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5月1日号から新連載「精神性の高い旅」スタート プロローグ~精神性の高い旅へのいざない 失ったからこそ見えてくるもの 島川崇氏

2021年4月2日(金) 配信

島川崇氏(左)と石井亜由美氏(旬刊旅行新聞2021年3月11日号掲載) 5月1日号から島川氏と石井氏が交互に精神性の高い旅を紹介していく

 ~ただ見たいものがあるんだ~

 この言葉は、生涯をかけて曼荼羅と仏画に挑んだ孤高の画家小倉尚人が、妻から絵を描く理由を問われたときの答えである。この言葉で小倉が言いたかったことは、見たこともない珍しいものを見たがっているということではない。見えない真理を見たい、その想いに小倉は突き動かされていた。

 
 小倉は、金剛界曼荼羅9作品を描きあげたタイミングでこの言葉を発した。一般的には曼荼羅画といえば諸尊の身像の集合をイメージするが、小倉の曼荼羅画は、それとは異なり抽象的である。宇宙の深淵を見るような不思議な印象だ。死へ向かっているようで、それでいて生へのエネルギーがほとばしっているような、今までにはない気持ちを内面から湧き立たせてくれる画である。

 
 小倉は、名利を一切求めず、生涯画を描くことで仏道を求めた。その求道者としての小倉の眼を通して、私たち凡人は、仏の道とはこのような心持ちなのかと想像を膨らませることができる。

 
 ここで、最近の観光を取り巻く環境を考えてみると、「フォトジェニック」「インスタ映え」といった言葉に象徴されるように、目に見えるものの美しさ、煌びやかさ、印象深さばかりが注目されている。

 
 その一方で、旅に精神性を求める人も存在する。最近では、御朱印帳を片手に寺社巡りをする人々も多く見かけるようになり、パワースポットと紹介された場所は活況を呈している。ただ、このパワースポットとは何かを知るために、雑誌Hanakoの寺社特集の直近4冊でパワースポットとして紹介されていたところを列挙していくと、樹木24%、石・岩19%、仏像・動物の像14%、本殿・本堂・門等の建造物も14%と、すべて「モノ」であり、見えないものがパワースポットとして紹介されている項目はなかった。精神性を求めているように見えて、現実はすべて目の前にあり、見える印象的なものを求めて旅をしているに過ぎない。

 
 西行は伊勢神宮を訪れたときに、「何事のおわしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」と詠んだ。目の前の社殿そのものではなく、見えないものを感じたわけである。出口王仁三郎は「耳で見て目で聞き鼻でものくうて口で嗅がねば神は判らず」と表現した。出口の表現には感性を研ぎ澄ますヒントがある。耳で見てみよう、そして、目で聞いてみよう。そうすると、現代社会において私たちは視覚にいかに左右されているかということがわかるはずだ。

 
 それは音に関しても同じだ。旅に出て、敢えて眼を閉じてみよう。旅の途中同行者とぺちゃくちゃおしゃべりするのではなく、しいんとした静寂に身を置いてみよう。そうすることで、今まで見過ごしていた小さな気配を感じ、それが思いがけない出会いにつながって、自分はひとりぼっちではないということを実感できるのだ。

 
 コロナ禍で私たちは多くのものを失った。でも、失ったものそのものやその代わりとなるものを得ようとするのではなく、失ったからこそ見えてくるものを感じる旅をしてみませんか。

 
 そのような「精神性の高い旅」を石井亜由美さんと私でそれぞれの感覚を頼りに1人旅し、それを隔月で連載したいと思います。ご期待ください。

【島川 崇】

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

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