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旅行市場は新時代に 〈ニュー東京観光自動車・畑 幸男 社長〉

2011年9月1日
編集部
ニュー東京観光自動車・畑 幸男 社長
ニュー東京観光自動車
畑 幸男 社長

 貸切バス事業者として50年以上の歴史を持ち、業界では名門の1つとして数えられるニュー東京観光自動車。しかし、東日本大震災や国の「バス事業のあり方検討会」での議論など、バス業界を取り巻く環境は大きく変化している。長年、観光業界に携わってきた同社の畑幸男社長に震災の影響や現状の課題、今後の展望などを聞いた。
【飯塚 小牧】

<夏は8割まで回復、年度末には収支調整可能>

 ――東日本大震災による影響は。

 震災直後の(3、4月)の2カ月間の東京地区における貸切バス稼働状況は、前年比較で半減するところまで下がった。しかし、5、6月と回復し、7月にはほぼ前年近くまで戻ってきている。

 大きな要因は風評被害で、当社も3月は昨年を上回る稼働率を見込んでいたが、最終的に5割減まで落ち込んだ。とくに、修学旅行は東京を避けるように行き先が変更になってしまい、それによる落ち込みが大きかった。北海道地区は東京を越えて大阪方面に行き、九州も、名古屋も関西にシフトした。主要取引先の大手旅行会社の一般団体や法人旅行も同様で、大きく前年を割った。

 ――今後の数字の見通しは。

 4月は5割、5月は6割、7月は7割まで戻し、この3カ月の実績は予算の約60%といったところだ。今後はというと、第1四半期のマイナスは大きいが、7、8、9月の受注が8割まで戻ってきたので、期末の来年3月までには受注の回復と経費削減で収支調整ができるだろう。

 数字的にはある程度調整ができるところまできたが、仕事の内容が完全に戻っているわけではない。法人旅行は極端に減ってしまい、インバウンドは、大手旅行会社の欧米からのお客様を多く扱っていたが、すべて消えてしまった。ではなぜ需要が戻ったかというと、首都圏発の旅行が動き出したことと、特別需要だ。県主催のボランティアツアーや企業のボランティアツアーなどさまざまな形があるが、こういった特需で伸ばしているのが実態だ。特需は恐らく、年度末までは続くとみている。来年度以降は変わってくると思うが、その変化に合わせてメインの法人旅行や募集旅行などが回復し、バランスは取れると睨んでいる。東京中心の旅行会社をみても、同じような動きをしているので、ここに来て少しほっとしているのが本音だ。

 しかし、福島原発に関わる風評被害で、福島県はもちろん周辺の栃木や茨城、千葉などに影響が及び、行き先が西へ変更になっている。東北から北関東はバスツアーの主要観光地で、取引先の受注もこの方面からのものが多いので、これらの地域が戻ってこないと、本当の意味で法人需要は戻ってこないと考えている。

 ――自社の旅行商品については。

 自社内のニュー東京トラベルで、ハイキングや登山をメインにした「ポニーツアー」を展開している。会員を1万人持っているので、この会員に対し、ダイレクトメールなどで新商品のPRを行っている。特化している商品なので、震災の影響は少なかった。現在は関東周辺の近距離商品だが、今後は航空機を使って北海道や九州に行くなどロング商品の展開を考えている。今後もこのハイキング、登山の路線で拡大していく。

 ――国土交通省の「バス事業のあり方検討会」での議論に対し貸切バス事業者としての考えは。

 これはもともと、総務省が国交省に出した貸切バスの安全確保対策についての勧告のなかで、貸切バス事業の収受運賃の実態と公示運賃の検証、旅行会社への指導や監督の強化などについて指摘したことから、設置された検討会だと理解している。加えて、従来から都市間輸送を行っていた高速乗合バスと新規の高速ツアーバス間での課題などを話し合っている。6月に中間報告がでたが、前半は高速バスについての議論で、貸切バスについては後半に話し合われるようだ。

 貸切バスは2000年に規制緩和され、自由化になった。この際、規制が大きく撤廃され、新規参入が進みバス会社は2倍に増えた。これにより、需給バランスが崩れ取扱単価はこの10年、右肩下がりだ。届出運賃という正式なルールはあるが、現状はあまりにもかけ離れている。規制緩和以前にライセンスを取った会社は固定費がかかり過ぎ、この市場プライスについていけずに経営が困難だ。震災でそれに拍車がかかる恐れもある。

 また、規制緩和後は車両問題での事故対策も必要となり、新規参入会社は規制が緩い分、安全マネージメントやコンプライアンス、内部統制という面での対処方は、厳しいと思う。つまり、この価格競争についていけるような経営は安全運行とは矛盾がある。

 これらのことから、検討会には、高速バスの議論と同様に、貸切バスの新規参入会社にも規制を強めるような新しいルールづくりを話し合ってほしいと要請している。東京地区では、「屋根付き車庫と車掌の義務付け、中古車は5年以内」の3つの規制と国交省の安全マネージメントを徹底してほしいという要望を検討会の参加者である日本バス協会に提出した。また、各地区からも要望が出ている。

 ――今後の業界や自社の展望について。

 貸切バス業界としては、先程の検討会への要請で需給バランスが取れ、単価を上げてもらい、旅行会社とウィンウィンの関係が築ければそれがベストだ。それは宿に対しても同じで、業界が一体となって取り組む必要がある。しかし、震災後の状況もあるので我われは安全運行を確保しつつ、今は経営努力をしていくほかにないかなとも思っている。

 旅行業界全体を考えても、旅行会社は航空機のチケットレスや宿の直販化の進行、大規模団体の減少などで、店舗数を減らすなど市場に合わせて従来型の全国ネットワークの組織を大きく変えてきている。この変革に合わせて、国も制度変更などをしてきているので、それにリンクして目まぐるしい変化がある。さらに、今年はそれに震災が加わり、インバウンドや首都圏を中心にした関東の旅行市場は過去に類を見ない変革期を迎えている。来年は需要も平常に戻るだろうが、旅行市場そのものは震災前に比較して、新時代を迎えると思う。当社としては、それに対応し得る貸切バス会社になっていかなければならない。

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