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豪華バスツアーが好評、名鉄観光バス・加藤 信貴社長に聞く

加藤  信貴社長
加藤 信貴社長

 名古屋鉄道グループの貸切バス会社3社が合併し、2008年に発足した名鉄観光バス(加藤信貴社長、愛知県名古屋市)は、昨年、発足5周年を迎えた。同社では、5周年を記念し、最新鋭の安全装置やプラズマクラスターイオン発生機をはじめ、携帯電話の充電用コンセント、3基の大型液晶モニターなど快適装備を設置した〝おもてなし車両〟を中部地区で初めて導入した。今年は、「お客様満足からお客様感動へ」をスローガンに、車両などハードに加え、運転士やバスガイドなどソフトにも磨きをかけ、さらなるステップアップをはかる。加藤社長に話を聞いた。

【聞き手=取締役関西支社長・有島 誠、構成=市沢 美智子】

「お客様感動」を目指し、ハード、ソフトに磨きかける

 ――2013年を振り返って。

 私どもは、旅行業と貸切バス事業を一体運営していますが、取扱旅行商品の9割以上が国内のバス旅行です。2011年の東日本大震災と原発事故の発生直後は、中部地方のお客様の出控えが顕著となり、お客様が半減してしまいましたが、徐々に回復傾向が見え始め、ようやく震災前の状況に戻ってきたように感じます。

 昨年は、アベノミクス効果に世間が沸きましたが、バス旅行の状況を振り返ると、伊勢神宮や出雲大社の式年遷宮ブームが追い風になりました。とくに伊勢神宮のある伊勢志摩方面への客足は大きく伸びました。また、関東方面へのバス旅行も好調で、世界遺産登録された富士山や、東京スカイツリーの見学を盛り込んだツアーには多くのお客様にご利用いただきました。 

 ――利用者層の掘り起こしについて。

 当社のバス旅行をご利用いただくお客様は、約7割が60歳以上の方です。そこで、これまでにない利用者層を獲得すべく、若い女性を対象とした女性専用ツアーの「ひめ旅」や、健康志向のお客様向けに気軽にハイキングを満喫していただける「日帰りバスハイキング」を企画販売するなど、新しい利用者層の掘り起こしに注力しています。

 また、経済的にも余裕があるアクティブシニア向けに、3列シートの最上級車両「ゼウス」を使った5泊6日の豪華なバスツアーを企画販売しました。東北方面と九州方面へ1回ずつ企画し、由緒ある有名温泉地や秘湯に宿泊しながら、各地の特選料理が食べられるプランで、高額商品ながらもお客様に大変好評でした。当初は、お申込みをいただけるか心配していましたが、初回はほぼ満席、2回目は予約数を超過したため、急きょ3回目を追加したほどでした。予想以上にリピーターの方々が多く、お客様の期待も大きいことから、現在、ゼウスを利用した新しい企画を考えています。お客様にもご満足いただき、顧客単価も上がる新しい取り組みです。

 ――貸切バスでは新車投入などありますが。

 3つのバス会社が合併した当時、350両を超える車両は、仕様もカラーリングもさまざまな状況でした。今では車両数こそ280両となりましたが、約7割の車両を当社の象徴であるリボンデザインに統一でき、お客様にも名鉄観光バスを認知していただけるようになりました。私どもは、お客様に安心安全で快適なバスの旅を提供することをモットーとしており、以前からバス車内の快適性向上、高品質化に取り組んできました。バス旅行における観光バスは、非日常の旅をお楽しみいただく大きな要素の1つであり、単なる輸送手段に限ったものではないと強く思っています。

 そこで、より安全で快適な車両を開発するため、社内にプロジェクトチームを発足させ、半年から1年近くをかけて、お客様に安全で快適なバスの旅を楽しんでいただける車両を追求しました。そして誕生したのが“おもてなし車両”です。一見、55人乗りの通常タイプのバスですが、その中身は一歩先をいくスタンダード車両を目指したものです。

