“サステナビリティ”、観光の恩恵を皆で共有

(左から)リファイ氏、マンティ氏、スコースィル氏、 プーヌーサミー氏、田川氏、本保氏
(左から)リファイ氏、マンティ氏、スコースィル氏、
プーヌーサミー氏、田川氏、本保氏

 9月22日、東京・日本橋行われたツーリズムEXPOジャパン2016グローバル観光フォーラムで、国連世界観光機関(UNWTO)のタレブ・リファイ事務局長をはじめ各リーダーらは、“サステナビリティ”すなわち、持続可能なツーリズムを全事業者が一丸となって推進する必要があるとの見解を示した。日本は今後、旅を安全安心なものとしつつ、観光がもたらす恩恵を、全事業者間で共有していくことが求められそうだ。

 リファイ事務局長は、“サステナビリティ”を実現するためには、旅行者のあらゆる需要に応えなくてはならないとしてうえで、(1)誰もが観光にアクセスできる環境づくり(2)すべての障がいに対する理解(3)最新技術の活用(4)全行程にアクセシビリティを導入すること――の4つのテーマを掲げた。

 同フォーラムでモデレーターを務めた本保芳明東京工業大学特任教授は、「双方向での交流と、世界に対して必要な貢献をして初めて観光大国の地位に立つことができる。世界の観光の現実を知って、その潮流に乗る必要がある。現在の潮流は間違いなく“持続可能性”であり、デスティネーションが果たす役割は大きい」と述べ、“サステナビリティ”が、目指す観光大国に至る標語だと強調した。

 旅行会社からデスティネーションまで、旅行者にサービスを提供する、観光事業者は多岐にわたる。余暇の充実だけでなく、安全面への配慮も担うため、各事業者は飽くなき努力を続けなくてはならない。そのためには、各事業者の利益を確保できる体制づくりが求められる。継続的な発展を目指す標語、“サステナビリティ”は、旅行者に安心と安全を提供するとともに、旅行業界に携わる全事業者の繁栄を目指すために実現しなくてはならない。

 田川博己日本旅行業協会(JATA)会長は、「観光が国家戦略になったことは喜ばしい。一方、民間が活力をもって政府の掲げた目標をサポートしていかなくてはならない」とし、「今後は、地域の人々をどのようにして巻き込んでいけるのか。地域と国が同じレベルで話ができるようにすることで、今ある問題も解決できるはずだ」と語り、DMOの可能性をはじめとしたデスティネーションの力に、期待を寄せた。

 なお、同フォーラム参加者はリファイ事務局長と本保教授、田川会長のほか、ディビッド・スコースィル世界ツーリズム協議会(WTTC)理事長、ヴィジャイ・プーヌーサミーエティハド航空副社長、クリスティアン・マンティフランス観光開発機構ジェネラル・マネージャーの6人が参加した。うち、リファイ事務局長とスコースィル理事長は、基調講演でも登壇した。

【謝 谷楓】

「100選」の中間集計 2回目

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」。42回目の投票が今年も10月1日から始まった。締め切りは10月末日。全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出する。「ホテル・旅館100選」の中間集計の2回目を紹介する。

(順不同)

 【北海道】
 あかん遊久の里鶴雅・あかん湖鶴雅ウイングス▽登別石水亭▽知床第一ホテル▽知床グランドホテル北こぶし▽十勝川温泉第一ホテル▽第一滝本館▽観月苑▽ニュー阿寒ホテル▽知床プリンスホテル風なみ季▽ホテル鹿の湯花もみじ▽ザレイクビュー TOYA 乃の風リゾート▽洞爺サンパレスリゾート&スパ▽HAKODATE海峡の風▽しこつ湖鶴雅リゾートスパ水の謌▽定山渓鶴雅リゾートスパ森の謌▽望楼NOGUCHI登別▽海の別邸ふる川▽定山渓ビューホテル▽旅亭花ゆら▽緑の風リゾートきたゆざわ

 【青森県】
 ホテルグランメール山海荘▽星野リゾート青森屋▽南部屋・海扇閣▽南田温泉ホテルアップルランド▽浅虫さくら観光ホテル▽稲垣温泉ホテル花月亭▽花禅の庄▽酸ヶ湯温泉旅館▽下風呂観光ホテル三浦屋▽ホテル十和田荘▽八甲田ホテル▽不老ふ死温泉▽星野リゾート奥入瀬渓流ホテル▽蔦温泉旅館

 【岩手県】
 結びの宿愛隣館▽ホテル森の風鶯宿▽ホテル紫苑▽浄土ヶ浜パークホテル▽ホテル志戸平▽瀬美温泉▽悠の湯風の季▽グリーンピア三陸みやこ▽ホテル対滝閣▽愛真館▽南部湯守の宿大観▽長栄館▽滝の湯いつくし園▽大沢温泉山水閣▽佳松園▽ホテル千秋閣▽矢びつ温泉瑞泉閣▽八幡平リゾートホテル▽四季亭▽ホテル羅賀荘▽ホテル龍泉洞愛山▽松川荘▽八幡平ロイヤルホテル▽優香苑

 【宮城県】
 ホテル松島大観荘▽伝承千年の宿佐勘▽鷹泉閣岩松旅館▽松島一の坊▽篝火の宿緑水亭▽鳴子観光ホテル▽ホテルニュー水戸屋▽ホテルきよ水▽名湯の宿鳴子ホテル▽岩沼屋▽南三陸ホテル観洋▽ゆづくしsalon一の坊▽遠刈田ホテルさんさ亭▽小松館好風亭▽ホテル華乃湯

