「観光革命」地球規模の構造的変化(291) 「宝さがし」ノススメ
2026年2月15日(日) 配信
通常国会冒頭での衆院解散、2月8日(日)の衆院選投開票になった。高市内閣は総額122兆円と過去最大の当初予算案を閣議決定済。内憂外患の日本は解決が容易ではない数多くの課題を抱えているが、劣化した政界は解決策を見出せないまま、当てずっぽうにカネをばら撒いてごまかしを繰り返している。
一方、観光庁は「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」の告知を行っている。要するにオーバーツーリズム対策の一環としてインバウンド需要の地方分散を促進させるための事業だ。具体的な事業イメージは、①地域資源を活かした観光コンテンツの造成②品質を高めた高単価な観光コンテンツの造成③ガストロノミー分野における観光コンテンツの造成④コンテンツとガイドの一体的な質的向上――などである。
国が上位下達的に事業を告知し、御用コンサルが地方の諸団体を指導して補助金をばら撒き、観光立国推進をはかるという在り方で本当により良き未来が生じるのであろうか。
私は岩手県二戸市で行われてきた地域住民による「宝さがし(地域固有の文化の再発見・再生・創造)」事業を高く評価している。二戸市では1992年に市民30人と市職員30人から成る「楽しく美しいまちづくり委員会」が組織され、宝さがし活動が始まった。
二戸市では6つの宝が重視された。①自然の宝②生活環境の宝③歴史文化の宝④産業の宝⑤名人の宝⑥要望の宝(町をより良くしたい未来へのエネルギー)――。2年ごとに委員を入れ替えながら議論を重ね、5期目から宝さがしをまちづくりに活用する方策として「宝の五段階活用」が提唱された。①宝を探す②宝を磨く③宝を誇る④宝を伝える⑤宝を興す(宝を産業に結びつける)――である。
5段階活用による市民との協働を円滑化するため、二戸市は2006年に「宝を生かしたまちづくり条例」を制定。さらに八幡平市と連携して「奥南部漆物語:安比川流域に受け継がれる伝統技術」というストーリーで日本遺産に申請し20年に認定された。
二戸市の宝さがし事業の知恵袋になったのは真板昭夫氏(北大客員教授)であった。詳しくは、真板昭夫著「地域の誇りで飯を食う!:何もないまちを変えた奇跡の物語」(旬報社)を参照いただきたい。

北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。



