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「観光革命」地球規模の構造的変化(227) 菅義偉政権と観光立国

2020年10月3日
編集部:木下 裕斗

2020年10月3日(土) 配信

 9月16日(水)召集の臨時国会で菅義偉自民党総裁が第99代首相に指名され、菅政権が正式に誕生した。ここで菅政権による観光立国政策の今後について予測を試みたい。

 菅首相は安倍政権の継承を主張している。第2次安倍政権が発足した2012年のインバウンドは836万人であったが、15年に1974万人、17年に2869万人、19年に3188万人と激増している。とくに16年に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では20年にインバウンド4千万人、消費額4兆円、30年にインバウンド6千万人、消費額15兆円、という数値目標を掲げた。

 コロナ禍の発生以前にはインバウンドを軸にした観光立国政策は成功を収めていた。しかし安倍首相の悲願は「憲法改正」であり、「観光立国」にはさほど熱意を注いでいなかった。コロナ禍以前に観光立国政策が成功を収めたのは、観光族議員を主導する自民党の二階俊博幹事長と政府の菅官房長官の功績が大であった。二階幹事長と菅長官とが絶妙の両輪として最大限に機能した結果、観光立国が大幅に進展した。

 コロナ禍発生後の「Go Toキャンペーン」でも、二階幹事長と菅長官の政治力が存分に発揮され、コロナ禍で苦境にあえぐ観光業、旅行業、宿泊業、イベント業、飲食業などの救済に貢献している。このたびの菅政権の誕生においても、二階幹事長は真っ先に菅氏を支援し、菅政権樹立の実質的な立役者となった。二階・菅コンビの紐帯が強固である限り、菅政権の観光立国政策は盤石なかたちでの進展が期待されている。すでに菅首相は観光を成長戦略の柱として重視することを表明している。

 しかし「Go Toトラベル」や「Go Toイート」キャンペーンを見る限りでは、JTBや「ぐるなび」などの特定企業の優遇が顕著であり、地方創生に本当に貢献できるかどうか定かではない。観光が地方創生に貢献するためには、日本各地で「民産官学の協働」による地域資源の持続可能な活用に基づく地域主導型観光の振興が必要不可欠である。菅首相はあくまでも「30年にインバウンド6千万人」達成を目指しているが、コロナ禍の世界的な収束は容易ではない。今後の菅政権による観光立国政策の行方に注視していきたい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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“「観光革命」地球規模の構造的変化(227) 菅義偉政権と観光立国” への 1 件のフィードバック

  1. 確かに、GoTOは大手旅行会社ありきで、中小は特に恩恵なしですね。
    GoToの予算枠に関しても、大手は制限なしに使えそうですが、中小に振り分けられる枠は微々たるもので、お客さんからもクレーム寸前です。

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