【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その47- 奥能登の真脇遺跡&ウッドサークル(石川県・能登町) 縄文人の精神性に触れる旅 神秘的な空間ウッドサークル
2025年3月9日(日) 配信
今回の精神性の高い旅は、石川県・奥能登の富山湾に面した、内浦海岸東部にある真脇遺跡。およそ6000年の時を超えた縄文遺跡があります。北陸では最大級の遺跡であり、国指定史跡として認定されています。
近くには、真脇ポーレポーレという温泉付きのホテルもあり、縄文人の文化を親切に教えてくれる真脇遺跡縄文館も、隣接しています。
真脇遺跡やウッドサークルについて知識を深めるには、真脇遺跡縄文館も、訪れてみてください。真脇遺跡は、大学の考古学者の先生たちがよく訪れているとのこと。アカデミックな香りが漂いながらも、素朴で癒される土地のエネルギーを感じます。
真脇遺跡は、土器・石器・木製品・巨大な柱・イルカの骨など、大量の出土品が見つかりました。「イルカの骨」という部分に、私のアンテナのセンサーが反応。大量のイルカの骨が見つかったというところから、「イルカ漁」が盛んに行われていた土地であり、縄文人の食生活を知るうえで大きな手掛かりとなりました。イルカの骨だけでなく、魚や獣類、人間の骨までも発見されています。
また、写真にありますように、レプリカですが、クリの木で作られた縄文時代晩期の環状木柱列であるウッドサークルも、縄文人の非常に深い、心温まる精神性を感じずにはいられません。石川県金沢市にある、先に確認されたチカモリ遺跡のウッドサークルとよく似ているそうです。
さて、真脇遺跡が大量のイルカの骨が出土されていた場所であるということは、アイヌの熊の魂を崇めて天に送る「熊送り」(イオマンテ)と同じように、イルカの魂を送る儀式があのウッドサークルの中でも行われていたように思えてならないのです。

哲学者の梅原猛先生もおっしゃられていたように、アイヌの人々も、真脇の人々も、生きていくうえでありがたく頂戴する熊やイルカの肉に感謝して、また来年もいただけるようにと丁重に祈りを捧げたのではないでしょうか。イルカからは、食肉だけでなく、油などもとれたそうです。
豊漁と再生を祈り、心の底からの感謝の気持ちが真脇遺跡を訪れてみて感じずにはいられません。感謝と再生の祈り無しに、ただイルカ漁をしているとは私には思えないのです。無用な殺生はいけないことですが、生きていくためには、イルカ漁をやらないと生きていけなかったのでしょう。
感謝の心に溢れた、真脇の縄文人の「命あるものへの思いやり」に満ちた精神性が心に響くのです。
ウッドサークルに関しても、やはり「人は亡くなって天へ還り、再びこの世の地へ戻ってくる」という、「生と死の循環の思想」を感じずにはいられません。例えば、橋というのは「天と地を結ぶもの」という考え方があります。「生と死と循環の思想」からも、京都の天橋立は、はじめは橋を通して神様も人も自由に天と地を行き来したのかもしれませんが、あるとき神様が眠っているときに、橋が倒れてしまい平面的なものになってしまったといわれています。

真脇のウッドサークルも、天と地を結ぶものであり、崇高な儀式や祈りを捧げたのかもしれません。イルカだけでなく、人間や獣類の骨も出土された真脇遺跡であるからこそ、あらゆる生命体の魂を天に送って、再びこの世に生まれてくるという愛情と感謝に満ちた祈りを捧げたと思わずにはいられません。
このウッドサークルの中心に立つと、天界へとつながっていけるような感覚になってしまいます。縄文人の残したものの背景に潜む深く心温かな精神性が、死というものに対して大らかな境地にさせる効果をもたらすのではないでしょうか。
交通アクセスは、JR金沢駅から特急バスで縄文真脇温泉口下車。徒歩14分程度。バスの乗車時間は、2時間程度。
■旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。