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JATA国内・訪日旅行推進部 前部長・興津 泰則氏に聞く~需要創出への視点を

2018年7月13日
編集部:増田 剛

2018年7月13日(木)配信 

興津泰則氏

日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部の興津泰則前部長が6月30日で退任した。アウトバウンド中心の事業展開のなかで、国内・訪日旅行事業の初代部長としてJATAに着任して10年間、旅行業界は大きく変化していった。国内宿泊旅行の需要創出や、バス業界との「安全・安心」なバスツアーに向けた共通認識の醸成、インバウンド拡大など、さまざまな現場で活躍した興津氏に、10年を振り返りながら今後の旅行業界について語ってもらった。

 ――観光庁が創設した2008年10月1日に、JATAに初めて国内・訪日旅行業務部が立ち上がり、興津さんは初代部長として着任しました。

 当時、JATAでは、アウトバウンド事業が中心でした。

 そこで、「国内旅行と、訪日旅行の需要創出に向けてムーブメントを高めよう」と最初に取り組んだのが、国内宿泊旅行の拡大を目的とした「もう一泊、もう一度(ひとたび)」キャンペーンの展開でした。

 各旅行会社は協定旅館ホテル連盟と、戦略的に宿泊増売に取り組んでいましたが、旅行業界が一体となって「国内宿泊旅行の需要を創っていこう」という動きはまだありませんでした。 

 2007年に策定された観光立国推進基本計画では、日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数は「年間4泊」を目標としていました。

 同CPでは、新聞広告による需要喚起や、旅行会社を訪れたお客様に抽選で宿泊券、お土産をお渡しする大規模キャンペーンを展開しました。国内旅行事業で初めて旅行会社が一体となって需要を創出する協力体制ができたのが大きかったと思います。

 10年間取り組んできた「もう一泊、もう一度(ひとたび)」CPは時代とともに中身も変えてきました。

 若年層にインパクトを与えるために、フェイスブックなどのSNS(交流サイト)を活用したり、OTA(オンライン旅行会社)に対応した取り組みも進めています。

 ――JATAでの10年を振り返るとさまざまな出来事がありました。

 09年には新型インフルエンザが発生し、修学旅行の中止・延期問題がありました。

 11年には東日本大震災があり、その後も熊本地震など、日本各地で毎年のように天災が発生しました。

 同時に、人口減少による国内需要の伸び悩みという問題が顕在化したのもこの10年です。これを補うのが訪日旅行(インバウンド)であり、地方創生に向けた支援としても、インバウンド拡大に取り組んできました。

 JATAは国内旅行と訪日旅行を分けずに需要喚起をしているので、表裏一体の取り組みができるメリットがあります。インバウンドの拡大に向けては09年度から、各地でインバウンドセミナーやフォーラムを始めました。

 同フォーラムでは、地方自治体や観光産業に携わる方々を対象に、インバウンド拡大へのJATAの役割や取り組みを知ってもらうところから着手しました。また、フォーラムにおいて、観光庁や日本政府観光局(JNTO)と協力して、訪日外国人観光客を受け入れるための相談窓口を作りました。東京・谷中の澤の屋旅館の澤功さんにも講師をお願いし、「インバウンドの受け入れはそんなに難しくない」ということを訴えていきました。

 ――インバウンドの取り扱い拡大に向けては。

 大事なことは、日本人の目線ではなく、訪日客の目線で着地型商品を開発していくことです。

 各地で立ち上がっているDMOは、着地型商品の開発や、受け入れを持続的に発展させていくことが目的であり、人材育成が最大の課題です。JATAの各支部も各地のDMOに協力し、人材づくりにも取り組んでいます。

 ――12年には関越自動車道で、16年には軽井沢スキーバス転落事故が発生しました。

 関越自動車道のバス事故が契機となって、旅行業界、バス業界ともに安全コストを重く受け止めるようになりました。消費者の安全に対する意識が高まっており、安全に必要な「適正な料金」をきちんとお客様に明示し、買っていただけるビジネスモデルを構築していかなければならないと思います。

 一方、安全コストが上昇し過ぎるために、需要が低下していくことも心配です。旅行会社が取り扱うバスツアーの本数は減少傾向にあります。

 JATAは安全コストによって運賃が上がったことに対して、反対も非難もしていません。バス事業者も適正な価格はどこなのか、コスト管理を真剣に考えなければ、結果的にマーケットからバス需要が減少していくことになります。

 今後の取り組みとして、バス業界と旅行業界が共同でバスツアーの需要創出、喚起に向けたキャンペーンの展開などにも目を向けるべきだと思います。

 マーケットの中では価格競争が存在し、残念ながら違反行為も散見されます。会員に向けては「安全・安心」の重要さを言い続けなければなりません。

 ――今後、旅館や地域と旅行会社に期待することは。

 旅館は日本の文化です。日本の文化である旅館をどのように着地型商品に取り込んでいくか、旅行会社には工夫が必要です。

 同時に、OTAにはできない対面販売、きめ細かな旅行サービスの大切さを生かせるかが問われてきます。これまで以上に関係機関と、お互いに利益を生むための「ウイン―ウイン」の関係を築き、消費者ニーズをしっかりと受け止めるための改善が必要です。

 宿泊施設の方はよく「来てください」とおっしゃいますが、私は逆に「そこに行く理由をください」と言います。

 これは旅行会社にとっても、お客様にその土地に行く理由を示すことが重要になってきます。

 消費者も目的を持って旅行しています。旅館や地域、そして旅行会社も「どうして来てほしいのか」という理由を探し出す努力が求められると思います。

 ――ありがとうございました。

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