 【秋田県】
 結いの宿別邸つばき▽ホテル鹿角▽秋田温泉さとみ▽妙乃湯▽鶴の湯▽駒ヶ岳グランドホテル▽男鹿観光ホテル▽湯瀬ホテル▽栗駒山荘▽プラザホテル山麓荘▽花心亭しらはま▽都わすれ▽男鹿桜島リゾートHOTELきららか

 【山形県】
 日本の宿古窯▽萬国屋▽蔵王国際ホテル▽天神の御湯あづま屋▽たちばなや▽八乙女▽月岡ホテル▽ほほえみの宿滝の湯▽河鹿荘▽仙峡の宿銀山荘▽游水亭いさごや▽蔵王四季のホテル▽深山荘高見屋▽おおみや旅館▽亀や▽高見屋別邸久遠▽展望露天の湯有馬館▽葉山館▽いきかえりの宿瀧波▽ホテル王将▽海辺のお宿一久▽桜桃の花湯坊いちらく▽愉海亭みやじま▽上杉の御湯御殿守

 【福島県】
 ホテル華の湯▽匠のこころ吉川屋▽八幡屋▽丸峰観光ホテル▽大川荘▽庄助の宿瀧の湯▽風望天流太子の湯山水荘▽スパリゾートハワイアンズ▽四季彩一力▽旅館玉子湯▽陽日の郷あづま館▽櫟平ホテル▽星野リゾート裏磐梯温泉ホテル▽五峰荘▽原瀧今昔亭▽くつろぎ宿新滝・千代滝▽藤龍館▽こぼうしの湯洗心亭▽旅館こいと

 【茨城県】
 五浦観光ホテル別館大観荘▽袋田温泉思い出浪漫館▽筑波山江戸屋▽大洗ホテル▽里海邸 金波楼本邸▽ホテル山水

 【栃木県】
 あさや▽花の宿松や▽鬼怒川グランドホテル夢の季▽鬼怒川温泉ホテル▽日光千姫物語▽ホテルエピナール那須▽ホテルサンバレー那須▽ホテルニュー塩原▽湯けむりの里柏屋▽小槌の宿鶴亀大吉▽湯ったりの宿松楓楼松屋▽彩り湯かしき花と華▽鬼怒川温泉山楽▽若竹の庄▽鬼怒川金谷ホテル▽ONSEN RYOKAN 山喜

 【群馬県】
 草津白根観光ホテル櫻井▽四万やまぐち館▽源泉湯の宿松乃井▽舌切雀のお宿磯部ガーデン▽福一▽ホテル木暮▽旅館たにがわ▽万座温泉日進舘▽猿ヶ京ホテル▽別邸仙寿庵▽望雲▽草津ナウリゾートホテル▽奈良屋▽香雲館▽ホテル一井▽喜びの宿高松▽法師温泉長寿館▽温泉三昧の宿四万たむら▽ホテル天坊▽辰巳館▽草津ホテル▽柏屋旅館▽古久家▽かやぶきの郷薬師温泉旅籠▽かやぶきの源泉湯宿悠湯里庵▽湯宿季の庭▽岸権旅館▽宝川温泉汪泉閣▽梨木館はせを亭▽山屋蒼月

 【千葉県】
 満ちてくる心の宿吉夢▽鴨川館▽鴨川ホテル三日月▽勝浦ホテル三日月▽鴨川グランドホテル▽鴨川ヒルズリゾートホテル▽蓬莱屋▽ANAクラウンプラザホテル成田▽海の湯宿花しぶき

 【東京都】
 水月ホテル鴎外荘

 【神奈川県】
 海石榴▽箱根吟遊▽強羅花壇▽ホテル河鹿荘▽強羅花扇▽箱根高原ホテル▽箱根ホテル小涌園▽鶴井の宿紫雲荘▽箱根水明荘▽富士屋ホテル▽天成園▽円かの杜

 【山梨県】
 銘石の宿かげつ▽ホテル鐘山苑▽ホテルふじ▽若草の宿丸栄▽全館源泉かけ流しの宿慶雲館▽湖山亭うぶや▽秀峰閣湖月▽下部ホテル▽華やぎの章慶山▽富士野屋夕亭▽石和名湯館糸柳▽風のテラスKUKUNA▽富士レークホテル▽坐忘庵

 【長野県】
 ホテル翔峰▽明神館▽旅館花屋▽上林ホテル仙壽閣▽藤井荘▽あぶらや燈千▽ホテル白樺荘▽立山プリンスホテル▽緑翠亭景水▽ホテルやまぶき▽ぬのはん▽白樺リゾート池の平ホテル▽RAKO華乃井ホテル▽白船グランドホテル▽昼神グランドホテル天心▽ユルイの宿恵山▽昼神の棲玄竹▽かしわや本店▽七草の湯▽上高地ルミエスタホテル▽山野草の宿二人静▽野沢グランドホテル▽ホテル阿智川▽石苔亭いしだ▽たてしな藍▽ホテル椿野▽ホテル紅や▽ホテル木曽路▽鷺の湯▽菊之湯▽歴史の宿金具屋▽一茶のこみち美湯の宿▽浪漫の館月下美人▽湯元上山田ホテル▽旅の宿滝の湯▽ホテル清風園▽スカイランドきよみず

