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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(127) お客様がいるから仕事が出来る当たり前に感謝を お客様の選択に感謝

2021年8月15日(日) 配信

 

 宿泊業界の皆さんにとっても、大変厳しい状況が続いています。そんななかで、私は観光業界の「今」を見つめるため、出張を続けています。昨年、第1回目の緊急事態宣言が発出された時期は、「本当にこれが東京か」と思うほど、街を歩く人が少なく驚きました。乗車したタクシーのドライバーが、その状況を「怖い」と話していたのが強く印象に残りました。

 あれから1年半が過ぎても、いつものあいさつと丁寧な運転は変わりません。それ以外のおもてなし行動も、コロナ前と何ら変わっていませんが、コロナ禍の厳しさは続いているのです。

 ただ、時が経過しても変わらない厳しい現実のすべてを、コロナのせいにしていてはいけません。私たちが未来を創るためには、変わる決断と実行が必要なのです。

 ある日、宿泊したホテルでのできごとです。そのときも緊急事態宣言が出ていました。正直、「移動を控えるべきではないか」「宿泊先にも迷惑にならないだろうか」と悩みました。仕事先には「こうした状況ですから」と、後日に変更することも問題ないと分かっていましたが、結局は迷いつつも、出張することにしたのです。

 そのホテルのチェックイン時のことです。フロントには、感染予防の透明なアクリル板が立てられ、検温と消毒、そして海外渡航歴などを聞くアンケートへの協力もありました。驚いたのは、名前を告げたときに笑顔のスタッフが、一歩下がって丁寧にお辞儀をして「西川様、こうした時期にようこそお越しくださいました。ありがとうございます」と、あいさつされたことです。

 この一礼を受けたときに、ほっとすると同時に身体が震えるくらいに感動したのです。「私の選択は間違っていなかった」「来ても良かったのだ」と思うと同時に、宿泊業の人たちも大変な状況の中で顔晴っている。それでも、まずお客様への感謝の言葉と想いをしっかりと伝えてもらった。

 「今日の宿泊をどれほど歓迎されているのか」、これまでの宿泊の中で一番に感じた瞬間でした。

 宿泊客が少ないなかで、お泊まりいただいたことをうれしく思うだけでなく、「きっとお客様も、こうした時期に宿泊されることを迷われていたのではないだろうか」という、お客様の心に寄り添うような言葉が、どれほど宿泊者を安心させるのかを知らなければなりません。

 コロナ危機に学ぶべきことは、お客様がいてはじめて、私たちは仕事ができるという当たり前のことを強く心に持ち、これからの仕事にさらに「感謝の想い」を持って取り組むということではないでしょうか。

  

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

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