 機能の1つをご紹介しますと、専用コンバーターを装備しておりますので、パソコンやタブレットの画面を3基の大型液晶モニターに投影することができます。会社の研修旅行や親睦旅行でご利用の際でも、会議や研修を車内で済ませることができ、目的地での時間を思う存分楽しんでいただけます。液晶モニターは、従来では前後に大小1基ずつ装備していましたが、これを3基に増やしたことによって、後列のお客様も前列同様に間近で画面を見ていただけるようになりました。そのほかの快適装備として、昨年までにプラズマクラスターイオン発生機を203両の車両に搭載しました。細かい部分かもしれませんが、お客様に本当に快適に過ごしていただきたいという思いがあり、近いうちに全車に搭載したいと考えています。

おもてなし車両の液晶モニター
おもてなし車両の液晶モニター

 ――4月に愛知県で観光バスが逆走し、乗客がけがを負う事故がありました。御社の安全対策は。

 当該事故をはじめ、昨今は観光バス運転士の健康起因による事故が増加しており、私どもでも運転士の健康管理については細心の注意を払っています。専任の保健師を常勤させており、愛知・岐阜・三重の3県にある8カ所の営業所を巡回して、社員の健康状態を把握し、身体的な面だけでなく、精神的なケアも行っています。睡眠時無呼吸症候群の簡易検査も3年間で全運転士が受診するよう定期的に実施しており、要治療者には精密検査を受診させて治療につなげています。また、飲酒運転予防に関する対策にはとくに力を注いでおり、運転士全員に携帯型アルコール検知器を貸与し、出勤前にアルコール検査を行うよう指導しています。 

 ――この春から、国土交通省の貸切バスの新運賃制度が施行され、事実上の値上げとなります。旅行会社などに波紋が広がっていますが、影響はありますか。

 新運賃制度は、安全コストをプラスしたものであるため、実勢運賃との乖離(かいり)が生じるでしょうし、地域差も出てくると予想されます。長距離の行程では、バス運賃が上がることによって、バス離れが起きるのではないかという懸念もあります。私どもは、ルールに従った運営を継続していきますが、抜け道を見つけた者が得をする形になると、せっかくの制度が守られなくなるのではないかと心配しています。何より一番恐れていることは、観光バス以外の選択肢、すなわち電車や飛行機など、ほかの交通機関に移るお客様が出てくることです。今後のお客様の動きは不透明ですが、私どもとしては、観光バスの魅力付けを続けていきます。

 「お客様満足からお客様感動へ」をスローガンに唱え、どうすればより快適なバスの旅を満喫していただけるか、皆が知恵を出し合い、日々課題解決に取り組んでいます。新しいタイプの車両を導入し、バスガイドや運転士の接遇を含めた三位一体での商品価値を高め、お客様がほかの交通機関に離れていかないよう努力するしかないと考えています。 

 ――国は2020年の東京オリンピックの開催までに、外国人観光客を年間2千万人誘致することを目標としていますが、インバウンドの対策は。

 現在でも、北海道や立山黒部アルペンルートなどは、多くの外国人観光客が訪れていますが、今後は、バスが不足するのではないでしょうか。そうなると、私どもをはじめ、中部地区の観光バス事業者には商機が訪れると考えています。しかしながら海外にセールスに行きますと、単なる移動のためのバスと、観光バスとの違いをなかなか理解してもらえません。ですから、当社で企画販売しているドラゴンズパックのように、海外のお客様向けにプランニングした募集型企画旅行を開発したいと考えています。バスツアーは、海外のお客様にとって、最も手軽に日本を知っていただけるコンパクトな旅行形態だと考えています。

 多言語でのインフォメーションやオペレーター教育などの課題もありますが、外国人観光客2千万人誘致に向け、早急に整備していこうと思っています。

 ――2014年度の目標、観光バス会社としての今後の方針など。

 当社ではこれまで、募集型企画旅行と受注型企画旅行を合わせて年間60万人ほどのお客様にご利用いただいておりますが、今年は少し背伸びをして2%増の年間61万人の集客を目指しています。いずれは、観光バス会社として、東京ディズニーランドのようにお客様が感動できる世界にまで持っていきたいと夢を描いています。そのためには、運転士、バスガイド、車両の3つを磨き上げていかなければなりません。「またバスで行きたいね」という声をたくさん寄せていただけるようになることが大切だと考えています。 

 ――ありがとうございました。

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