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「提言!これからの日本観光」 鉄道車両は活きた〝文化財〟

2022年12月16日
編集部

2022年12月16日(金) 配信

 旅行の際、必ず利用する鉄道車両。とくに電車や気動車、客車などのいわゆる「旅客車」は日本のように鉄道依存度の高い国にあってはほとんどすべての国民が乗車体験を持つほど貴重な存在である。また、都市にあたってはかなりの人々が毎日の通勤通学に乗車し、日常生活の場ともなる。

 しかも一定時間の乗車によって多くの人々に交流の場を提供し、車内での交流がささやかな地域文化の創生・発展の場となることさえある。また車両は人とともに人の心を運ぶ重要な移動手段でもある。このように考えてみると、鉄道車両は地域文化発展の場を提供するとともに、その発展を促進する役割を果たす意味において重要な文化財であると考えられる。

 鉄道車両はそれを保有し、運用する鉄道会社にとっては、輸送という「価値」を生産・増殖し、会社に収益をもたらす機材の一つでもある。耐用年数が過ぎた車両は一刻も早く廃車して、新しい車両に取り換え、その使用価値を絶えず維持・向上させる必要がある。

 従って鉄道車両を〝文化財〟とし「保存」するという考えは近年まで鉄道会社にはほとんどなかったといっても過言ではない。関係者も貴重な〝文化財〟として、「保存」すべき車両がほとんど残されていないことに気が付き愕然としたのは、つい最近のことである。

 国は重要文化財の指定・保存に取り組んでいるが、鉄道車両は文化庁の分類によれば骨董品としての取り扱いだったと聞く。国がその保存にも取り組む「重要文化財」指定車両は明治初年の開業期に関東と関西で走ったそれぞれの最初の蒸気機関車(イギリス製)僅か2両に過ぎなかった。(ほかに明治天皇の旧御料車1両が指定されているが、車内の装飾品の骨董的価値によるもの)

 一方、同じ鉄道関係でも建築物や構造物では東京駅や門司港駅、機関庫、転車台、橋梁などが「重要文化財」に次々指定されていくのに比べ、アンバランスが目立ってきた。

 近年関係者からも鉄道車両の〝文化財〟としての評価の声が高まり、文化庁もその検討に取り組み始めた。

 鉄道愛好者と鉄道研究者の団体である「鉄道友の会」も、学識経験者から成る車両文化財推せん委員会を設け、その検討結果を、文化庁に報告したこともある。

 その後文化庁での検討が進み京都鉄道博物館所蔵で、初の国産量産蒸機233号SLを皮切りに、毎年1・2両ずつが重要文化財に指定されてきた。碓氷峠のアプト式ED40機関車や大都市圏電車の祖というべき木造省線電車、初期の東京地下鉄車両、京都市電狭軌2号車、国産初の量産電機ED16形、蒸気動車ホジ6014形など各地の鉄道博物館に保管され、廃車解体を免れた大正昭和期製造のものを含む車両がそれである。

 鉄道車両は〝文化財〟であり、「その発展の節目の時期を画した車両は保存すべき」との国の方針が明示されたことに大きい意味のある指定であったといえよう。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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