 【新潟県】
 白玉の湯泉慶・華鳳▽ホテル清風苑▽水が織りなす越後の宿双葉▽夕映えの宿汐美荘▽風雅の宿長生館▽四季を彩る湯沢グランドホテル▽ゆもとや▽四季の宿みのや▽ホテル小柳▽ホテル摩周▽赤倉ホテル▽岬ひとひら▽大観荘せなみの湯▽ホテル國富アネックス▽よもぎひら温泉和泉屋▽国際佐渡観光ホテル八幡館▽ロイヤルホテル小林▽汐彩の湯みかく▽ひなの宿ちとせ▽湯沢ニューオータニ▽越路荘▽寺泊岬温泉ホテル飛鳥▽越後のお宿わか竹▽高志の宿高島屋▽鷹の巣館▽ホテル大佐渡▽ほてる大橋館の湯▽ホテルみかわ▽嵐渓荘▽ホテル瀬波観光▽湖畔の宿吉田屋▽伝統と風格の宿ホテル万長▽龍言▽著莪の里ゆめや▽赤倉観光ホテル

 【静岡県】
 稲取銀水荘▽堂ヶ島ニュー銀水▽いなとり荘▽季一遊▽ホテル九重▽ABBA RESORTS坐漁荘▽ホテルカターラRESORT&SPA▽柳生の庄▽観音温泉▽稲取東海ホテル湯苑▽桂川▽ホテル伊豆急▽ホテルサンハトヤ▽堂ヶ島温泉ホテル▽ホテルアンビア松風閣▽ホテルウェルシーズン浜名湖▽里山の別邸下田セントラルホテル▽ラビスタ伊豆山▽嵯峨沢館▽西伊豆クリスタルビューホテル▽熱川プリンスホテル▽瑞の里○久旅館▽星野リゾート 界  遠州▽赤沢温泉ホテル▽楽山やすだ▽舘山寺サゴーロイヤルホテル▽焼津グランドホテル▽杜の湯きらの里▽ホテルミクラス▽海辺のかくれ湯清流▽花のおもてなし南楽▽熱海後楽園ホテル▽山水館欣龍▽あさば▽ホテル暖香園▽古屋旅館▽熱海大観荘▽新かどや▽三養荘▽川奈ホテル▽食べるお宿浜の湯▽やまだ荘▽ホテルニューさがみや

 【愛知県】
 旬景浪漫銀波荘▽ホテル東海園▽ホテル竹島▽源氏香▽伊良湖シーパーク&スパ▽風の谷の庵▽はづ別館▽平野屋▽粛 海風

 【三重県】
 戸田家▽風待ちの湯福寿荘▽ホテル花水木▽サン浦島悠季の里▽鳥羽シーサイドホテル▽賢島宝生苑▽浜の雅亭一井▽ばさら邸▽日の出旅館▽海幸の宿なかよし▽鳥羽グランドホテル

 【岐阜県】
 水明館▽本陣平野屋花兆庵▽岐阜グランドホテル▽穂高荘山月▽ひだホテルプラザ▽ホテルくさかべアルメリア▽十八楼▽宝生閣▽高山グリーンホテル天領閣▽吉泉館竹翠亭▽奥飛騨ガーデンホテル焼岳▽八ツ三館▽ホテルパーク

 【富山県】
 延楽▽金太郎温泉▽宇奈月国際ホテル▽ホテル立山▽延対寺荘▽宇奈月グランドホテル▽つるぎ恋月▽ゆめつづり▽砺波ロイヤルホテル▽磯はなび

 【石川県】
 加賀屋▽瑠璃光▽ゆのくに天祥▽日本の宿のと楽▽法師▽海游能登の庄▽辻のや花乃庄▽花紫▽お花見久兵衛▽ホテル高州園▽茶寮の宿あえの風▽花つばき▽たちばな四季亭▽みどりの宿萬松閣▽ゆ湯の宿白山菖蒲亭▽佳水郷▽まつさき▽宿守屋寿苑▽ゆけむりの宿美湾荘▽厨八十八▽雄山閣▽日本の宿山留花▽旅亭懐石のとや▽翠明▽天空の宿 大観荘▽多田屋

 【福井県】
 まつや千千▽清風荘▽グランディア芳泉▽美松▽つるや▽ホテルせくみや

 【滋賀県】
 びわ湖花街道▽里湯昔話雄山荘▽湯元舘▽琵琶湖グランドホテル京近江▽びわこ緑水亭▽暖灯館きくのや

 【京都府】
 松園荘保津川亭▽おもてなしの宿渓山閣▽ドーミーインPREMIUM京都駅前

 【兵庫県】
 ホテルニューアワジ▽ホテル金波楼▽佳泉郷井づつや▽淡路インターナショナルホテルザ・サンプラザ▽西村屋ホテル招月庭▽有馬グランドホテル▽朝野家▽月光園游月山荘▽西村屋本館▽神戸メリケンパークオリエンタルホテル

 【奈良県】
 さこや

 【和歌山県】
 かつうら御苑▽ホテル中の島▽ホテル浦島▽白良荘グランドホテル▽紀州・白浜温泉むさし▽花いろどりの宿花游▽浜千鳥の湯海舟▽休暇村南紀勝浦

 【鳥取県】
 皆生つるや▽華水亭▽依山楼岩崎▽皆生グランドホテル天水▽三朝薬師の湯万翆楼▽花屋別館▽湯喜望白扇

 【島根県】
 玉造グランドホテル長生閣▽曲水の庭ホテル玉泉▽佳翠苑皆美▽白石家▽湯之助の宿長楽園▽旅館樋口▽星野リゾート 界 出雲

 【岡山県】
 湯郷グランドホテル▽鷲羽ハイランドホテル▽八景▽清次郎の湯ゆのごう館▽ゆのごう美春閣

 【広島県】
 ホテル鴎風亭▽景勝館漣亭▽みやじまの宿岩惣▽オリエンタルホテル広島

 【山口県】
 大谷山荘▽萩観光ホテル▽西の雅常盤▽錦帯橋温泉ホテルかんこう▽松田屋ホテル▽ホテル西長門リゾート

 【香川県】
 湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭▽琴平グランドホテル桜の抄▽ことひら温泉琴参閣▽喜代美山荘花樹海

