test

「観光人文学への遡航(44)」 ライドシェア導入に対する疑問②

2024年2月23日(金) 配信

 十分な議論もなしに、あっという間に決まってきたライドシェアに関して、観光関連産業としても無関心ではいられない。むしろ、これは公共交通、観光事業にとどまらず、日本の今後のあり方を左右する大きな分岐点であるにも関わらず、政府は単なるデジタル化の一環のような扱いで、いつの間にか導入しようとしている。先月に続いて、ライドシェアの問題点を指摘する。

 

 現在旅客を有償で輸送する業務に従事する者に関しては、第二種運転免許保持者に限定されている。二種免許は、1956年から導入されており、旅客の安全性確保の観点から、私たちが一般的に保持している普通第一種運転免許よりもかなり厳格な試験を課している。そもそも、受験資格は21歳以上で普通免許や他の第二種免許を取得してから免停期間を除いて3年以上と規定されている。これは、2022年に道路交通法が改正され、「受験資格特例教習」を修了することにより、19歳以上かつ普通免許等を受けていた期間が1年以上あれば受験可能となったが、それでもかなりハードルは高い。現在でも合格率は10%程度といわれている。

 

 運用もかなり厳格になされていた。運転代行も、旅客の有償輸送なので二種免許が求められている。宿泊機関ではおなじみの最寄り駅との送迎に関しては、お客様から運賃はもらわずに自社社員が自家用車両を使って行っているため二種免許を必要としないが、商業施設などで行われている送迎バスは、お客様が運賃を支払うことはないものの、店舗がバス事業者に有償で運行を依頼しているので旅客自動車運送事業とみなされ、二種免許と緑ナンバー車両が必要になる。

 

 ライドシェアはこのプロセスを無きものにする。国土交通省は、今まで乗客の安全のためにとこれだけ厳格に運用してきたが、普通免許しか持たない素人ドライバーに有償旅客輸送を認めるということは、厳格な二種免許との整合性がまったくつかない。

 

 さらに、タクシー会社が日常的に徹底して運行管理を行っているということは、車両の安全管理やドライバーの健康管理にも責任を負っているということを忘れてはならない。業務開始時に車両の点検を行い、アルコールチェックはもちろん、ドライバーの心身の健康状態を見極めて、問題があれば乗務させないという厳格な強制力を持った対応を行っている。乗務時間も会社が管理して、超過勤務を防いでいる。会社ではドライバーの健診結果や服用中の薬も把握している。これをすべて個人に委ねて、既存タクシーと同様の管理ができるとは到底思えない。先行したフードデリバリードライバーの杜撰な運転を見たら、目先の水揚げアップのために真っ先に疎かになるのが日常の運行管理だということは火を見るよりも明らかだ。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。