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第12回「ピンクリボンのお宿」シンポ in 白浜 会場・SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE (和歌山県・白浜町)

2026年7月5日
編集部:長谷川 貴人

2025年7月5日(日) 配信

ピンクリボン活動に対する参加者からの質問に向き合った

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将、事務局=旅行新聞新社)は5月25日、和歌山県・白浜温泉のSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREで「第12回ピンクリボンのお宿シンポジウムin白浜」を開いた。キャンサー・ソリューションズ社長の桜井なおみさんの基調講演や、白浜温泉旅館協同組合理事長の沼田久博氏の団体会員報告、企業会員のGSIクレオスマテリアル部営業第一課の後藤忠司氏の講演などが行われた。

初めてオンライン配信も、旅館、団体など約50人参加

畠山ひで子会長

 第12回「ピンクリボンのお宿シンポジウムin白浜」には、同ネットワーク会員の旅館・企業・団体をはじめ、和歌山県内の旅館や団体など約50人が参加し、基調講演や会員による活動報告に熱心に耳を傾けた。

 今回は、初めて会場開催とオンライン配信によるハイブリット形式で行われた。

 畠会長は、乳がんの手術や治療を受けて回復の道を辿りながらも、術後の痕などを気にして旅を諦めてしまう当人や家族たちに「以前と変わらず温泉を楽しんでもらおうと発足した。設立から14年目を迎え、設立当初の50会員から現在では120会員を超えた」と、会設立の経緯や現況を振り返った。

 会活動として「毎年会員施設を取り上げた冊子を10月のピンクリボン月間に合わせて発行し、会員や全国の病院などを通じて乳がん経験者に無料で配布している。ホームページ上でも冊子のダウンロードができるようになった」と報告。乳がんへの理解と、早期受診の重要性を呼び掛けた。

 地元の来賓として、和歌山県旅館ホテル生活衛生同業組合の利光伸彦理事長の代理である古川涇二氏、白浜温泉土地連盟の藤田正夫会長、白浜温泉旅館協同組合の沼田久博理事長が出席した。

代理出席した古川涇二氏

 古川氏は会場ホテルの取締役営業本部長を務めており、冒頭に会場として選定されたことに感謝と歓迎の言葉を述べ、利光理事長からのメッセージを代読した。

 利光理事長は、和歌山の温泉に癒されて再び生きる力を取り戻したと伝えられている「小栗判官と照手姫」の物語に触れ、「ピンクリボン活動と和歌山の温泉文化は共通するものがあるように感じている。無理をさせるのではなく、人の気持ちに寄り添う、安心して過ごせる場所をつくる。その積み重ねこそが本当のおもてなし」と述べ、同会の活動を応援した。

藤田正夫会長

 藤田会長は「白浜温泉は日本3古湯の一つ。日本書記や万葉集にも記され、657(斉明3)年に有間皇子が訪問した」と話し、その後は斉明天皇など多くの人が癒しに訪れた古い歴史を持つ温泉地であると説明した。今回、会場まで足を運んだ会員に向けて「白浜の美味しいものと温泉をしっかり楽しんでいただいて日ごろの疲れを癒し、今後の活動のエネルギーにしてほしい」とエールを送った。

12回目のシンポ盛況、熱帯びる啓発と普及

 同会の会員数は、旅館が104軒、旅館組合など団体が5会員、企業が14社の合計123会員。

展示ブース(GSIクレオス)

 シンポジウムの会場には、会員企業がブースを設置し、ウィッグや入浴着、人工乳房などの製品を展示し、直接手に取って熱心に説明を聞く参加者の姿が見られた。

 基調講演では、キャンサー・ソリューションズ社長の桜井なおみさんが「アピアランスケアってなんですか?~心地良い居場所づくりへのヒント~」をテーマに講演。団体会員報告では、白浜温泉旅館協同組合理事長の沼田久博さんが「白浜温泉の現状について」と題して紹介した。

 最後に、加盟企業のGSIクレオスマテリアル部営業1課の後藤忠司さんが「入浴着・イノベーション~誰もがオシャレを楽しめる世界へ~」と題し、講演を行った。

【基調講演 「アピアランスケアってなんですか? ~心地良い居場所づくりへのヒント~」 桜井 なおみさん(キャンサー・ソリューションズ 代表取締役社長)】がん不安を外見ケアで軽減へ、“患者ではなく、私に戻れた”

桜井なおみさん

 日本におけるがん患者本人への病名告知率は、1989年で14%とわずかでした。まずは家族に告知し、患者本人へ伝えるか確認していた時代です。それから告知率は少しずつ上がっていき、2006年には65.7%と、本人へ告知する方向に進んでいきました。

