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宮﨑信雄氏(中之条町総合アドバイザー、中之条町観光協会 事務局長)に聞く メディアとの「橋渡し役」に 地元・中之条町に“恩返し”

2022年8月2日
編集部:増田 剛

2022年8月2日(火) 配信

宮﨑信雄氏

 今年4月、群馬県・中之条町(伊能正夫町長)の「総合アドバイザー」に宮﨑信雄氏が就任した。併せて中之条町観光協会の事務局長も務める。東京・銀座の群馬県アンテナショップ「ぐんまちゃん家」の所長などを歴任してきた宮﨑氏は、さまざまなメディアとのネットワークを重視し、ロケ誘致など宣伝効果を発揮してきた。伊能町長は「観光客誘致と交流人口の増大により中之条町の活性化を達成できる請負人は、この人しかない」と、宮﨑氏への期待は大きい。   【増田 剛】

        ◇

伊能正夫町長

 ――今年4月に中之条町総合アドバイザーに就任されました。宮﨑さんの目から見た課題などはありますか。

 
 「花と湯の町なかのじょう」をキャッチフレーズに掲げる中之条町は「観光で集客し、交流人口を増やす」ことを重点施策に据えていますが、その目的に向かっていく骨格づくりも、まだまだという段階です。

 
 季節ごとのお祭りやイベント、観光キャラバンなど年間スケジュールに沿って、前例踏襲してしまう傾向にあります。伊能町長からも「新しい発想や経験豊富なノウハウを中之条町の観光発展に向けて注入してほしい」と託されました。

 
 従来とは少し切り口を変えたアプローチや、自分が長年培ってきた、きめの細かなメディア対応などを徐々に生かしていきたいと思っています。

 
 ――中之条町観光協会の事務局長も務められています。

 
 会員である旅館や飲食店、商店などの「売上を伸ばす」努力をするのが、観光協会の使命だと認識しています。目新しい取り組みや、やる気のある会員を精一杯支援していくのが私の考え方です。会員の売上が伸びると町の税収も増え、観光協会の存在意義も高まっていきます。中之条町の知名度や関心度を上げることで、移住、定住にもつながっていくと長期的な視点も大切です。

 
 ――宣伝活動で大事なことは。

 
 「ポイントのぼやけた宣伝はしない」が鉄則です。例えば、町内には四万温泉や、沢渡温泉、六合温泉郷など、規模や個性のまったく異なる魅力的な温泉地がありますが、1つのポスターに並列でアピールしてもインパクトも、訴える力もありません。

 
 観光協会としてしっかりと考えなければならないことは、「それぞれの個性がキラキラと輝く」宣伝の仕方です。

 
 中之条町には季節ごとに多種多様な花と触れ合える施設「中之条ガーデンズ」や、イベントでは国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ」などがあります。「いかに宿泊に結び付けていくか」と民間企業のセンスで、経済波及効果との関連性を持った宣伝方法を探っていくことも大切です。

 
 メディアには明確なターゲットや意図を絞ってアピールしなければ取り上げてもらえないし、消費者にも訴えかけることはできません。

 
 平等に門戸を開いていますので、会員には「観光協会をフルに利用してほしい」と思っています。東京で長年築いてきた財産であるメディアとのネットワークを活用し“セールスマン”として売り込んでいきます。

 
 長年の経験から、マスコミが望むものもわかります。テレビ番組の制作担当者が現地に求めるガイドの用意や、撮影許可などを先回りして用意する“かゆいところに手が届く”手配も可能です。

 
 電話でのやり取りの途中で制作担当者に「プロの方ですか?」と毎度驚かれますが、「いえ、ズブの素人です」と答えています。

 
 ――“歩くDMO”と呼ばれた男の真骨頂ですね。

 
 新聞や雑誌など掲載による費用対効果も見据え、メディアに対する投資も必要です。観光地が伸びるためにはメディアとの人脈づくり、付き合い方はとても大事です。

 
 取材しやすい環境づくりや気配りによって、相互理解や信頼関係が生まれます。地道ですが、“人間の力”がものを言う世界です。取材される旅館や飲食店、商店とメディアとの「橋渡し役」として、積極的に発信していくつもりです。

 

人気観光スポット「奥四万湖」のほとりで

 
 ――組織のあり方はどうですか。

 
 会員が納得する組織であるべきだと思います。会長、副会長、理事の意見をしっかりと聞きながら、事業計画のなかで必要なものと不要なものを精査する。会員と一緒に考え、具体的な手法を明確にして行動する観光協会を目指します。

 
 時代のニーズに合わせてIT化への対応も加速していきたいですね。

 
 ――観光業では、人手不足なども課題です。

 
 観光産業が発展すれば、就労者が増え、人口増にもつながっていきます。衰退せず活性化させるサイクルも考えています。

 
 まず取り組みたいのは、町内の保育園・小学校・中学校の母親など保護者を対象に、就労についてのアンケートを実施し、例えば、Aさんは「子供が学校に行っている午前10時~午後3時まで働くことができる」などの希望をリスト化して登録します。

 
 一方、旅館やカフェ、商店にも人手が欲しい曜日や時間帯を聞き、マッチングさせる仕組みを作りたいと思っています。

 
 旅館や食堂の人手が足りない時間帯と合致すれば、雇用側も常態的な人手不足が解消します。働く人も1日や半日拘束されるのは難しいけど、「2時間なら働きたい」というニーズはたくさんあると思っています。

 
 民間企業だと手数料が発生しますが、観光協会がコントロールすれば無料でできます。町や教育委員会も巻き込んでいきたいと考えています。

 
 観光宣伝とは違い、会員への側面からの支援となりますが、労働力や雇用の確保といった基盤が安定していなければ、観光誘客をしても満足度は高まらず、発展にもつながりません。ぜひ実現させたいと思っています。

 
 人生の集大成として、四万温泉に生まれ、育てていただいた地元・中之条町に“恩返し”をしていきたいと思っています。

 
 ――期待しています。ありがとうございました。

 

宮﨑 信雄(みやざき・のぶお)氏
 1956年群馬県・中之条町生まれ。81年から四万温泉協会でメディアへの宣伝活動を展開。93年には事務局長就任。四万温泉への入込客数を飛躍的に伸ばした手腕を買われ、2008年6月群馬県観光協会(現・群馬県観光物産国際協会)観光部長就任。10年4月ぐんま総合情報センター「ぐんまちゃん家」所長に就任。群馬県各地の観光業者・行政が東京でメディア、旅行会社と交流しながら直接情報発信する「サロンドG」を開き、群馬県観光PRの拠点となった。20年4月同所アドバイザー。22年4月から現職。

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