「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(169)心の声は相手に伝わる 出逢いの感謝忘れずに
2025年2月5日(水) 配信
自宅近くのよく立ち寄るコンビニで買い物をしたときのことです。レジを担当してくれたのは、初めて見る学生風の若者でした。まだ慣れていないのか、たどたどしい接客でした。私の前で支払いをしようとしていた利用者が「早くして下さい」とイライラした声を発していましたが、そのとき私は、彼の一生懸命仕事に向き合う姿に好感を抱きました。
私の支払いが終わった後に「顔晴ってくださいネ」と言ったところ、彼は驚いたような表情を見せて固まっていました。隣のレジで仕事をしていたベテランのスタッフが「ありがとうございます」と私が掛けた声に応え、それに反応するかのように若い人も満面の笑顔を見せてくれました。「ありがとうございます。顔晴ります」の心の声が聞こえたようでうれしくなりました。
また、とある方にお願いしたいことがあり電話をしたときのことです。お世話になっておりますとあいさつしたとき、「あ~っ、西川さん。いつもお世話になっております」と元気な返事にうれしくなりました。しかし、「実はちょっとお願いがありまして」と本題に入ると「はぁ~」と元気だった声のトーンが急に下がった返事が返ってきました。思わず「やっぱりよいです」と、そんな返事をした経験が何度かあります。明らかに何を言われるのだろうかと構えた声に、迷惑だったかなと思ってしまったのです。
ある公共施設での研修時のことです。「またかぁ」と思ってしまう同じような質問を受けることはありませんか? と質問してみました。多くの方が大きくうなずいており、日々の仕事の中で同じような質問を多く受けてうんざりしているようすがうかがえました。
利用者の話を聞いている途中で伝えるべき言葉が頭の中に浮かんでくるときに注意しないといけないのは、「話が終わっていないのに被せるように答えてしまう」ことです。これは、単に問い合わせをしてきた目の前の人をクレーマーに変えてしまいます。
声のトーンの変化やまたかぁと思ってしまった心の声は、私たちが思っている以上に相手に伝わります。答えは正しくても、話をちゃんと聞いてくれない、いい加減な返事をされたと思ってしまいます。分からないから問い合わせをしただけなのにその対応や返事にがっかりしてしまうのが人なのです。
私たちを選んで下さった。偶然だとしても私たちのお店に来て下さった。その奇跡ともいえる出逢いに感謝の気持ちを持つこと。この想いが薄れたときに目の前の利用者をがっかりさせてしまう心の声が届いてしまいます。忙しい毎日の中で忘れがちなこの想いを持ち対応することが「おもてなし力」を高めるために大切です。
コラムニスト紹介

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。