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上野村・黒澤八郎村長インタビュー 癒しの「うえのテロワール」に包まれて

2025年12月22日
編集部:増田 剛

2025年12月22日(月) 配信

黒澤八郎村長

 群馬県の最西南端に位置する上野村(黒澤八郎村長)は人口約1000人の小さな村だが、林業再生のためのエネルギー利用を中心とした循環型社会の推進や、幻の豚「いのぶた」のブランド化、近年は冬季の「ハコスチ」釣りや、上野スカイブリッジのイルミネーションなどが人気を集め、年間を通して多くの人が訪れている。黒澤村長は「何となく居心地がいい」と言われる上野村の土地を「うえのテロワール」と表現し、包まれるような感覚を味わってほしいと語る。

 ――2025年の観光動向について。

 夏は多くの人が訪れ、秋も紅葉が美しく、観光入込数は前年と比べ5%ほど増えています。不二洞のリニューアルをはじめ、施設整備とサービスの向上に努めつつ、取り組んでいる新しい試みが浸透して上野村の認知度も上がってきているのではないかと思います。

 「冬にいかに人を呼び込むか」が大きな課題でしたが、今は管理釣り場でマスを改良した「ハコスチ」釣りが人気です。冬に渓流釣りができる場所が少ないため、村の漁業協同組合が管理釣り場を開設したことが大ヒットとなり、北海道や海外などから来られる方も多くいます。

 管理釣り場の近くにあるラーメン店はUターン者が経営しており、上野村の名物いのぶたを上手く使ったメニューが人気を集め、相乗効果を生んでいます。

 ――父親がイノシシ、母親がブタの上野村名物「極いのぶた」のブランド化へ。

 村の直営で飼育しているいのぶたは、まずは従1・5倍となる年間300頭の生産を目指していましたが、2025年にほぼ達成しました。「幻の豚とも言われるいのぶたを食べたい」と上野村を訪れる人が増えていますが、頭数に限りがあるため村内需要を優先して確実に応えられるように確保しています。

 ――今後の増産計画は。

 次は年間600頭を目指して生産施設を拡充します。畜舎の増築だけではなく、生産環境の改善も含め大切な特産品を守っていきます。村内に専門店「いのぶたショップ」(仮称)の開業も計画しており、ネームバリューを高めていきたい。生産目標の600頭規模になると村外への営業も可能となり、大きな利益を生む事業となります。村内の雇用を生み、若い人材を育成していくことも大事なことだと考えています。

 ――林業再生のためのエネルギー利用を中心とした循環型社会の推進について。

 村内で6割を占める広葉樹を木質バイオマスエネルギーの素材として利用を広げ、村の最大の資源である木材を無駄なく使い切ることが理想です。現在生産している木質ペレットは温泉の加温、中学校や介護福祉施設の暖房、農業用ハウスのボイラー、一般家庭のペレットストーブなどへの燃焼利用として活用されています。また、上野村のペレット利用の最大の特徴は、ペレットをガス化して行う発電です。 

 発電した電力はきのこセンターで自家利用していますが、このような木質バイオマスによるエネルギーの地産は、林業の再生、林業の持続化のための重要な対策の一つです。

 林業従事者が安定して仕事を行っていくためには、住宅材としての木材利用とともに、未利用材と言われている原木の活用も工夫して、木材利用の「出口」をしっかりと作り、維持しなければなりません。

 それと並行して、林業従事者をいかに確保し、育てていくか、林業事業体や森林組合などと連携して「山元」の人材育成にもチャレンジしています。

 ――黒澤村長は、森林セラピー基地全国ネットワーク会議の会長に就任されました。

 森林セラピーなどの森林レクリエーションを広げ、上野村の空間を楽しんでいただく取り組みも積極的に進めています。企業研修やメンタルヘルスの場所として誘客活動にも注力しています。

新名所上野スカイブリッジのイルミネーション

 また、大つり橋「上野スカイブリッジ」を90万球のイルミネーションで彩ったイベントは4年目になります。エリア内の「まほーばの森」にはグランピング施設やコテージもあるのですが、イルミネーションが冬の新しい魅力となって宿泊にもつながっていくことを期待しています。

 ――群馬県が「リトリートの聖地化」を進めています。

 上野村はリトリートに適した村だと感じており、さまざまなメニューもそろえていく考えです。

 上野村は「なんとなく居心地がいい」と話される人が多い。ゆったりとできる空間の魅力を言葉で表現するのは難しいですが、美味しいワインが生まれる風土を表す「テロワール」という言葉がぴったり合うと思い、「うえのテロワール」というキャッチフレーズを作りました。

 その土地の自然環境と、人々の暮らし、過ぎてきた時間が創り出し、醸し出す魅力を表す、深い意味が込められています。

 人々の生業の蓄積がどこかに感じられること、そして肝心なのは、その暮らしが息づいていること、そうした山あいの空間で「ゆったりと過ごす」という体験が訪れる人の癒しになるのだろうと思っています。

 「うえのテロワール」に包まれて、グルメやさまざまな体験を楽しみ、「うえのタイム」とも言われる、ゆったりと過ぎる時間の中で「癒し」を体感してほしいと思います。

 移住・定住事業では、新たに移住体験ハウスを整えます。実際に上野村に住んでみていただき、集落の雰囲気などを味わっていただく「お試し移住」を始めます。このようなことをはじめ、移住を考えている皆さんを、そのタイミングから丁寧にサポートしていく考えでいます。

 ――ありがとうございました。

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