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【特集No.592】「観光ルネサンスの現場から」200回記念 地域づくりと文化観光とは

2021年10月1日
編集部:長谷川 貴人

2021年10月1日(金) 配信 

丁野 朗氏(観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所 顧問)に聞く

 2005年の2月21日号から本紙にて連載を開始した、観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問の丁野朗氏によるコラム「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~」が、前号(9月21日号)で連載回数200回を達成した。これを記念して、9月7日に丁野氏へのインタビューを行った。新たな旅の受け皿や仕組み、ビジネスモデルを構築しようとする「観光ルネサンス」の現場を追い掛けてきたなかで感じた、地域の文化観光の変化や今後の在り方について伺った。

【聞き手=後藤 文昭、構成=長谷川 貴人】

観光の究極の資源は文化財、保全と活用の好循環が必要

 ――200回の連載を重ねるなか、日本遺産制度の創設や文化財保護法改正など、文化財行政もさまざまな変化を遂げました。この間、地域や文化財行政の変化をどのように感じていますか。

 文化財を活用しながら保全していくことへの理解と取り組みが、前向きに進んできていると感じます。文化財を活用して稼ぎ、そこで得た資金で文化財を保全する。こうした好循環の創出に、行政が舵を切り始めたことが大きいです。いま地域活性化を進めるうえで、文化に光が当たり始めたというのは間違いないし大きな変化ですね。

 そのきっかけになったのは、2016(平成28)年度に政府が策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」。このなかで、日本が観光先進国となるため、「3つの視点」と「10の改革」が打ち出されました。その改革の1つとして、文化財に対する新たな施策と観光目標が制定されました。振り返ると、それが文化財を生かした観光施策の転換にもなったと感じます。

 もちろん、そのなかで地域の文化・伝統をストーリーとして認定する、文化庁の「日本遺産」制度が創設されたことも大きかった。ここから現在の文化観光につながります。行政が文化財の保全と活用の制度をつくり、民間が制度を生かし活用していくという官民連携のカタチが出てきました。

 また、昨年5月には、文化についての理解を深める観光を「文化観光」と定義し、地域における文化観光を推進するための拠点計画や、地域計画などを認定する「文化観光推進法」が施行されました。

 日本遺産と文化観光はともに、文化の活用に軸足がおかれています。文化(財)を活用するうえでは、観光が一番わかりやすい。そこから「文化を保全するためには活用が大切」という考え方が明確に出てきました。

 日本遺産と並行して、文化庁による市町村の文化財の保存・活用に関する基本的なアクション・プラン「文化財保存活用地域計画」の作成の支援も始まりました。地域社会全体で、未指定文化財も含めた地域の文化財を継続的に保存・活用していくことを目的としたものです。

 この策定の委員会に参加した際に、お寺の住職さんからお寺の維持の困難さを聞きました。重要文化財に指定されている由緒正しいお寺でも、行政からの補助金が少なく、残りは自己負担。その負担に四苦八苦しているといったお話でした。昔は檀家が多く、地域の皆さんが地域の文化財を保全するという仕組みがありました。それができなくなっているのが現状です。

 ――文化資源の維持については、各地域が抱える大きな課題です。

 この10年間で、文化財の破却スピードがものすごく早くなってきていると感じています。1980年代や90年代までは、文化と観光というテーマでさまざまな議論が重ねられました。しかし、もう議論を重ねている段階ではなく、そもそも文化財そのものが維持できない状況まできている。国としても活用しながら文化財を保全していく。つまり、保全と活用を好循環させることをやらざるを得なくなっています。

 また過去には、元文化庁長官の青柳正規氏が「文化財で稼ぐ」と発言されたことがありました。当時は、文化財を保全するために稼ぐとか活用することはあり得ないとの認識がありましたが、現在そういう時代になってきたということでしょう。……

【全文は、本紙1843号または10月7日(木)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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