 【徳島県】
 和の宿ホテル祖谷温泉▽ホテルかずら橋

 【愛媛県】
 大和屋本店▽道後プリンスホテル▽宝荘ホテル▽ホテル椿館▽ふなや▽ホテル椿舘

 【高知県】
 土佐御苑▽城西館▽三翠園

 【福岡県】
 六峰舘

 【佐賀県】
 和多屋別荘▽萬象閣敷島▽大正浪漫の宿京都屋▽大正屋▽和楽園▽ホテル龍登園▽椎葉山荘

 【長崎県】
 東園▽ゆやど雲仙新湯▽雲仙宮崎旅館▽雲仙福田屋▽ホテル東洋館▽九州ホテル▽ホテルマルゲリータ▽弓張の丘ホテル

 【熊本県】
 清流山水花あゆの里▽杖立観光ホテルひぜんや▽湯峡の響き優彩▽阿蘇の司ビラパークホテル&スパリゾート▽阿蘇プラザホテル▽山鹿温泉清流荘▽黒川荘

 【大分県】
 九重悠々亭▽杉乃井ホテル▽ホテル白菊▽由布院玉の湯▽花菱ホテル▽ことぶき花の庄

 【宮崎県】
 酒泉の杜綾陽亭

 【鹿児島県】
 いぶすき秀水園▽指宿白水館▽指宿海上ホテル▽霧島国際ホテル▽指宿フェニックスホテル▽霧島いわさきホテル▽城山観光ホテル▽霧島ホテル▽指宿シーサイドホテル▽摘み草の宿こまつ 

 【沖縄県】
 カヌチャベイ&リゾート▽ホテル日航アリビラ▽沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパ▽ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート▽ルネッサンスリゾートオキナワ▽リザンシーパークホテル谷茶ベイ▽ザ・ブセナテラス▽ラグナガーデンホテル▽ANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー▽はいむるぶし▽宮古島東急リゾート

蔵書数約6万冊、旅の図書館がリニューアル(東京・南青山)

志賀典人会長
志賀典人会長

 日本交通公社(志賀典人会長)は10月3日に、東京・南青山の日本交通公社ビル内に「旅の図書館」(久保田美穂子館長)をリニューアルオープンした。旅の図書館は、同財団の長期経営計画「22ビジョン」に基づいて進められてきたもので、今後は同財団の調査研究部門とともに、専門性を高めた新たな機能の発揮に取り組んでいく。なお蔵書規模は、調査研究部門が活動のなかで収集してきた統計や、公開可能な調査研究報告書などを含め、約6万冊。

 「22ビジョン」とは、同財団が実践的な学術研究機関として、観光に貢献していくことを目的に定められたもの。9月15日に行われた、同図書館の内覧会で志賀会長は「今年5月に我われ財団は、文部科学省から学術研究機関の指定を受けることができた。この施設を実践的な学術研究の場として利活用していきたい」と語った。

 同図書館は1978(昭和53)年に「テーマのある旅を応援する図書館」として東京・八重洲にオープンし、昨年10月から移転のために一時的に閉館していた。今回のリニューアルにあたり新たに設定したコンセプトは〝観光の研究や実務に役立つ図書館”。観光分野の専門図書館としてより専門性を高め、観光を研究している人や学んでいる人、観光政策の立案、観光産業や観光地の経営実務に携わる人たちなどに、広く観光関連の情報が収集できる場として活用してもらいたいという想いが込められている。

館内のようす
館内のようす

 また、同図書館の特徴として(1)独自の図書分類の構築と専門性・希少性の高い蔵書の公開(2)知見やネットワークを共有する観光の研究・情報プラットフォーム――の2点が挙げられる。なかでも独自の図書分類では、収蔵資料の特徴や観光分野の専門性に対応するため、観光研究資料(T分類)、財団コレクション資料(F分類)、基礎文献(NDC分類)の3つの分類法を導入した。

 さらに、同施設ビル内に100人規模のシンポジウムが可能な、「ライブラリーホール」を設立。図書のある空間の魅力を活かした取り組みとして、研究会やシンポジウム、2014年から〝図書空間でつなぐ&楽しむ研究交流〟を合言葉に、ゲストスピーカーと参加者が気軽に語り合える場として行われている「たびとしょCafe」など、さまざまなイベントを通して、人々の交流を創出していく。

 同図書館の開館時間は月―金曜日の午前10時30分―午後5時。休館日は、土・日・祝日のほかに、毎月第4水曜日と年末年始となっている。

階段横にも多くの資料を配置
階段横にも多くの資料を配置

千葉を楽しむお得な旅、県と京成グループが協力

酒々井飯沼本家 まがり家
酒々井飯沼本家 まがり家

 京成トラベルサービス(山田耕司社長)はこのほど、モニターツアー「ちばの旅」を発売した。千葉県と協力した取り組みで、千葉県地方創生加速化交付金事業の1つ。全10コースが用意され、千葉県を多くの方に楽しんでもらおうと、カップルやファミリー層、シニア層と幅広いターゲットの取り込みを狙う。乗車賃から施設入場料まで、まるごと含んだお得なコース料金が大きな魅力だ。

