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幻の豚「イノブタ」を村外消費へ 群馬県・上野村 の黒澤八郎村長に聞く

2023年6月2日
編集部:増田 剛

2023年6月2日(金) 配信

上野村の黒澤八郎村長

 群馬県・上野村(黒澤八郎村長)は人口1000人余りの小さな村だ。上野村の特産品「猪豚」を県内の四万温泉にある旅館やレストランでの提供を始め、「群馬のイノブタ」として知名度アップとブランド化を目指す。また、環境省が選定する「脱炭素先行地域」にも選定され、「環境配慮型の『脱炭素の村』」として、時代の最先端を進む。コロナ前に、「“適疎”の村」という新たな価値観を提示した上野村がさらに進化している。黒澤村長に詳しく聞いた。

 

 

 上野村の重点事業に、雄のイノシシと雌のブタを一代交配で掛け合わせる「猪豚事業」がある。

猪豚ウリ坊

 

 このイノブタの生産量と消費量を上げていこうと、「年間200頭幻の豚『猪豚』を活用した猪豚ツーリズム事業」が観光庁の2022年度「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出」補助事業に採択され、上野村産業情報センターが主体となって新商品の開発や、近隣エリアとの連携による流通・販路の開拓にも取り組んでいる。

 

 上野村では1968年から、イノブタの生産がスタートした。最盛期は農家を中心に年間400~450頭ほどの生産があったが、次第に高齢化が進み後継者がいなくなり、現在は村営の「いのぶたセンター」のみで維持している。

 

 黒澤村長は「近年、イノブタは、主に観光客向けにほぼ村内で消費されていましたが、コロナ禍となり上野村の観光需要が大きく落ち込みました。これを回復させるために、観光庁の補助事業を活用して、自己負担を小さく、さまざまな企画で上野村のイノブタの魅力を伝えていこうと考えました」と語る。観光産業も11~2月までは閑散期となるため、「イノブタ」というグルメの目玉を創り出すことで、冬期の集客を高めるのも狙いの1つだった。

 

人気の「いのぶたロース重」(道の駅上野レストラン)
上野村産業情報センターの瀧澤延匡専務理事

 「家族で上野村に訪れていただきたい」との思いから、子供とお出掛け情報サイト「いこーよ」と連携してプロモーションを展開した。加えて、農協(JA)と組んでイノブタの角煮や、春巻き、モツ煮など新しい商品企画づくりにも着手した。

 

 幻の豚「イノブタ」を思う存分堪能するモニターツアーやさまざまイベントも実施した。上野村産業情報センターの瀧澤延匡専務理事は、「子供たちからも『イノブタ美味しい』との声をいただき、大変好評でした」と話す。

 

 同じ群馬県内の四万温泉にある温泉旅館や飲食店でもイノブタを使用した料理を提供している。これは、四万温泉出身で、群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」所長などを歴任した宮﨑信雄氏と、黒澤村長との長年のつながりが大きい。

 

 「群馬県には上州牛という素晴らしいブランド牛がありますが、上野村のイノブタは、一代交配で年間約200頭しか生産量がない希少性や、肉質の評価も高いため、ブランド価値は高いと思う。宿泊施設やレストランでの肉料理の主役の1つになり得ると自負しています」と黒澤村長は話す。

 

 そのうえで、「上野村のイノブタ」を、「群馬のイノブタ」としてアピールしていく方針を決断。まずはイノブタという存在をより広く知ってもらうことが大事との考えが根底にある。

 

 イノブタの生産は少しずつ増えているという。「軽井沢エリアへの提供も始まり、九州など遠方の個人経営のレストランなどからも問い合わせが多く来ています」。引き合いも増え、実績が徐々に上がっている状況だ。

 

 「今は現場の人たちが頑張って生産量を徐々に上げていっています。村内消費を賄いながら、並行して村外への営業戦略をかけて、消費と生産のバランスを上手く取りながらイノブタ産業を大きく育てていきたい」と黒澤村長は意気込む。

 

「脱炭素先行地域」に

 

 上野村は、環境省が選定する「脱炭素先行地域」に単独で申請。昨年選定され、「実行の脱炭素ドミノ」のモデル地域となった。

 

 工場など産業系を除いた民生部門を再生エネルギーですべて賄うことが求められ、上野村には国から5~6年間で38億円規模の補助金が得られる。

 

 このため、各家庭で太陽光パネルや蓄電池、省エネ家電や家の断熱改修、新型EV(電気自動車)の購入、ペレットストーブ、薪ストーブの導入にも、村が独自に配分し手厚い支援を行う。

 

 具体的に、太陽光パネルの導入については、村が購入したパネルを、村民は設置費の一部と2割程度の負担のみで導入できる。蓄電池は負担無しで貸し付けるため、実質電気代なしとなる。ペレットストーブの導入も村が負担。林業が盛んな上野村には燃料となる木質ペレット製造工場もある。

上野村で製造する木質ペレット

 

 電気自動車を購入すればガソリン代もかからなくなる。EV購入に際して国が85万円補助し、村も同額上乗せして、計170万円を補助する計画だ。

 

 黒澤村長は「全村民に何らかの恩恵を与えられる『脱炭素の村』にしていきたい。時流に合った、環境配慮型の暮らしぶりが実現でき、広がっていくことで、村の価値は上がっていくのではないでしょうか」と話す。

 

 「『脱炭素の村』というのは、これからの時代、大きなアピールポイントとなると思っています。この理念と取り組みに賛同していただける方々が、住み良い上野村に移住してくれる流れになっていくことが目標です」。

 

 電力を自前で調達できるというのは大きい。防災上のレジリエンス(困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力)を高める効果もある。蓄電池が各家庭に普及することで停電対策にもなる。

 

 「万が一のときに自前の電力を供給することができ、安心も担保されます。これが大都市ではなく、山間地の小さな村で実行されていることに意味があるのだと思います」と黒澤村長は力を込める。

 

 今年4月には、サントリーグループと協定を結び、ペットボトルからペットボトルを再生する「水平リサイクル」の取り組みも加速させる。

 

 「持続可能な、循環型の村を目指すという考え方を、できるところからやっていきたい。子供たちの環境教育も始めており、いかに村民に理解していただけるかを考えています。SDGsを分かりやすく、村の事情に置き換えた『上野村版SDGs』も並行して進めています」と黒澤村長は語る。

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