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浅草から地方へ送客、“日本のアンテナショップ”開業

赤穂  雄磨氏
赤穂 雄磨氏

訪日客に「日本の自然を楽しんで」

 訪日観光を通して日本の地域活性化をはかることを目指し、2015年2月に合同会社観光創造ラボが設立された。代表の赤穂雄磨氏は同社を「日本のアンテナショップ」と位置づける。5月には浅草にインバウンド観光体験推進施設として日本茶のカフェやアウトドア用品販売などを提供する店舗「ジャポニカロッジ」をオープン。赤穂氏に同社の設立経緯や事業内容、今後の展望などを聞いた。

【飯塚 小牧】

 ――起業の経緯は。

 大学卒業後、サラリーマンをしていましたが、元来旅が好きだったこともあり、骨を埋めるなら観光業だと思い、30歳で脱サラしました。

 大学はオーストラリアに留学しており、そのときにバックパッカーとして各国を旅しました。会社に勤めてからも長期出張などで海外にいる機会が多く、東南アジアなどは非常にインバウンドの受け入れ体制が整っていると感じていました。対して日本の外国人旅行者の受け入れ体制の未熟さに憤りを覚え、文化や自然資源が豊富な日本ならもっと外国人観光客を呼び込めると思い、起業を決めました。
 しかし、まったく畑が違うところにいたので、一から観光を勉強するため、北海道大学の大学院に進みました。もともと登山が好きだったので、大学院では国立公園の研究をしていました。

 ――理念や事業内容を教えて下さい。

 目指すのは都市から国立公園や登山地域など地方へ人を送客することです。国内客の登山ではなかなか地域にお金が落ちないので、時間とお金に余裕のある外国人観光客を対象にしています。

日本茶カフェの店内
日本茶カフェの店内

 当初は、私が目指す地方への送客がスムーズにできると思い、人が集まり、コミュニケーションも取りやすい旅館業での起業を考えていたのですが、法律の壁が厚く、断念しました。ではどうしたら地方へ人を送客できるかを考えた結果、「ジャポニカロッジ」をオープンすることにしたのです。

 具体的には、登山道具を通して登山地域への送客に貢献しようと、高品質な日本ブランドに限定したアウトドア用品の販売事業を考えました。ただそれだけでは人がすぐ流れてしまうので、店舗内に人が滞留する時間を長くするためにカフェ事業を付帯させました。文化的観光体験を提供するため、伝統工芸品の茶器でお茶を淹れることができる茶房を設けた日本茶カフェにしました。提供する茶葉は京都宇治の高級茶葉「和束茶」を使用し、店内では茶器や茶葉の販売も行っています。こうしたものは広い意味で動かせる観光資源で、外国人が茶器や茶葉を購入するということは日本の文化と習慣を自国に持ち帰り、海外で日本文化のファンや伝道者を創ることにつながります。そこを入口に地域に興味を持ってもらい、生産地を訪れてもらうことが大きな狙いです。カフェやアウトドアショップがやりたいという意思が先にあったわけではなく、地方送客を逆説的に考えてこの事業形態になりました。

 ――日本の山の魅力や特徴を教えて下さい。

 日本は宗教登山からはじまっているので頂上まで登山道があるのが特徴で、山までのアクセスも良いです。海外の山は景色が美しく見えるところに登山道がひかれていて「○○トラック」と道の名前が有名ですが、日本は山の名前が有名です。また、日本の山小屋は国立公園にあっても私営のため、規格化されていない分、バラエティーに富んでいてそれだけでも目的地になり得ます。さらに日本の山は緑が豊かで水も綺麗なので、外から眺めて綺麗なだけではなく、実際に山に登っていても美しく、清廉さがあるのが大きな特徴です。

 しかし、日本の山は海外には著しく発信ができていません。今は日本人の登山客だけで十分で自治体も危機感がないのかもしれませんが、周辺地域は危機感があるはずです。日本人客はレジャー活動はしていますが、消費活動にはならず、周辺地域にお金が落ちないからです。そういう意味でも海外客の取り込みは必須だと思います。

 ――今後の展開は。

 10月中にオープン予定ですが、お店を閉めた夜の時間、店内にテントを張って宿泊できる取り組みを進めています。業態は簡易宿泊業ですが、ゲストハウスではなく、“屋内キャンプ場”というイメージです。

 当然ですが、ターゲットは自然が好きなお客様です。部屋の代わりがテントでベッドの代わりがエアマットになり、布団の代わりが寝袋になります。道具は日本のアウトドアメーカーのものを用意し、宿泊料はそのレンタル代とします。日本のメーカーは中小企業が多く、海外展開はできていないところが多いので、ショールームを兼ねることが狙いの1つです。海外のお客様にも使ってもらえば良さが伝わり、口コミで広がります。逆に日本でしか手に入らないという稀少性もあると思います。日本のお客様ももちろん歓迎ですし、同じ趣向を持った人たちとの“出会い”も魅力になるかもしれません。料金の想定としては2500―3千円で、使った道具を気に入っていただき、ご購入される場合はそれを割引きます。

 他方、旅行業のライセンスを取ることも目指しています。旅行業を取得すると、各地域の観光協会の方々とお話できるようになり、地域との連携ができます。現状はホームページをご覧になって連絡をいただいた地域の方から独自のプログラムなど情報をいただき、それを店内で紹介しています。以前、富士山を訪れようとしていた海外のお客様から天候不順で行けなくなったので、どこかいいところはないかと聞かれたので他の地域をおすすめし、喜んでいただきました。ジャパンレールパスを持っているので、日本人の行動感覚よりも幅広い地域に行っていただけると思います。

 今後の事業展開は旅館業の部分が核になると思います。だからといって、将来的に一般的なゲストハウスを展開しようとは思いません。オリジナリティがないですし、安宿を求めるお客様がターゲットではないからです。あくまで当社の目標としては地方への送客や日本の自然、村々を楽しんでもらうことなので、旅行業を取得したうえで、宿泊していただいたお客様を地方へ送客することが理想です。

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