津田令子の「味のある街」「ランチコース」――丸の内ホテル(東京都千代田区)
2026年10月11日(日) 配信

東京駅丸の内北口のすぐそばにありながら、少しだけ街の喧騒から離れたような時間が流れる老舗の丸ノ内ホテル。
今日、丸の内の街歩きの仕事で立ち寄った。丸ノ内ホテルの歴史は古い。開業は1924(大正13)年。前年の関東大震災では、建設中の建物も被災したという。それでも翌年10月、東京駅前にホテルは誕生した。戦後は連合国軍に接収され、イギリス連邦軍将校の宿舎として使われた時代もある。その後、高度経済成長、丸の内の再開発と、東京の変化をすぐそばで見続けてきた。
2004年、東京駅丸の内北口にほど近い現在の場所へ移転。そして24年、開業100周年を迎えた。百年。そう聞くと少し構えてしまうけれど、実際にホテルへ入ってみると、いい意味で気取りがない。
窓の向こうには東京駅。行き交う電車や人の流れを眺めていると、ここが東京の真ん中だということを改めて思う。それなのに、ホテルの中には少しゆっくりした時間が流れている。
今日いただいたのは4850円のメニュー。なかでも印象に残ったのが、ハンバーグだった。みんなの前に料理が届いた。ナイフを入れる。ひと口食べる。おいしい。難しい説明はいらない。高級ホテルの料理なのに、どこか懐かしい。当たり前だけど、我が家で作るハンバーグとはちゃんと違う。その「ちゃんと違う」が、ホテルで食事をする楽しさなのだと思う。
ホテルというと、泊まる場所だと思いがちだけれど、こうして街歩きの途中で立ち寄って食事をするのもいい。少し疲れた足を休め、窓の外を眺めながら、その街が歩んできた時間に思いを馳せる。そんな過ごし方ができるのも丸の内という街の面白さかもしれない。
丸の内の景色も、百年前とはすっかり変わった。それでも、この街には長い時間を抱えながら、今も普通に息をしている場所がある。丸ノ内ホテルも、そのひとつ。百年の歴史を頭で味わうより、おいしいハンバーグを食べながら、「ああ、このホテル、いいな」と思う。そんな出会い方のほうが、私は好きだ。
(トラベルキャスター)






