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「観光人文学への遡航(16)」 パラオに学ぶ島としての日本のコロナ対策

2021年10月24日
編集部

2021年10月24日(土) 配信


 パラオ共和国のフランシス・マツタロウ大使がこのたび、帰国されることとなった。元々の任期は昨年までだったのだが、コロナの広がりによって任期が延長され、ようやくグアムとの定期便も再開されたことから、帰国の予定が立った。

 
 パラオは1994年の独立以来、観光業を国の基幹産業に据え、その美しい海に魅了された人はもちろん、第2次世界大戦の激戦地ペリリュー島を中心に、遺骨収集や慰霊のために訪問する人が絶えずいた。

 
 印象深いのは、現在の上皇・上皇后両陛下が2015年にペリリュー島をご訪問されたことである。両陛下のご訪問は現地で大歓迎を受け、ペリリュー島ではご訪問を受けた4月9日が現在も祝日となって、後世まで語り継いでいこうという強い意志を感じる。

 
 そのパラオは、国際観光がコロナによって停止され、観光関連産業も大打撃を被っている。フィリピン人をはじめとする観光関連産業の従事者も本国への帰国を余儀なくされた。私の教え子が1人パラオで現地ガイドとして活躍していたが、彼女も帰国してきた。

 
 しかし、そのような状況下においても、観光関連産業には国家が保障して、倒産を回避しながら、徹底した入国制限を行っている。

 
 その結果、いまだにパラオのコロナ感染者は累計でも0のままである。小さな島国で、医療体制も十分であるとは言い切れない状況だから、ひとたび感染が広がってしまったらとんでもないことになってしまうため、そこは徹底した入国制限をしている。

 
 おかげで、とくに中国人観光客の激増に伴って危ぶまれた環境への負荷が減少し、珊瑚や毒のないクラゲとともに泳ぐことができるジェリーフィッシュレイクのクラゲの数も元通りの数になってきたそうである。今のコロナ危機は、観光地の環境再生だとポジティブに考えているようである。

 
 日本において、最多の感染者を発生させ、自宅療養という名の医療崩壊を招いた第5波は、明らかに東京オリンピック・パラリンピックに伴う入国者の増加と、当初関係者が主張していたバブルが形成できなかったことによる。入国者を自由に活動させたら、感染が広がるに決まっている。

 
 もう今回のオリ・パラで、個人旅行にバブル形成は期待できないことがわかったはずだ。ならば、コロナ後のインバウンドの復活は、個人旅行ではなく、団体旅行で再開すべきなのではないか。

 
 そこには、今まで我が国の旅行会社に蓄積された数々のノウハウが生きてくる。お題目ではない真の安心安全を、旅行者にも、そして旅行者を受け入れる観光地に住む地元の人々にも提供するために、旅行会社が今までのノウハウを結集して、団体旅行で実施すべきだと強く主張したい。 

 
 自国民に負荷がかかるインバウンドの復活を大多数の国民は求めていない。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

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