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シニア旅行を考える、日本交通公社海旅動向シンポ

2013年9月11日
編集部

(左から)高橋寿夫氏、三浦展氏、黒須宏志氏

「おひとり様」消費が拡大

 日本交通公社が7月17日に東京都内で開いた第18回海外旅行動向シンポジウムの第2部で、団塊世代後のシニア旅行マーケティングを探り、シニア単身世帯による「おひとり様消費」の拡大などを紹介した。

 パネリストには、消費研究家の三浦展氏と三菱総合研究所事業予測情報センター主席研究員の高橋寿夫氏の2氏が登壇し、コーディネーターは、日本交通公社観光文化事業部主席研究員の黒須宏志氏が務めた。

 日本の人口減少・高齢化は進み、日本経済に与えるシニアの消費活動は大きな影響力を持つようになった。日本観光振興協会が実施した「国民の観光に関する動向調査」を見ると、2010年の国内宿泊観光旅行割合のトップは50―70代の53%。20代が13%、30代が18%、40代が16%と低調のなかシニア世代の好調は顕著で、市場全体を牽引していることが分かる。しかし、近年アクティブシニアをターゲットとした商品の売れ行きは当初の思惑通りとは言い難く、シニアの消費実態は掴みにくいと考えられていた。

 三菱総研が60代の男女に対して「今行っていること、今後やりたいこと」のアンケートを実施したところ、「今行っていること」は(1)温泉(2)パソコン(ゲーム以外)(3)観光・名所巡り(4)ウォーキング(5)読書――などがあげられ、「今後やりたいこと」も同じような回答が並んだ。シニアは、「既にやりたいことは実施しており、新しいことにまで手を伸ばさない」という実態が見てとれる結果となった。

 三浦氏は、アクティブシニアをミスリード(誤った解釈)していると指摘し、「これまで馬に触れたこともなかった人が、いきなり乗馬を始めたりしない」と話し、アクティブシニアに対するイメージを見直すように促した。

 総務省が11年度に実施した「家計調査」によると、1世帯あたりの所得は、高齢者(65歳以上)世帯が307・9万円、全世帯が549・6万円。貯蓄は、高齢者世帯が2257万円、全世帯が1664万円と、高齢者世帯には経済的なゆとりがあることが分かる。また、団塊世代の30%の人は貯蓄目的に旅行やレジャー・趣味をあげており、旅行への関心の高さも伺える。

 高橋氏は、「今のシニアは、モノを増やさない生活をしたいという考えなので、新たにモノを増やす(買う)ことではなく、旅行など体験することに価値を見出している」と話し、シニアの趣味や価値観にあわせた商品が必要と示唆した。

 東京在住の60代以上の単身者は10年に221万世帯となり、20年には245万世帯にまで拡大する見込み。三浦氏は、「一昔前までのシニア像は、夫婦2人で余生を過ごす姿が想定されていたが、今、夫婦で仲良く旅行している人は限られている。とくに女性は、夫よりも友達同士で旅行したいと思うだろう」と語り、業界がシニア向けに制作した「夫婦2人旅」のCMなどは、逆にネガティブキャンペーンになってしまったのではないかと自説を説いた。さらに、日本では未婚や離婚率が増加傾向ということもあり、今後「おひとり様」需要は活性化していくとの見解を示した。

 シニアのおひとり様消費の増加により、人とのつながりが希薄になったように感じるが、単身シニアは、2人以上世帯の人に比べ社交的スキルの高い人が多く、友人の数も多いことが特徴にあげられるなど、個人間のつながりは求めていることが分かる。また、60代単身世帯では男性に比べて女性のほうが趣味や教養のサークル、女子会などの参加率は高いという。

 将来的には、生涯未婚の女性有職者たちも増え、女性の単身シニアは自らが稼いだお金で、旅行やレジャーなどへの消費活動を行うと予測され、「女縁消費」はさらに加速していくと推測された。

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