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観光庁、19年度予算に2・4倍の666億円 出国税歳入は500億円

2018年12月26日
編集部:平綿 裕一

2018年12月26日(水) 配信 

総計は711億600万円に

 

政府は2018年12月21日(金)に2019年度予算案を閣議決定した。観光庁関係予算は、復興枠を除き前年度から2・42倍の665億9600万円となった。プロモーションを強め、入国から観光地まで快適な移動を提供し、旅先での体験をより楽しめるようにしていく。19年度は来年1月7日から始まる国際観光旅客税(出国税)の税収が満年度化し、関係予算の約7割を超える485億円を計上した。東北の復興枠は同1%減の45億1千万円で、総計は同2・21倍の711億600万円となった。

 出国税は観光庁に一括計上したあと、関係省庁に移し換えて執行する。19年度の執行官庁分は計251億5千万円となり、出入国環境や国立公園を整えるほか、文化財活用などを進めていく。

 関係予算の柱は3つ。「受入環境整備」に278億6500万円、「情報発信と観光産業の基幹産業化」に148億7600万円、「体験滞在の満足度向上」に224億4100万円を充てる。2020年東京五輪を目前に、とくに外国人旅行者への対応事業が目立った。

 なお、19年度の定員要求では、外国人旅行者の受入促進のための体制整備を行う「国際観光部」と同部長を創設する。あわせてMICE・IR担当の参事官も創設する。

受入環境整備

 「受入環境整備」では、さまざまな段階でストレスなく旅を満喫できるよう取り組みを強める。「円滑な出入国の環境整備」に70億6300万円(執行官庁:法務省、出国税充当事業)、「円滑な通関等の環境整備」に30億1100万円(財務省、出国税)を充てる。空港・港湾周りだけでなく、2次交通の整備にも力を入れる。

 出入国環境では、これまで日本人だけだった顔認証ゲートを外国人旅行者の出国手続きにも活用する。通関環境は空港や港湾における税関検査に最先端技術を導入する。空港では電子申告ゲートの整備を進め、事前にアプリで申告すれば、検査なしで自動化ゲートを通れるようにする。港湾では、ボディススキャナなどを取り入れ、現行の検査による長蛇の列の解消をはかる。

 「FAST TRAVELの推進」には35億円(出国税)を充当する。チェックインから手荷物預入、保安検査場、搭乗まで自動化・顔認証化を進める。最終的にはパスポートやチケットを一度かざせば、そのあとは顔認証で通過できるようにしていく。

 「公共交通利用の革新等」には55億円(出国税)をつけた。外国人来訪者がとくに多い観光地までの、公共交通利用環境を刷新する。ニーズが高い「多言語対応」「無料Wi-Fi」「トイレ洋式化」「キャッシュレス決済対応」の4つをセットで支援(補助率2分の1)する。路線や事業者の事情を踏まえ、「非常時のスマートフォン等の充電環境の確保」「手ぶら観光」などの追加支援も行っていく。

 「『まちあるき』の満足度向上」に30億5千万円(出国税)を充てる。外国人旅行者がとくに多い観光地で「駅から観光スポットまでを面的・空間的に外国人旅行者への対応を強める」(同庁)という。

 具体的にはデジタルサイネージ整備や、ICT活用した多言語観光案内標識の一体的な整備、古民家などの歴史的資源を活用した観光まちづくりなどを集中的に支援する。事業区分で異なるが最大10分の8を補助する。

 一方、「公共交通利用の革新等」と「『まちあるき』の満足度向上」の対象地域は観光庁が指定する。地域要件は外国人旅行者数がとくに多く、またはその見込みがある観光地とする。海外の口コミサイトや人気ガイドブックでの掲載状況なども判断材料とする。

 さらに「外国人旅行者の評価がすでに高い観光地」「重要な文化財や国立公園が所在する地域」「国際的なイベント・会議の開催等により、外国人旅行者の来訪が多く見込まれる観光地」を含むものとする。

「情報発信と観光産業の基幹産業化」

 「情報発信と観光産業の基幹産業化」は148億7600万円を計上した。日本政府観光局(JNTO)のプロモーションや、観光産業の生産性向上、住宅宿泊事業(民泊)の普及などを実行する。

 「ICTの活用等による先進的な訪日プロモーションの実施」で51億4900万円(出国税)を充当し、デジタルマーケティングを強化する。JNTOデータベースにビッグデータを蓄積してプロモーションの見直しや改善をはかる。

 ポスト東京五輪も見据える。「戦略的な訪日プロモーションの実施」には90億4900万円を充て、国別戦略徹底のほか、既存重点20市場以外でJNTOの現地事務所の設置準備を進める。市場調査や先行したプロモーションなども行う。

 検討しているのは、ドバイやサウジアラビア、メキシコ、ブラジルなど、中東・中南米の「訪日インバウンドの成長が見込まれる市場」とした。訪日者数や経済成長率などを分析し、対象市場を詰めていく。将来的には重点市場へ組み込む可能性もあるという。

 基幹産業化については「観光産業の生産性向上推進事業」で99億円を投入する。生産性向上につながる取り組みの調査事業を行い、業界全体の底上げを目指す。人材不足に対しては1億6200万円を充てる。改正入管法施行により外国人労働者の拡大が見込まれるため、受入環境整備に向けHPなどのプラットフォームづくりを進める。 

 このほか、「健全な民泊サービスの普及」に1億9300万円を充当し、違法物件の排除を促進する。違法性が疑われる物件を抽出・一覧化して地方自治体などが確認できるようにする。「違法物件の特定ができ、しっかりと指導改善につながるシステムをつくる」(同庁)。現状、物件の住所などが掲載されていないため、物件の特定が困難といった状況を打破していく。

「体験滞在の満足度向上」

 「体験滞在の満足度向上」には224億4100万円を計上する。地域資源や観光資源を整えて、体験はもちろん滞在中の満足度を上げていく。

 「インフラを始めとした地域資源を活用したコンテンツの造成等」に13億円(出国税)を充当する。例えば巨大地下神殿と称される埼玉県の首都圏外郭放水路などを、これまで観光資源として注目されていなかったインフラを磨き上げる。とくに外国人旅行者向けのツアー造成を推進していく。

 「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」も13億円(出国税)を充てる。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用するなど、新たな観光コンテンツ、潜在的なコンテンツを開拓し育て上げる。 

 「DMO事業」に関しては、世界水準のDMO形成事業促進など、22億9600万円(出国税)を充当する。投資戦略やビジネスモデルを確立するための外部専門人材の登用に、1500万円を上限に補助などを行っていく。

 執行官庁で最も多い移し換えとなる100億円を充てて、「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」(文化庁、出国税)を進める。文化財の保護の観点ではなく、観光利用を念頭に観光コンテンツ化していく。新たな付加価値として、姫路城での千姫の生活体験など、文化財における“生きた歴史体験プログラム”を整えていく。

 「国立公園のインバウンドに向けた環境整備」には50億8千万円(環境省、出国税)を投入する。現在全国にある34の国立公園で、廃屋撤去や街並みの改善などをはかり、滞在環境の上質化をはかる。ナイトツアーを含む外国人旅行者向け野生動物ツアーも造成する。JNTOグローバルサイトには、国立公園のモデルルートや体験アクティビティを掲載し、予約までできるよう一元化する。

 なお、皇室秘蔵の美術品を収蔵する三の丸尚蔵館の整備に15億円(宮内庁、出国税)を計上した。これを合わせて出国税の歳入総額は500億円とするが、15億円は宮廷費として例外的に扱う。25年に整備が完了するまで、毎年度経費を計上する見通し。

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