価値を生み出すのは働く人です。労働者に投資することが商品やサービスの質を高め、産業の発展につながります。

 このため、経営側には人手不足の解消に向けた人材への投資だけではなく、産業の発展に向けて前衛的に賃上げを行っていくことの重要性を説明していきます。

 ――中間層への賃上げも課題となっています。

 採用強化のために、多くの企業が昨年、新卒者の賃金を引き上げました。一方、中間層の給与は新卒ほど顕著に増加していません。

 長期的に働くことを見据えたとき、将来の生活設計が見通せない状況は、労働者にとって大きな不安要因となります。さらに、責任だけが重くなり、生活の質が向上しない状況では、働く意欲の維持は困難です。とくに若い世代が将来に希望を持てなければ、短期間で離職してしまう可能性も高まります。

 このため、誠実に働き続ければ着実に賃金が上昇する実感を持てる仕組みを整えることが不可欠です。

 ――賃上げが難しい中小企業への交渉をどのように行いますか。

 中小企業では売上に占める人件費の割合が大きく、賃上げは簡単ではありませんが、離職防止とともに現場スタッフを大切にしているメッセージとしても、賃上げは有効な手段となります。サービス連合では、加盟組合に対して要求内容のまとめ方や、要望を切り出す方法、交渉時期など具体的な進行を支援していきます。 

 ――離職が経営に与える影響は。

 育てた人材が他の産業に転職するのは、業界にとって大きな損失です。人材育成には多くの時間と費用が掛かっています。さらに、退職によって人員不足となるなかで指導したスタッフも疲弊し、離職することもあります。このため、離職を防ぐためにも働き続けたいと思える環境が欠かせません。

 ――勤務時間の短縮など労働条件の改善に向けた交渉の方針を教えてください。

 総実労働時間は短縮傾向にあります。観光産業は休日数が少ないなか、他産業との人材獲得競争に勝つために、経営側は休暇を増やしました。

 一方で観光業は21世紀の基幹産業といわれるなか、週休2日に満たない職場も多くあります。

 サービス連合では、春闘で段階的な労働時間の短縮を進めるための取り組み方針として時短アクションプランを策定し、加盟組合の交渉を支援していきます。

 具体的に、まずは完全週休2日制を整備し、次いで祝日を含めた年間124日の休暇確保、さらに年次有給休暇の取得による休日数の増加を目指します。そのうえで、子供の看護や親の介護などを理由として休む場合も、給料が支払われる制度の整備を理想としています。

 ――年次有給休暇の取得数増加に向けた取り組みは。

 まず十分な人員確保が不可欠となります。このためには、他産業と比較して、魅力的な労働条件が必要になります。

 また、職場で休暇は互いに取得するものだという意識を共有することや、繁忙期にも取得できる雰囲気づくりも欠かせません。

 さらに、子供が体調を崩したときのために休暇を温存するスタッフが多くいます。与えられた年次有給休暇を休養を取るために使うのではなく、結果として子供の看護のために活用するケースも見られます。

 こうした状況を改め、誰もが当たり前に、労働基準法で定められたリフレッシュを目的とした年次有給休暇を取得できる環境へと一段引き上げていく必要があります。

 ――加盟組合の組合員を対象に、過去最大となる約2千人へアンケートを実施し、労働環境の改善に向けた意見を集めました。

 これまで総実労働時間の実態把握を行い、産業全体として、労働時間が長い傾向にあることがわかっていました。

 今回のアンケート結果では、長時間労働が働く人のモチベーションに与える影響を数字で表し、現在の労働条件に満足していない組合員の状況を把握できました。この点は、経営者への配慮などから労働者が経営者に対して直接伝えることは難しいと考えています。春闘では職場に対する想いを伝え、経営側に改善を求めていきます。

 賃金と労働条件が生産性に影響を与えるデータも収集できたため、2026春闘では、賃金改善だけでなく、勤務時間などの労働条件の改善についても、賃金改善と両輪で進めていきます。

 ――ジェンダー平等への方針を教えてください。

 サービス連合では、運動方針を決定する定期大会などの決議機関に参画する女性が増えています。さらに、加盟組合の女性役員比率も上昇しました。これにより、企業との交渉の場に女性が当事者として、より多様な声を的確に反映させながら、働きやすい環境を求めることができるようになりました。  

 観光業は女性が多い産業であるため、労働組合の役員として組織運営に参画する女性を増やす必要があります。サービス連合や加盟組合の三役への就任も進めていきたいと考えています。

 ――サービス連合では、組織拡大にも取り組んでいます。

 労働組合のない未組織企業への取り組みに最も力を注いでいます。ゼロから組織化を進める企業には、定期的に訪問し、使用者側の理解を得るための取り組みを粘り強く続けています。

 労働組合は、労働条件のチェック機能や組合員の声をもとに、経営側と課題を早期に共有し、解決に向けた協議を重ねることで、労働問題が労使紛争などへと発展してしまう可能性を抑えることができます。

さらに、健全な労使関係は、労使の相互理解を深め、安定した経営と安心して働ける職場環境を支えることが可能です。

 ――春闘への意気込みを語ってください。

 この2年間は正念場として取り組み、賃上げなどの成果を得ることができました。21世紀の基幹産業となるためのサービスや商品の質の向上には、生活の質の向上を実感できる賃上げが欠かせません。労働条件の改善にも力を入れ、賃上げとの両輪で春闘を進めていきます。働く魅力が向上すれば、さらに多くの優秀な人材から働く場所として選んでもらうことができます。

 この産業をより良く発展させたいという思いは経営者の皆さんと同じ思いです。いまこそ将来を見据え、何が必要とされているかを共に考え、より良い成果を得るため、真摯に協議を続けていきます。