【謝 谷楓】

 アンデルセン公園をめぐるコースでは、11月からはじまる紅葉シーズンを目一杯楽しむことができる。

 梨とぶどう狩り、さつまいもと落花生掘りを体験する、千葉県ならではのコースも豊富に用意されている。狩った梨とぶどうは、食べ放題で時間制限もない。指定された時間内であれば、満足するまで果実を頬張ることができる。さつまいもと落花生掘りのコースでは、武家屋敷や旧堀田邸、佐倉順天堂といった話題の日本遺産にも触れられるのが嬉しい。

 「成田山新勝寺と酒蔵めぐり」では、タクシー代込みの料金設定となっているため、シニア層も安心して旅を楽しめる。訪れる鍋店神崎酒造蔵や酒々井(しすい)飯沼本家・まがり家では、酒蔵見学だけでなく、試飲をすることも可能だ。

 ほとんどのコースには、新京成電鉄か北総鉄道の1日乗車券が付くほか、グループごとに沿線ガイドブックが配布されるという。コース料金は、大人1人あたり2千円未満のものが多くを占め、タクシーを利用するコースでも6千円ほど。

 12月25日まで実施予定で、コースによって異なる場合もある。問い合わせ=京成トラベルサービス本社営業所 電話:047(460)8260。

移住促進など情報発信、東京事務所がオープン(北九州市)

北橋健治市長
北橋健治市長

 福岡県北九州市(北橋健治市長)は10月3日、東京事務所(旧シティプロモーション首都圏本部)を千代田区有楽町の東京交通会館6階に移転オープンした。I・Uターンや、移住の促進などの情報発信を強化し、東京から北九州市への新しい人の流れを作ることが目的。交通利便性の高い有楽町に拠点を構え、「北九州市東京事務所」と改称した。

 7日には開所式を行い、北橋市長は「北九州市は国家戦略特区に選ばれ、シニアハローワークやウーマンワークカフェなど日本で初めての試みもスタートしている。少子高齢化で人口減少の課題先進地域ではあるが、このピンチをぜひともチャンスに変えたい」とあいさつ。さらに、「東京の拠点において情報を発信し、また、多くのふるさとを思う方々のために少しでも尽くしたい」と語った。

 来賓の山本幸三地方創生担当大臣は「地方をいかに元気にするかという任務に携わっている。毎週のように全国各地を訪れているが、北九州市には地方創生のモデル都市になってもらいたい」と期待を込めた。

 同事務所には、セミナーなども開催できる「ひまわりテラス」を設置しているほか、U・Iターン就職情報を充実させた。また、移住や就職に関わる専門相談員も配置。近隣16市町村の広域展示コーナーも設け、エリア全体の情報発信に努める。

開所式でテープカット
開所式でテープカット

 開所式では、地元・小倉南区在住のアーティスト、言葉人 詩太(ことばひと・うーた)さんが「ひまわり」をモチーフにした絵を描き、飾られた。その後、テープカットが行われた。

 新事務所の住所・電話番号などは次の通り。

 〒100―0006 東京都千代田区有楽町2―10―1 東京交通会館6階 電話:03(6213)0093、FAX03(6213)0090。

フットパス ― 旅の原点「歩く旅」でまちを知る

 「フットパス」に取り組む地域が増えているという。

 フットパスは森林や田園地帯、古い街並みなど、地域に昔からあるありのままの風景を、楽しみながら歩くこと「foot」ができる小径「path」のこと。発祥地は英国だ。「歩くことで地域ならではの風景が見えてくるし、地元の方との温かな触れ合いこそが、フットパスの楽しみ」なのだという。

 つい先日、福岡県中間市の観光政策を担当する芳賀麻里子係長と、西山千恵子さんが旅行新聞を訪れ、この「フットパス」の取り組みについて熱く語ってくれた。中間市は北九州市の南側に隣接し、人口約4万2千人の小さなまちである。2015年に、「遠賀川水源地ポンプ室」が明治日本の産業革命遺産の構成資産として、ユネスコの世界文化遺産に登録されたが、これによって全国から観光客が大挙して訪れたというわけでもない。いわば、多くの地域がそうであるように、町の名前を言っただけで、何かを連想させる強烈な観光資源があるわけでもない、普通のまちである。

 ただ、そのような小さなまちであったとしても、ちゃんと探せば色々と魅きつけられる話題があるものなのだ。

 例えば、俳優の高倉健さんは、この中間市の出身である。そして、小田宅子(おだ・いえこ)さんの生家跡も、このまちにある。この小田宅子さんは江戸時代の女性だが、53歳の時に仲間の女性とお伊勢参りをし、そのまま善光寺、日光、江戸を巡る約5カ月の旅をした。そして『東路日記』という紀行文も残している。作家・田辺聖子さんの小説『姥ざかり花の旅笠』のモデルにもなっている。

 つまり、現在の「女子旅」の先駆的な存在として、今また脚光を浴びつつあるというのだ。

 さて、この小田宅子さんは、なんと高倉健さんの5代前の祖先にあたるそうだ。中間市にはいくつかフットパスのコースが整備されており、このようなストーリーを耳にすると、一見ありふれた長閑な町並みや、ボタ山のある風景でも、ゆっくりと歩いてみたくなるものである。

