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「提言!これからの日本観光」観光経営大学院(MBA)に期待

2018年3月11日(日) 配信

観光経営大学院(MBA)が開設され心強い

 観光が抱える大きな課題は急速に発展する観光について学び、かつそれを支える人材の育成である。このほど観光庁の支援により国立大学(2校)にMBA(観光産業、地域経営専門大学院)が開設されることになったことは大変心強い。先般、その準備の一環として模擬授業が試行され観光庁、観光関係団体などから専門委員が出席した。筆者もそれを傍聴する機会を得たが、熱心な授業ぶりを見て、感慨深いものがあった。1日も早い開学を期待したいと思う。

 ところが模擬授業後、大学側から観光経営大学院開学への準備状況についての報告を聞き、やや気になることがあった。

 それは、開学予定の国立2大学の「観光(産業)」の捉え方にかなりの差があるのではないか。そしてそれが国の基幹産業として評価され期待されている「観光産業」の概念を曖昧なものにしてしまうのではないかという懸念である。

 設置準備を進めているA大学は、「観光経営科学コース」と名付けて、「観光」の名称を学科名で明示している。ところが、B大学の説明によると「本学は『観光』という学科名は用いない」と明言したうえ、「ホテル業、観光業…などさまざまな産業を包容するために、『ホスピタリティマネージメントプログラム』の名のもとに、大学院の講座を開設する」と言うのである。このように観光(産業)の名称の捉え方に差違があり、せっかく「観光(産業)」という概念が定着してきた矢先だけに、この報告には違和感を禁じ得なかった。ホテル業、観光業など…と列挙されるとホテル業と観光業とは並立する別の業種のようにも見える。「観光産業」の名のもとにさまざまな産業分類のなかに分かれて潜在していた観光(関連)業種をまとめて認知したのが「観光産業」ではなかったのか。

 しかも「ホスピタリティ」(産業)という名も気になる。ホスピタリティとはもてなし(の心)を意味する表現である。それは接遇を内容とするすべての産業がもつべき「理念」ともいうべき概念であり、学科名や産業分類に用いる名称としてはなじまないのではないかと思う。大学院設置国立2大学は日本を代表する有名大学であるだけに、その学科名がこのように異なることは観光(産業)とは何かについて多くの人に戸惑いを感じさせるのではないか、「観光産業」という新分野の存在にも疑問をもたれないかと心配である。

 観光のもつ文化、経済行動という役割を理解したうえで、この学科名は少なくとも同時発足の国立2大学については統一(観光という表現を用いて)できないものか。「観光」は人的交流を促進する文化活動であり、地域経済を活性化する経済行動であり、ホスピタリティはその推進理念であることを念頭におき、新発足の大学院の学科名も考えてほしいと思う。新設のかつ待望の大学院にとって「観光」の名はまさにたかが「名前」ではなくされど「名前」なのである。

コラムニスト紹介

須田 寛
日本商工会議所観光委員会共同委員長
須田 寬 氏
 
 
 
 
 
 

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