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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(172)個客管理で感動を創造する秘訣 想いを未来に残すバトンに

2025年5月12日(月) 配信

 予約の際に喫煙可能な部屋が満室だったため、仕方なく禁煙ルームを選びました。予約時に希望を伝えたわけではありませんし、初めての利用なので、私の好みを知っているはずもありません。

 ところが、チェックインの際、フロントの方が穏やかな笑顔でこう言ったのです。「西川様、喫煙可能なお部屋に空きがございますが、そちらに変更なさいますか?」と。一瞬戸惑いましたが、話を伺うと、以前にグループの別ホテルを利用した際の情報が共有されており、喫煙希望というデータが記録されていたとのことでした。たった一度の利用で得た情報が、別の場所で、別のタイミングで生かされる。その心配りのおもてなし行動に私は深く感動しました。

 おもてなしの本質とは、いま目の前にいるお客様に対応することだけではなく、再び訪れてくださるその日を思い浮かべての準備にあると考えます。一度の出逢いを「次の感動」につなげていくためには、初回の利用時にどれだけ有意義な「個客情報」を得て記録できるかが重要です。

 喫煙者かどうか、アレルギーや苦手な食材、記念日に利用したきっかけなどは予約時に伺うことができますが、実際にお迎えして初めて知り得る情報もたくさんあります。

 どのタイミングでどんな飲み物を注文されたのか、肉の焼き加減の好みや、どんな会話に笑顔になられたか、利き手はどちらか、といった気づきが次にお越しになったときに、より大きな感動サービスを生み出す記録となるのです。こうした個客情報が集まれば集まるほど利用者に心地よい時間と空間を創り出すことができます。

 しかし1年後に再来されたときに前回接客したスタッフが必ずしもいるとは限りません。前回接客時の記憶も薄れているでしょう。だからこそこうした情報は「記録」として残しておく必要があるのです。評価が高くリピーターの多い企業は初めての利用時に全力で再来店につながる接客をしているのです。

 しかしながら、どれだけ丁寧に接客し、多くの情報を得たとしても、それがデータベース上に文字として記録されているだけでは、次の機会に感動を提供する行動を生み出すことは難しいでしょう。

 最も必要な個客情報管理策とは、得た情報の事実だけを入力するのではなく、ご利用直後に「次はこうして差し上げたい」と思ったことを、忘れないうちに具体的に実行すべき行動として記録しておくことです。それこそが、単なる記録ではなく想いを未来に残すバトンとなるのです。

 次はもっと喜んでもらいたいというその瞬間の強い想いこそが、何年経っても色褪せることのない記録としてそのときに生かされるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

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