 自分たちのまちを知るには、まずは歩かないとわからない。そして、旅の基本は「歩く」ことだ。

 私も旅先では歩き回る。なぜ自分は旅先で足が棒のようになるまで歩くのだろうと考えたことがある。それは、やはりその土地の空気を吸いたいと思うからだ。

 クルマで旅をする時も、少し暑くても、また寒くてもエアコンではなく、窓を開けて運転をする。その土地の木々や植物の匂い、人家からの生活の匂いなどが、ハンドルを握るドライバーズシートにも流れ込み、ときどき胸を切なくさせる。

 旅は五感を鋭敏にさせる。その土地で見た風景や街並みの像はいずれ薄れていく。しかし、何気なく歩いて感じたその土地の空気の匂いは、意外に記憶に残っている。再訪した時に、視覚的なものよりも、むしろその土地の匂いによって、記憶が鮮明に蘇ってくることが多い。

 旅は“快適”の追求が大きな潮流となっている。全行程で不快な思いもせずに、長い旅もできるようになった。快適至上主義的な旅へのアンチテーゼとして、旅の原点である「歩く旅」の意義を、フットパスは小さな町から、静かに、やさしく、未来人にも教えてくれるかもしれない。

(編集長・増田 剛)

No.443 OTOA座談会、旅行業は“運命共同体”

OTOA座談会
旅行業は“運命共同体”

 海外旅行の黎明期から活躍するツアー(ランド)オペレーターの組織、日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)に、旅行会社との関係やオンライン旅行会社(OTA)の台頭について話を聞いた。サステナビリティが大きな課題となりつつあるなかで、旅行会社からデスティネーションまで、業界全体の繁栄を目指した取り組みが期待されている。海外ホテルの仕入れなど、自ら黒衣に徹してきた自負を持つOTOAは、現状をどう見つめているのか。旅行業界の今を知るヒントが満載の座談会となった。

【司会進行・構成=謝 谷楓】

【参加者】
会長 大畑 貴彦 氏(サイトラベルサービス)
副会長 荒金 孝光 氏(メープルファンエンタープライズ)
副会長 ゲライント ホルト 氏(THE J TEAM)
専務理事 速水 邦勝 氏

 ――OTOAは会員各社と旅行会社の関係改善を訴えてきました。両者の関係について、あるべき姿とはどのようなものでしょうか。

■大畑:ツアーオペレーターの存在は日本特有のものです。海外ではツアーオペレーター=旅行会社というように1つの組織になっている方が多いようです。海外現地では、英語をはじめとする外国語を使わなくてはならないことが、日本特有の状況をつくりだしたといえます。
 近年、旅行会社からツアーオペレーターへという“縦の関係”は多少変化してきましたが、大切なのは、両者がそれぞれの役割を尊重したうえで仕事をしていくということです。そうすれば、ビジネスのうえでも建設的で公正な対話ができるようになると考えています。
 “縦の関係”の変化には、オンライン旅行会社(OTA)の台頭も関わっています。従来、直接お客様と接するのが旅行会社であり、現地の宿泊施設や車両などの手配(仕入れ)をするのがツアーオペレーターでした。旅行会社の持つお客様が、OTAへと流れているという事実が、両者の関係の変化に大きく影響しているのです。変化によって、旅行会社が、ツアーオペレーターを重視せざるを得ない状況になってきたと考えています。
 多くの旅行会社では、商品企画の段階からツアーオペレーターが深く関わっているため、我われの存在なしには仕事ができないのです。ツアーオペレーターほど世界各地を熟知している職業は多くありませんから。

■速水:そう思います。実のところ、お客様の要望の大部分に応えているのは、ツアーオペレーターなのです。極端な言い方ですが、我われがいなければ旅行会社は成り立たず、逆もまた真です。そのため、“協働”で仕事をしているのだということを理解しなければ、適切な関係は望めません。ドライな受注発注だけの関係は、とても歪なものだと思います。欧米をはじめ諸外国でのビジネス関係は「お互いフィフティ・フィフティ」というのが標準であり、それがあるべき姿ではないでしょうか。…

 

※ 詳細は本紙1646号または10月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

地方へインバウンドを呼び込むには―、「勇気を出す」ことがカギ、全旅連JKK

岡本尚子会長
岡本尚子会長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、岡本尚子会長)は9月28日、インバウンド市場の実情や重要性を学ぶ機会として、滋賀県大津市内で「全旅連女性経営者の会オープンセミナーin滋賀」を開いた。当日はさまざまな立場でインバウンドと観光業に携わる講師が登壇。国や地方の取り組み、人気観光地の実情など、テーマは多岐にわたった。需要取り込みに関しては、「勇気を持ってやってみること」が重要と、強調された。
【後藤 文昭】

 岡本会長は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを「おもてなしを生業とする日本中の宿の本領を発揮できる好機」と語った。そのうえで、1日でも早く、1軒でも多くの宿がインバウンドに興味を持ち、取り組みをスタートすることが「五輪後も観光業が発展する原動力になる」と強調した。

河原千晶氏
河原千晶氏

 パネルディスカッション「地方が主役~あなたの街にインバウンドを呼び込もう~」には、小俣緑氏(観光庁観光産業課係長)と、栗山圭子氏(京都新聞社編集局文化部長、生活学芸担当部長、論説委員)、南めぐみ氏(エクスペディアホールディングス大阪〈南エリア〉、奈良地区主任)、河原千晶氏(犬鳴山温泉不動口館代表)が登壇。稲熊真佐子氏(豊田プレステージホテル代表)がコーディネーターを務めた。

