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那須南トラベル・石川翔平社長インタビュー ツアーで廃線防ぐ 「烏山線存続へ送客を」

2023年10月25日
編集部:木下 裕斗

2023年10月25日(水) 配信

石川翔平社長

 那須南トラベル(石川翔平社長、栃木県那須烏山市)はJR烏山線の廃線の危機を回避しようと、地元を走る同線を利用する旅行商品を企画している。石川社長は「旅行会社1社だけでは限界があるが、那須烏山市は大変魅力的な観光資源を有している」として、人口の多い東京都と埼玉県、千葉県、神奈川県の旅行会社からの送客に期待を寄せている。石川社長に烏山線の現状と今後の方針について、また那須烏山市と市内の各観光施設の担当者から魅力を聞いた。

【木下 裕斗】

 1923年に開業した烏山線は、今年100周年を迎えた。栃木県の宇都宮駅から2駅先にある宝積寺駅(高根沢町)と烏山駅(那須烏山市)を結ぶ、全長20・4㌔の路線。10月10日現在、夕方を除き、すべての列車が新幹線の停車する宇都宮駅まで運転している。

 69年には、旧国鉄が烏山線を含む日本各地の赤字路線83線の廃止検討を発表した。

 当時メディアなどで大きくクローズアップされ、翌年には地域住民が廃止反対期成同盟会を結成。運動の結果、乗車人数は前年から約80%増となり、烏山線は廃止を免れた。

 しかし、2022年11月には、コロナ禍で収益が減少するなか、地元自治体と今後の赤字路線のあり方を協議しようと、東日本旅客鉄道(JR東日本)は利用者数の少ない線区の収支データを開示した。

 これによると、21年度の烏山線は6億300万円の赤字だった。100円稼ぐために掛かる費用を示す営業係数は1121円。1日当たりの平均通過人員は1140人だった。なお、コロナ禍前の19年度は、1148人。多くの旅客が通学で利用するため、大きく変わっていない。

 国土交通省は今年10月、1千人未満の区間の経営が厳しい鉄道路線について、今後のあり方を議論する協議会を国が設置できるよう法を改正していることから、石川社長は「烏山線は廃線の危機に直面している」と危機感を強めている。

 これを踏まえ、那須南トラベルは、利用者を増加させるため、市と市議会のJR烏山線利用促進特別委員会の協賛を得て、旅行商品「那須烏山市民号」を毎年1回催行している。

 同商品は、旧国鉄が廃止検討を発表した1969年の翌年から実施され、今年で48回目となる。これまで、日本旅行やJR東日本などが実施してきたが、利益を確保しづらいことから、撤退した。

 石川社長は67年に旧国鉄に入社し烏山線や東北線の車掌を務め、88年の民営化後から99年まで、烏山駅で烏山線を利用する旅行商品を企画、販売してきた。退職後、旅行会社「那須南トラベル」を設立した。

 「烏山線を活用した商品の企画経験があり、地元の旅行会社である当社が市の依頼を受けて、那須烏山市民号を実施している」と石川社長は経緯を説明する。

烏山市民号を催行 毎年80人が参加

 より多くの沿線住民に参加してもらうため、出発駅は烏山駅をはじめ、烏山線の小塙駅と大金駅、宝積寺駅のほか、宇都宮駅を設定。毎年80人ほどが参加しているという。今年は立ち寄り施設で団体旅行の受入可能人数が減少しているため、10月と11月の計2回実施する。人数は40人ずつに設定している。

 このうち、10月27日(金)出発分は募集人数を40人としていたが、「参加人数は43人となり、好評を得ています」と話す。2回目の参加者は9月27日現在、20人から申し込みがあったという。

市内業者利用で活性 着地でJR商品販売

 着地型商品については、烏山線を利用して、市内の山あげ会館や島崎酒造のどうくつ酒蔵、龍門の滝、矢沢のヤナなどを巡る商品を販売している。市内のバス会社を利用することで、地域活性化にもつなげている。

 このほか、JR東日本が企画する烏山線と真岡鉄道の蒸気機関車に乗る商品も推奨している。

 しかし、「那須烏山市号は利益率が低く、着地型商品は開催地までの移動手段のあっ旋を望むお客が少ないため、利益の確保が難しい」(石川社長)状況だ。
観光協会と商品造成「新規参入見込める」

 今後は「観光協会と協力して、ツアーを造成していきたい」と語る。民間企業の旅行商品による乗客の増加が厳しいなか、資金に余裕のある観光協会が主催し、旅行会社が商品を委託販売できるようにすることで、「新規参入も見込める」と話す。市や観光協会などの公的機関が企画することで、消費者の安心感も増し、申し込みも増えるとの考えも示す。

 また、近隣市町村では限界があるとして、「那須烏山市へ2時間程度で行くことができ、人口の多い東京都と埼玉県、千葉県、神奈川県の旅行会社から送客してほしい」と強調する。「須烏山市の観光資源は大変魅力的ですが、認知度は低く、発信が課題」(石川社長)。

無形遺産山あげ祭 国内唯一のヤナも

 市は毎年7月の第4土曜日を含む金~日曜日の3日間に、山あげ祭を開催している。23年の観光客数は約6万5千人。

 市街地に市の特産の烏山和紙を貼ったはりか山や屋台などで構成する舞台を作り歌舞伎舞踊を披露している。

 那須烏山市の田中島啓人主事は「夜にはライトアップされた幻想的な公演を楽しめる」とした。

山あげ祭の夜公演

 昨年はJR東日本が利用客増加を見込み、1本列車を増発した。

 山あげ会館では3台の屋台を展示。同館の鈴木幸枝氏は「年間を通して山あげ祭の雰囲気を知れる」とアピールする。ミニチュアの山車と人間型ロボットによる講釈も行われる。特産品の和紙は烏山和紙会館で販売している。

 また、島崎酒造のどうくつ酒蔵は、日本酒やワインの熟成庫として利用している洞窟。

どうくつ酒蔵

 同社の島崎健一社長は「太陽の光をまったく受けないため、室温は5~15度に保たれており、熟成した清酒を楽しめる」と説明する。

 矢沢のヤナは、市内の那珂川に日本で唯一鮎を獲るためのすり鉢状の仕掛けを設置している。

矢沢のヤナ

 あゆの里矢沢のヤナ小林圭社長は「身がふっくらとしており、日本一の漁獲量を誇る」と話す。

 龍門の滝は高さ約20㍍、幅約65㍍に渡って流れ落ちる滝。

 同市の青木智寛主事は「秋には彩り豊かな紅葉を楽しめる」と語る。

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