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〈旬刊旅行新聞11月11日号コラム〉――旅行費用も高騰 多様な価格帯の宿があることは心強い

2023年11月9日
編集部:増田 剛

2023年11月9日(木) 配信

 秋が深まりつつある。相模原の奥深い山の方に行くと、キリンソウが黄色に色づき、芒が揺れ、そして橙色の柿があちこちで実っている。週末になると、バイクで宮ヶ瀬湖まで走り、湖のほとりに建つ「鳥居原ふれあいの館」で次郎柿を買うことが楽しみの一つとなっている。

 

 昨秋も毎週末に柿をたくさん鞄に入れて帰り、秋の果実を楽しんだ。次郎柿の堅くてシャキシャキする歯ごたえが好みだ。

 

 近ごろは朝夕冷え込む。このため、うちのリクガメ君は、温かい人肌を求めて丸い体を寄せて来るから可愛い。暇つぶしに次郎柿を上げてみると、大きく口を開けて、「もっと食べたい」とせがんでくる。 

 

 「僕たちは種類が違うけど、食べ物の好みは同じだね」と柿を分け合って食べるのが、最近の小さな幸せを感じるひとときである。

 

 

 国際情勢の悪化による食料や原油などの高騰、止めどない円安基調、政府の思惑通りには可処分所得が上がらないなか、生活必需品を含むありとあらゆる物価上昇が続いている毎日。

 

 食に関しては、できるだけ「元手をかけずに楽しむ」ことに価値を見出してきたことが功を奏している。安価な食材を発見し、美味しくいただくことで、小さな幸せを感じる。これらをたくさん集めて、大きな満足感を得ていきたい。

 

 旅も同じで、お金をかけずに楽しみを見出す派である。そもそも自分の中に「豪華な旅をしたい」という欲求が希薄で良かったと思う。

 

 

 コロナ禍を経て、全国のホテルや旅館がリニューアルしてピカピカに輝き、スタイリッシュになっている。訪日旅行者も飛躍的に拡大しており、宿泊単価が以前に比べて大幅にアップしていることを実感している。

 

 観光業界に身を置く立場として、旅館やホテルの価値が高まることは、とても良いことだと考えている。ぜひ、世界の一流ホテルなどに負けないサービスとおもてなしで、「日本の文化や食の豊かさを宿で体現してほしい」と思っている。マクロな視点では、海外富裕層の受け皿としての役割も担ってほしい。

 

 一方で、この上昇気流に乗れない宿も全国各地にある。旅館を建て替える資金不足による理由や、「高級路線はどうも自分には向いていない」と思う経営者もいるだろう。宿も千差万別であるが、旅行者も千差万別である。 

 

 旅行費用も高騰するなか、多くの国民はそう簡単に旅ができない経済状況にある。このように見ると強気の価格設定ができない宿への需要もあるはずだ。また、旅の目的やスタイルによって宿の使い分けもあるため、多様な価格帯に宿があることは旅行者にとって心強い。

 

 

 小綺麗なラーメン店は、一杯のラーメン代金に改装費が上乗せされている。でも、古いラーメン店にはそれが無い。同様に「新しくてお洒落な客室」を求めれば料金は必然的に高くなるが、「多少古くても構わない」と思う客は必ず存在する。

 

 「施設は新しいけど、サービスが悪い」ケースは宿泊費が高いぶん、失望感は大きい。清潔であれば、古い旅館やホテルの方が味わい深い。期待値も高くないため、漬物が美味しかったり、しっかりと清掃されていたり、宿のスタッフが笑顔を見せるだけで幸せな気分になる。

 

 古い宿を利用する機会が増えそうだ。

(編集長・増田 剛)

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