 大阪府泉佐野市の宿で訪日外国人客を受け入れている河原氏は「バラバラに地元をアピールしている人をまとめることが大切」とし、「古民家を活用し、侍体験や書道体験などができるまちを目指している」と地元での取り組みを紹介した。

 

南めぐみ氏
南めぐみ氏

 一方、訪日外国人の送客に携わる南氏は、宿が気づいていない魅力が発信できるかは、「柔軟性」がポイントだと答えた。「例えば多くの旅館が採用する1泊2食付のシステムは、海外では認知されにくく、また料金が高くなってしまい、来てもらえないケースもある」と一般的な外国人観光客の心理面を紹介。周りに飲食店が無い宿が素泊まりプランを販売し、客が食事したいといったときに、オプションとして食事を提供することで、収益を確保した例などを挙げた。

 京都の文化や観光を取材している栗山氏は、インバウンドの急増で「今後文化的すれ違いが際立つのではないか」と述べた。「地元京都では、外国人の行動で地域住民が日常生活に圧迫感を感じており、日本人旅行者の満足度も下がっている」と指摘し、「リピーターになってくれる日本人を大切にするための対応を考えるべき」と語った。

小俣緑氏
小俣緑氏

 小俣氏は、観光庁で人材育成に関わる立場から「国の宿泊業への期待は高い」とコメント。地域雇用の創出と経済波及効果の高さを理由に挙げ、旅館が1軒潰れると、その地域に与えるダメージは大きいと強調した。そのうえで、経営ノウハウを学ぶ場やさまざまな助成制度があると紹介し、「宿泊業界の人には誇りを持ってほしい」とメッセージを送った。

 会場からは「若者に旅館を知ってもらうために、宿泊業界はどうするべきか」という質問も出た。小俣氏は全旅連青年部が17年2月22日に行う「第3回旅館甲子園」を、「外に広く発信する場所にしてはどうか」と桑田雅之部長に提案したことを報告。また、「観光に関わる学部、学科の学生にも参加してもらえるよう、積極的に行動する」と語った。

栗山圭子氏
栗山圭子氏

 パネルディスカッションに先だって、アレックス・カー氏(NPO法人ち庵トラスト理事長)が「地域におけるインバウンドの取り組み」と題し、講演を行った。
 
 
 
 
 
 
 

宿や特典がさらに充実、17年版「ピンクリボンのお宿」冊子

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 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(畠ひで子会長、事務局=旅行新聞新社)は10月1日、加盟する宿泊施設のお風呂情報などをまとめたフリーペーパー「2017年版ピンクリボンのお宿」を発行した。毎年10月に発行しており、今年で5冊目となる。

 1人でも多くの方に旅とお風呂を楽しんでもらおうと、今年は、会員宿が増え、特典クポーンもますます充実した。お得なプランなど、お出かけ前にチェックしておきたい情報などが満載となっている。

 「入浴着をレンタルできる」や、「大浴場の洗い場に間仕切りがある」といった、乳がん患者・体験者が求めるお風呂情報を網羅。禁煙ルームや食事への配慮を求める声にも、細かく対応しているため、全国の医療施設からの問い合わせも多い。

 同冊子は、宿泊やお風呂の情報だけでなく、各施設の取り組みを、1人でも多くの方に知ってもらうために、フリーペーパーとして配布している。

 仕様はA5判フルカラー、80ページ。発行部数は10万部。原則、無料で発送を行っている。

 問い合わせ=ピンクリボンのお宿ネットワーク事務局(旅行新聞新社内) 電話:03(3834)2718。

【ぐるなび執行役員・杉山尚美氏に聞く】 視座の高い使命感を

杉山 尚美氏
杉山 尚美氏

 情報通信技術(ICT)を活用し、飲食店の経営サポートに取り組んできたぐるなび(滝久雄会長)は近年、“LIVE JAPAN”や“ぐるたび”など、観光客を対象としたサービスにも尽力している。今回、インバウンド事業を中心に、同社執行役員の杉山尚美氏に話を聞いた。スピーディーかつ丁寧な事業展開に注目したい。
【謝 谷楓】

 ――力を入れているインバウンドについて、始めたキッカケや、ぐるなびの役割について教えてください。

 ぐるなびは、2013年にインバウンド室を創設し、本格的な活動をはじめました。一方、その前年には、ぐるなびの関連会社のぐるなび総研でインバウンド研究会を立ち上げており、知見を深めていました。13年は、富士山と和食がユネスコの文化遺産と無形文化遺産となり、オリンピック・パラリンピック東京大会が決定した年で、インバウンドブームよりも一足早く準備を進めることができました。
 ぐるなびの役割は、サポーターとして、加盟店をはじめとした飲食店の継続経営を手助けすることです。インバウンドの取り込みは、国内消費が減少しているなか、外食産業活性化のために必要不可欠だと考えています。
 インバウンド室を設立した年から、加盟店向けのインバウンドセミナーを行ってきました。当初は、「本当に必要なのか」といった声も上がりました。しかし今では、年間で331回(15年実績)のセミナーを開催するまでになりました。とくに昨年は、外食チェーン各社を含め、多くの加盟店が、「インバウンドの取り込みをやらなくてはならない」という意識を持つに至った、機運の年だったと思います。

 ――流れが大きく変わっていったのですね。具体的に行っている取り組みは。

 外国人が日本に来る大きな理由の1つに、日本の“食”があります。それを楽しめる環境を目指して、15年1月に、ぐるなび外国語版サイトをリニューアルしました。
 多言語での情報発信は、04年から行っていますが、これを機にメニュー名だけでなく、食材や調理方法、調味料、アルコールの度数などといったお酒の情報も多言語で発信できるようにしました。多言語化は、コース料理やメニュー数にもおよぶため、リニューアルしたWebサイトは、飲食店が発信する情報すべてを網羅したことになります。

