JATAがカスハラに対する基本方針を策定 会員へ独自の基本方針策定と周知を提案
2025年3月13日(木) 配信

日本旅行業協会(JATA)はこのほど、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、3月12(水)に会員各社へ発信した。この基本方針を参考に、各社が自社の業務に応じた独自の「基本方針」を策定することに加え、ホームページなどで広く発信していくことを提案している。
近年、顧客らが理不尽な要求などを突き付ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題となるなか、東京都は4月1日から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行する。また、政府は3月11日、カスハラ防止策を企業に義務付けることなどを盛り込んだ、労働施策総合推進法の改正法案を閣議決定するなど、対策が進んでいる。
旅行業界でも以前から顧客からの理不尽な要求が課題とされており、JATAは昨年末、業務改善委員会のなかにワーキンググループを設置。カスハラ対策の検討を重ねてきた。実態を調査するため、このほど会員会社の経営者にアンケートも実施し、241社から回答を得た。これによると約10%の会社が、コールセンターなどの電話応対業務や添乗業務などの場面で、「過剰要求や無理な要求」「長時間の執拗な主張」などを受けていたことが分かった。一方、カスハラ対応の基本方針などを作成しているのは全体の15%ほどという。
厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」のなかで、業種によりカスハラの判断基準が異なることから、各社でカスハラの判断基準を明確にしたうえで、考え方や対応方針を統一して現場と共有していくことが重要だと明示。こうしたことから、JATAは各社が雛形として利用できるよう、今回の基本方針を策定した。
このなかでは、就業者がカスハラ行為を受けた場合には、毅然とした態度で臨むことや、就業者がカスタマーハラスメントの行為者にならないよう措置を講じることを基本方針として掲げたうえで、カスハラの定義や対象となる具体例を示した。
JATAが3月13日(木)に開いた定例会見で、消費者相談室の鈴木宏治室長は今回の基本方針は「考えうる最大限のことを盛り込んだフルバージョンとなっている」とし、各社が業務に応じて修正して独自の方針を策定してほしいとした。また、「基本方針を社内外に周知することで、安心して仕事に取り組めるのではないか」と大切な人材を守るために広く発信することも重要だとした。
今後ワーキンググループでは、東京都の「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」などを参考に、カスハラ対応のモデルマニュアルを作成していく。発表は11月ごろとなる見通し。