test

〈旅行新聞4月1日号コラム〉――旅や生活 年齢や経験の度合いで習慣も変わりゆく

2026年4月1日
編集部:増田 剛

2026年4月1日(水) 配信

 リビングの窓辺に太陽の日差しが差し込んでくる。ハイバックのソファに座って、睡魔に負けるのが休日の贅沢な楽しみの一つである。足元には我が家に来て6年目となる家族の大切な一員、ヒガシヘルマンリクガメの「亀吉」クンが陽だまり中でいつの間にか寄り添ってくる。

 リクガメを飼い始めてから生活のリズムがゆっくりと流れるようになった。仕事から帰ると古代生物的なフォルムの丸い甲羅を撫でながら、床に寝そべって静かに読書をするのが習慣となった。

 最近はディケンズの「二都物語」や、バルザックの「ゴリオ爺さん」、壺井栄の「二十四の瞳」、林芙美子の「放浪記」、トーマス・マンの「魔の山」などを丁寧に読んだ。

 文字ばかりが印刷されている紙のページをめくるごとに、古典文学の香気漂う深い世界へ没入していく。使い慣れた白い琺瑯のカップに入った、冷めた苦いコーヒーを飲みながらリクガメの横で「時空を超える旅」を楽しむ夜は、ささくれがちな心も、知らず識らずのうちに満ち足りた気分になれる。

 他人の習慣を聞くのは面白い。以前、台湾関係の女性が「台湾に行く飛行機の中では映画を一本観ることが習慣になっている」と言うのを聞いて、当時の私は「海外に行く途中にあまり映画を観る気分にはならないな」と思っていたが、最近は商用ではない機内では、映画を観るのが習慣となった。

 数時間に及ぶフライト中に観る映画を選ぶのも楽しい。客室乗務員や機長のアナウンスで中断することは避けられないが、機内食を食べながら集中して観ることができる。映画が終わるころに目的地に到着するのも悪くない、と思うようになった。

 先日は那覇行きの日本航空(JAL)の機内で、往路は木村拓哉主演の「TOKYOタクシー」、復路は短編映画「松坂さん」を選んだ。どちらの作品も楽しめた。話は逸れるが、山小屋の弁当や、雲上の機内食など厳しいサービス条件の中で提供される食事が、なぜか美味しく感じる派である。

 年齢や経験の度合いによって興味や関心、生活習慣や旅の習慣も変わりゆくのだなと、感じることが多くなった。自分でも驚くのだが、最近は小鳥が可愛くて仕方がない。花鳥風月という言葉があるが、ついに人生の最終段階とも言われる「小鳥を愛でる」境地まで来てしまった。「末期の眼」に近づきつつあるということだろうか。

 昨年、韓国の清州に1人旅をしたとき、古いホテルでとくにすることもなかったので、市場で買ったキンパとチャミスルを飲みながらテレビを見ていた。韓国は面白いドキュメンタリーものが多いので、ホテルでテレビを見るのも楽しみの一つだ。

 すると、雀に懐かれた中年の男の生活を克明に描いた番組に指が止まった。自営業の男の仕事場に住む小さな雀は男から離れない。男が道路に面したベンチに座ると、雀は男の膝の上で遊ぶ。それを観ながら「この世で一番素敵な男とは、雀に好かれる男ではないか」と身を乗り出して感じ入ったものだった。

 休みの日には単車に乗る。これも習慣だ。そして、この単車で日本中を旅したいとの想いもあって、体の機能を一つずつ点検し、最低限のメンテナンスをするようになった。我ながら悪い習慣ではないな、と思っている。

(編集長・増田 剛)

 

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。