 ――日々忙しい加盟店にとって、日本語のメニュー名を外国語に翻訳してもらえることは、とても便利で助かることだと思います。

 日本語のメニュー名はとても複雑なため、直訳しただけでは、外国人観光客に理解してもらえません。また、加盟店にとっても、自店のメニュー名がどのように翻訳されているのかということはとても気にかかることです。
 ぐるなびには、20年間培ってきたビッグデータがあり、それを活用することで、意味や言い回しが似たものを整理することができました。その結果、900万もあった日本語のメニュー名を、現在では2800の名で表現できるようになりました。翻訳をするうえで、担保となるメニュー名ができたのです。これは、加盟店であれば利用できるオリジナル辞書変換システムとして、Webサイトに搭載しています。加盟店が、日本語の操作だけで、自店のメニュー名から食材や調理方法、調味料などを多言語で情報発信できるインフラを整えたのです。

 ――多言語での情報発信は、どれくらいの加盟店で行われていますか。

 開始してから1年半経った現在、2万店以上の加盟店が行っています。

 ――取り組みのスピードがとても速いと思います。ビジネスにおいて、常にそのようなスピード感を重視しているのでしょうか。

 現在の状況は、私たちがぐるなびを立ち上げたときにとても良く似ています。1996年当時、インターネットはあまり普及しておらず、「なぜインターネットなのか」と考える飲食店も多くあり、そのような状況下で、活動していました。インバウンドの時代がすでにやって来た現在、19年のラグビーワールドカップや、20年のオリンピック・パラリンピック大会などを考えれば、一刻も早く準備をしていかなくてはなりません。スピードの速さは、加盟店をはじめとした飲食店の売上や利益につながるものを、どこよりも早くつくっていかなくてはならないという使命感の結果なのです。
 “食”が、外国人観光客にとって、日本を訪れる目的であるなか、飲食店自らが情報発信するすべを持たないことは、リピーター獲得の大きな機会を失うことを意味します。日本の、四季ごとの旬な食材を使ったメニューを各店からリアルタイムに発信できれば、自然と正しい情報が海外に伝わり、「今回は春に訪れたけど、次は秋に訪れてみよう」という“食”を通じたリピーターづくりが期待できます。また、全国の各地域に根付いた郷土料理を発信できれば、「今回は北海道で、次回は愛媛県に行こう」という“食”を通じた地方誘客もできるのです。

 ――ぐるなびは、加盟店自身が主体的に情報発信できる環境を用意しているのですね。環境を提供する側として、加盟店に求めることは。

 インバウンドで言えば、国籍でお客様を選ばず、“インバウンド、歓迎”の意識をつくってほしいという想いがあります。外国語を話せる以上に、受け入れる気持ちをしっかり持つことの方が重要なのです。あとは、ぐるなびのWebサイトを使った英語のメニューづくりや、よくあるトラブルの対応といった準備をすれば十分ではないでしょうか。

 ――13年当時、インバウンドへの関心は今ほど高くありませんでした。“食”を通じてインバウンドに取り組む発想の原点とは何ですか。

 03年にはビジット・ジャパン・キャンペーンが始まっており、06年の観光立国推進基本法制定や、それから2年後の観光庁設立というように、観光に対する政府の考え方は一貫しています。日本の産業が発展していくためには、観光が必要だということは既知の事実だったと思います。その当時から、外国人観光客の主な訪日目的は“食”にありましたから、先んじて準備をしていくという考え方がぐるなびにはありました。そのことが、発想の原点だと思います。

 ――スピーディーに情報をキャッチしているのですね。アジアなど積極的に展開していますが、今後の展望は。

 現在、ぐるなびはシンガポールと台湾、香港、上海の4地域に拠点を構えています。今後は、ぐるなびが海外レストランを組織化して、インバウンドの取り込みと食材輸出の促進に貢献できるのではないかと考えています。
 農林水産省の発表によれば、世界には9万店の和食レストランがあります。インバウンドの取り込みの点では、現地のレストランや料理人を組織化することで、レストランを媒体とした訪日プロモーションの可能性に注目しています。組織化はすでに行っており、例えば、10月18―31日間に、台湾で東北推進機構(清野智会長)と連携したイベントを開催する予定で、現地和食レストランを通して、東北食材のPRや東北へのインバウンド増加を促します。
 また、和食レストランにかぎらず、日本の食材に興味を持つ料理人は多いため、海外のレストランは、日本の食材の輸出先になると考えています。
 観光と食材の輸出は必ずつながっているものです。例えば、海外のレストランで東北の食材に興味を持った方は、東北にも訪れたいと思うはずですから、双方向でシナジーを生むことができるのです。

 ――加盟店と食材生産者をつなぐからこそできることだと思います。旅館など宿泊施設へのアドバイスがあれば教えてください。

 加盟店には、日本と地域の食文化を発信するのだという視座の高い使命感を持ってほしいということを伝えています。ぜひ宿泊施設にも、このような使命感を持ってほしいと思います。とくに旅館は、日本の文化や考え方、感じ方を伝えるといった使命も持っているのではないでしょうか。

 ――ぐるなびでは、“食”と旅行をつなぐサービスが充実しています。今後の活躍にも期待がかかります。ありがとうございました。