 そうして何が起きてきたかというと、昔ならば家族が本人にどう伝えようか悩んでいたのが、今は本人が家族や職場の同僚にどうやって伝えたら良いのか、矢印の向きが逆転してしまいました。

 がんと告知され、治療や検査のために2週間に一度ほどは病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境にあるかという調査に対し、「そう思う」と答えた人の割合が13年では26.1%と4人に1人でした。それから支援の環境や相談窓口が進展していきましたが、23年で45.4%と半分にも達しておらず、社会生活への影響に不安を抱いているのが現状です。

 そこで、がん患者の不安を軽減するアピアランス(外見)ケアの役割が重要となります。

 看護師さんには医学的な補助によるアピアランスケアが求められています。例えば肝臓が悪くて顔色に出る場合、お化粧だけでは隠し切れず、まずは肝臓の数値を処置していかないと顔色が良くならないからです。

 また、家族や周りの人たちは何ができるか、顔色は変わらなくても部位や首回りの色、洋服の色などを少し変えるだけで人の印象が大きく変わります。抗がん剤治療によって脱毛すると、目の周りや顔全体の目立つ場所の印象を変えてしまいますが、眼鏡を掛けるだけで大きくイメージを変えられます。患者に一番似合うものを購入したり、がん相談支援センターで社会保障や補助金、ケア帽子を相談したり、それぞれに合ったアピアランスケアがあるのです。

 そのため、病院から適切な情報を提供してほしいという需要が高いのですが、研究の少なさや難しさで、医療者も患者も正しい情報に到達しにくい状況です。研究が進むがんセンターや自治体では、がん患者や医療者向けのリーフレットや手引きを制作しているので参考にしてほしいです。

 一方で、外見の変化により、がん患者に近づいていると認めたくない気持ちも患者にはあります。外見の変化に対し、行動抑制に影響するのかという調査結果では、外見が変わって気になったと全体の約6割が回答しました。そして、外出機会が減った、人に会うのが億劫になった、仕事や学校を休んだなど、「外見を他人から気づかれたくない」「周りから可哀そうと思われたくない」といった心理的影響が行動に出てきます。

 とくに女性は、女性らしさの価値観にすごく縛られており、がんに対して身体が傷ついたり、失ったりすることに、とても大きな喪失感を感じているように見えます。

 一方、男性はがんに罹って身体がひ弱になり、体重が減少して痩せていくことにとても不安を感じているようです。とくに、健康や身体づくりの意識が高い人がとても落ち込む傾向にあります。

 “メイクをしたら患者ではなく、私に戻れた”という声があります。外見のケアが自分を取り戻すための大きなきっかけになり、自分自身を取り戻すことと同義であると言われているのです。

 がん治療に関する外見変化に対して、がん患者を特別視するようなケアは必要ではありません。ただし、病院と地域で、必要なケアや物品を適切に提供できるような連携をお願いしたいです。病院内でのアピアランスケアに関しては、現状では相談場所の整備が7割程度で、誰一人取り残されないための仕組みづくりが重要となります。

 アピアランスケアにより、ポジティブな行動を促す一方、「病気を意識させられた」「出費がかさんで大変だった」「ケアに時間とられて大変」など、ネガティブな感情が生じていることを意識することも大切です。外見への関心が高い患者は情報過多に陥りがちですが、普段通りの接し方がありがたいのです。

 大切なのは、患者自身が大切にしていることや、心地良いと思っていることを失わせないことです。温泉好きだった人が、温泉に行きたくても行けなくなったということがないように、ピンクリボンの取り組みを館内の看板でしっかりと掲げていただき、今後はホームページや冊子の工夫なども必要なのかもしれないと考えています。

【団体会員報告 沼田 久博さん(白浜温泉旅館協同組合理事長)】健康と癒しの温泉地に、元気を取り戻す場所を目指す

沼田久博理事長

 白浜温泉旅館協同組合は、地元医療機関の医師の紹介からピンクリボンのお宿ネットワークを知り、その活動に賛同し、2022年に団体会員として加盟した。白浜温泉は、兵庫県の有馬温泉、愛媛県の道後温泉と並ぶ日本3古湯の1つに数えられ、歴史の始まりは約1350年前からと言われる由緒ある名湯だ。

 同組合の沼田久博理事長は冒頭、白浜町を代表する観光資源として、白い砂浜が広がる白良浜のほか、近年人気が高い円月島、風光明媚な景観を堪能できる千畳敷や三段壁などを紹介。動物とふれあいを楽しめるテーマパークのアドベンチャーワールドや、町内の一部が登録されている世界遺産・熊野古道と吉野熊野国立公園もあり、魅力あふれる温泉地であることをアピールした。

