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ゆこゆこ、平日集客の課題解消へ 宿泊予約サービスがシニアに支持(徳田和嘉子社長インタビュー)

2023年11月22日
編集部:長谷川 貴人

2023年11月22日(水)配信

徳田和嘉子(とくだ・わかこ)社長

 温泉宿の電話予約サービスやシニアマーケティング支援事業を提供する「ゆこゆこ」(徳田和嘉子社長、東京都中央区)は、季節感のある旬な温泉地や宿泊施設の情報をWebや情報誌で届けるデジタルとアナログを組み合わせた宿泊予約サービスを展開し、シニア層から高い支持を得ている。平日にお得に旅行へ行きたいシニア層と、平日集客に課題のある宿泊施設のマッチングビジネスをはじめ、都市部からの人材紹介など幅広い事業に取り組む徳田社長に詳しい話を聞いた。

【聞き手=本紙編集長・増田 剛 構成=長谷川 貴人】

 

 ――平日・閑散期の客室稼働率の向上に取り組むゆこゆこの特徴をお聞かせください。

 私たちは、2000年の創業時から宿泊施設の課題解決をしたいという思いを持って誕生した会社です。当時は平日の稼働が課題となっており、バブル期に社員旅行などの平日団体旅行の受け入れが増大した宿が多かったなか、時代が変わり平日の宿泊客が見込みづらくなった問題を解決したいと始めました。

 観光地や温泉地であれば土日になると旅行者が来訪すると思いますが、私たちは平日の稼働をどうやって上げるかというところに向き合い、そこに価値があると考えて取り組んできました。

 例えば、大手OTA(オンライン旅行会社)であれば、土日に移動する現役世代の旅行者に向けた集客に注力します。団体やツアーの旅行者であれば、リアルエージェント(旅行代理店)を利用されている印象ではないでしょうか。

 ゆこゆこでは、平日の個人旅行客に向けたサービスを展開しています。会員の年齢層は現在平均60代前半で、50代以上が80%を占め、60代以上が65%。主にシニア層や平日に旅行ができる人たちで、とくにシニア層はどうしてもオンライン上のみで完結できない人たちが多いです。

 より多くの人に利用してもらうために、宿泊情報誌「ゆこゆこ」を年6回の偶数月に発行し、会員にお送りしています。部数は時期によって多少変わりますが、最大約100万部を発行しています。お客様は宿泊情報誌に掲載された宿泊プランから選び、電話で予約をしてもらうスタイルになったというところです。

年6回発行する宿泊情報誌

 ――OTAでありながら、電話による宿泊予約が特徴的です。

 シニア層にはスマートフォンやパソコンを使い慣れた人もいますが、住所や氏名などの細かな入力に関しては苦手で、それならば電話で予約したほうが楽だと感じる方が多くいらっしゃいます。さらに、腰や足が悪くてベッド付きの部屋を希望したり、食事会場までの距離や階段での館内移動が不安だったりと、すべて入力して相談するのは困難です。このような相談は直接電話で行うほうが早いですし、不安を解消しながらの案内ができるようになりました。

 一方、宿泊施設の方からも「事前に案内してほしい」と相談を受けることがあり、直接お客様へ伝えることで結果的に宿泊時のトラブルを未然に防ぐこともできます。

 OTAのWebサイトで電話予約の番号を分かりやすく記載しているのはゆこゆこぐらいでしょうか。ニーズは確かなものと思っているので、大事にしていきたいです。他社がやっていないところをなるべくやることで、ニッチな層をしっかり抑えることを徹底したいと思います。

 ――宿泊施設に対しては広告掲載が無料。宿泊料金が発生してから手数料をもらう、完全成果報酬型の独自のビジネルモデルを確立しています。

 キャッシュフロー上、とても良いだろうと思っています。今はネット上に公開されている宿泊プランから平均単価を導き出されるので、それを参考に損益計算書(PL)のシミュレーションが作れます。ゆこゆこを利用した場合の手数料や営業利益を試算したうえで、どのくらいの利益額が出るかの提案書を用意でき、お役に立てそうであれば話をお持ちするカタチをとっています。

 提案に当たり、「私たちの優先順位は最後で」とよく言っています。宿泊施設はまず直接予約を増やしてファンをつくり、リピーターを増やすことが宿泊予約のベースとなります。その次はOTAを使って現役世代で土日の客室を埋め、平日は旅行代理店を使って団体と個人で埋める。それでも平日に客室が余っていて、それを販売することで収益、利益を高めたい場合にゆこゆこを使ってもらうという順番でお願いしています。

 ――宿泊予約はどの期間が多いですか。

 直前の間際予約が多いです。とくに地方の方は自家用車での外出の延長上で旅行に出掛けることがあり、近県の温泉地であれば、外出から思いつきで旅行へ予定を変更される方が結構多いです。そのためか、私どもの宿泊情報誌を車に乗せて出掛けている方も多いようです。

 ――電話対応を行うコンタクトセンターのオペレーターは何人ですか。

 現在約300人です。半分が社内スタッフで、もう半分が外注でバランスをとりながら人数を調整しています。コンタクトセンターは札幌、東京、松山、熊本の4カ所に設けており、午前8時50分~午後9時まで予約対応をしています。

 特別な社員教育をしているわけではないのですが、シニアの方に聞き取りやすい発声や抑揚を細かく研修し、伝わりづらい音を使わず言い換えて伝えるなど、言葉の使い方については大事にしています。また、福利厚生で宿泊割引を補助しているので、スタッフ各自が活用して案内した宿泊施設に実際に泊まりに行ったりするようですね。

 ――他にも地域の人手不足を解決するため、人材支援サービス「ゆくゆく」を提供しています。

 人手不足が経営課題であると悩む地域のホテルや旅館と、都市部からの「お試し移住」で知らない土地での暮らしと仕事を体験してみたい若者をマッチングさせるサービス「ゆくゆく」を始めました。初めの1週間から半年は有期雇用でして、そのときにお互いの希望に合っているのか、この仕事内容でやっていけるかを理解でき、上手くマッチングできている結果になっているのかなと思います。

 初期費用は一切かからず、まず3カ月のお試しとライトなカタチでお互いに始められ、そこから本格的に入社となったときに成果報酬が発生する。通常の従業員募集から雇うより、負担は少ないと思います。

 ――ゆこゆこの今後の方向についてお聞かせください。

 観光業は特徴的な産業と思っていまして、すごく楽しいですけど非常に裾野が広くて、あらゆる方が関われる産業と思っています。まず宿泊施設のインフラとしての役割。宿泊施設があるからこそ出掛ける方が増えてきて、現地を訪れる方が格段に増えるので、宿泊施設への支援を続けていきたいです。宿泊施設が元気であれば観光地も活気づく、宿泊施設の経営課題を聞いて、解決していくことを今後も続けていきます。

 コロナ禍で人と話す機会が減った21年には、宿泊予約ではなく会話専用「旅のおしゃべりダイヤル」を期間限定で開設しました。これが本当に反響が良くて、他社とは違う視点での痒いところに手が届くニッチなサービスを提供していき、会員の皆さんの役に立てればと思っています。

 これから高齢化が進むなかで市場も徐々に伸びていき、チャンスもどんどんと広がるものと捉えています。今もコロナ禍で行けなかった分の旅行へ行こうと話しており、今後もこのマーケットは伸びていくと思います。

 ――ありがとうございました。

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