 同組合の宿泊客動態調査によると、2019年まで団体による宿泊客数が多く、OTA(オンライン旅行会社)を通じて家族連れやグループ客などの宿泊も増え始めていた時期だったが、20年のコロナ禍で宿泊客全体が大幅に減少。22年に国内旅行の需要が復活したことで、徐々に宿泊客数が回復し、コロナ前の数値まで現時点では戻っていないが、回復に向かっている現状を説明した。

 コロナ禍を経て、温泉のほか、海や山などの美しい自然を活用し、健康と癒しの温泉地として心身の健康をテーマにした旅行体験の充実に力を入れている白浜温泉。その時期に、ピンクリボンのお宿ネットワークの活動を知り、活動に協力したいと加盟を決めた。

 現在は温泉による心身のリフレッシュやヘルシーな食事など、女性をはじめ家族で安心して過ごすことができる環境づくりの取り組みに注力。そして、親子三代の家族でも楽しんでもらえるような温泉地を目指しているとの考えを話した。

 近年は宿泊客の約8割が1泊2食付きプランを利用し、1泊朝食付きや素泊まりのプランでの利用も増えていると報告。さまざまな旅行形態の旅行客も楽しめるように、食事なしプランも積極的に取り入れ、白浜温泉を自由に楽しめるように、町の中で食事をしてもらうことも目指していきたいと語った。そのため、「町内の宿泊施設や飲食店、観光施設、そして地元の住民と一体となって、お客様をおもてなしすることをもっと活動的にやっていきたい」と今後の目標を掲げた。

 沼田理事長は最後に、「白浜温泉はただ泊まる場所ではなく、心と身体を癒し、明日への元気を取り戻す場所。女性にも愛される温泉地として進化していくことを皆と共有し、豊かな人生を送っていただけるような観光地を目指していきたい」と力を込めた。

【講演 後藤 忠司さん(GSIクレオスマテリアル部営業1課)】国内初の使い切り入浴着、普及と認知度向上を課題に

後藤忠司さん

 GSIクレオスは、乳がん手術後に入浴をためらってしまう人をケアし、一人でも多くの人が入浴(温泉)施設で楽しめるように企画・開発した商品の製造、販売を手掛けている。今回、畿央大学の村田浩子教授と共同開発した国内初の使い切りの入浴着「バスタイムトップス」のほか、普及と認知度向上に向けた活動について話した。

 畿央大学が2016年に行ったアンケート調査によると、乳がん術後の女性に対する予備調査では、約半数の人が「温泉に行きたくても行けない経験をした」と回答。市販されている入浴着も半数の人が「知らない」と報告した。20年に実施したアンケート調査でも、入浴着の認知度は術後女性、施設とも低い結果だったが、温泉に行きたい人が引き続き多数いることもわかり、潜在需要の掘り起こしに向けた普及活動を進めている。

 一方で、同社の後藤忠司さんは「入浴着を着用している人=手術された人」という偏見の見方があると指摘。入浴を楽しむグッズとして入浴着が普及することで、「本来必要とする人が施設側に着用できるか聞くことなく、オシャレな入浴スタイルの一つとして受け入れられる風土を醸成したい」と使命を掲げた。

 バスタイムトップスはトップスに加え、ボトムスやワンピース型を展開。背中がⅤ字カットで体全体が洗いやすく、生地が伸びる素材で着脱しやすいうえ、表面が撥水性不織布のため湯切れしやすいのが特徴と挙げた。また、湯の中で生地が浮かびにくく、フロント部分のギャザー加工が左右のバランスを保つように設計されている。

 伸縮性生地の3層構造となり、外側から撥水性不織布、吸水紙、親水性不織布を採用。3層構造による断熱性に優れており、寒い外気を肌に通さず、肌側の熱を逃がさないような調温効果があると説明した。

 販売場所は、インターネット通販やピンクリボンのお宿ネットワーク会員施設の売店など。売上の一部を、日本対がん協会が設ける「ほほえみ基金」に寄付するなど、ピンクリボン運動の活動を支援している。

 また、入浴着普及委員会が主催する温浴イベント「入浴着を着てお風呂に入ろう会」に後援。温浴施設の協力のもと、一般の利用客とともに入浴着を着用して風呂を楽しむイベントを開き、入浴着の認知と理解を広げる活動に取り組んでいる。

 今後は近年のインバウンド需要の拡大から、入浴着が着用できる入浴施設が増えていくと、LGBTの人やタトゥーがある人など、入浴施設などに今まで行きにくかった人も人目を気にせずに入浴できることが期待できると述べた。同社はポンチョ型デザインの入浴着も展開しており、男女兼用の入浴着普及での周知拡大など、入浴施設に行きやすくなる環境づくりにも力を入れていく。

 後藤さんは「入浴着への理解が深まり、誰もが気兼ねなく温泉や銭湯を楽しめる社会に、当社商品がそのお役に立てることを切に願います」と、入浴着の周知と理解の協力を呼び掛けた。

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